第19話 自称天才魔術師③
ポイズントードに黒魔法第1位階『ウインドブレイド』を放つ。綺麗に真っ二つになる。
ファイアーボールと違って素材を回収できるので便利だ。
この自称天才魔術師レナって奴と旅をして4日が経った。狩り・特訓をしながら、このレナって女のペースに合わせているので、予定より遅れている。
「……習得が早すぎる。私と同じ天才がここにもいた」
「お前だってファイアーボールすぐ覚えただろうが。あと今から実験するから邪魔するなよ」
「……お前じゃない。レナ」
「うぅ……」
レナを無視しつつ、ニーナを見ると横で不機嫌な顔をしている。今からする実験に反対しているからだ。
ポイズントードの持っている毒をわざと喰らって、毒状態でどの程度戦力が低下するかの確認と、新しく覚えた毒を消す白魔法を試すためだ。残っているポイズントードのステータスを確認する。
名前 :***
種族 :ポイズントード
ランク:1
LV :8
HP :73
MP :2
力 :31
敏捷 :12
体力 :22
知力 :6
魔力 :2
運 :2
パッシブスキル
毒攻撃(舌)LV1
アクティブスキル
なし
固有スキル
なし
(舌に毒があるのか……)
シュッ!
見た目からは想像できないほど早い動きで舌が向かってくるが、躱せないほどではないがあえて受ける。何度か攻撃を受けると身体が苦しくなってきた。
どうやら毒になったみたいだ。俺の状態変化に気づくと、ニーナがすぐにポイズントードを倒していた。
「ユウ、大丈夫?」
「少し苦しいけど大丈夫だ。でも戦闘中にこの状態になるのは避けたいな」
「……治療する?」
「せっかく覚えたんだから自分で治す。ニーナ、その間に剥ぎ取り頼む」
レナから教えてもらった毒治療の魔法を発動する。緑っぽい光が身体を覆い問題なく毒が抜けていく。
「ユウ~荷物がそろそろ限界だよ~」
魔物を倒しながら素材を剥ぎ取っているので、減っていく食料とは逆に荷物はどんどん増えている。
「……これに入れるといい」
レナはそういうと小さな布袋を差し出した。まさかと思いつつ布袋を見る。
アイテムポーチ(5級):200キロまで物を入れることができる。ただし袋の入口以上の物は詰め込めない。
「お前、アイテムポーチ持ってたのか」
「ええっ!? レナ、すご~い。1番安いアイテムポーチでも金貨10枚はするっていうよ」
「……親からの貰い物」
そういえば、こいつの親は冒険者でそれぞれ魔術師と司祭って言ってたな。装備も親からの貰い物。こいつがレベルに見合わない装備をしている理由だ。
「誰が自分の全財産を他人に預けるんだよ」
横でニーナがなんか喚いているが、俺は信用していないので素材を渡す気はなかったが、レナが俺にアイテムポーチを渡してくる。
「……ユウが持っているといい」
「この中にはお前の荷物も入ってるだろうが、俺が持ち逃げしたらどうすんだ」
「……私はユウとニーナを信じてる。このアイテムポーチは親から貰った物だからあげることはできないけど、カマーに着くまで貸しておくことはできる」
(変な奴……)
アイテムポーチはゴムのような素材でできており、入口を広げることで持っていた素材を全て入れることができた。しかも重さは変わらずだからとんでもないアイテムだ。
その日も焚き火の番をしようとしたが、ニーナが絶対反対とうるさい……。
「ユウはこの5日間ほとんど寝てないよね」
「……今は3人いるから替わりながらすればいい」
俺が反論する前にニーナが毛布代わりの布切れで俺と自分を包む。
「えへへ~。こうすれば暖かいし安心安全だよ~」
「……合理的、ニーナも天才」
レナがそう言いながら、俺とニーナの間に入ってくる。狭いし暑苦しい。しかもクンクン匂いを嗅いでやがる。
「……ユウは良い匂い」
「匂いを嗅ぐな! あとニーナは尻を触るな」
「1日1回、1日1回だけだからっ!」
また訳のわからないことを言っている。
ヒールで傷・体力は回復できても、5日間もほぼ寝ずに旅をしていたのと、ニーナとレナの温もりで安心したのか、気づいたら寝てしまった。
「やっと寝たみたい」
「……ニーナはユウとはつき合いが長い?」
「私もまだ1年も経ってないよ~。レナはやっぱりカマーで冒険者をするの?」
「……私は賢者になりたい。賢者になるためには白魔法と黒魔法をそれぞれLV5まで上げる必要があると言われている。それに魔法学校に入って様々な魔法を取得し、王国の試験に合格する必要がある。魔法学校の入学金は金貨100枚……」
「金貨100枚っ!? 学校って高いんだね。でもユウと一緒に狩りすればすぐ貯まるよ」
「……うん。ニーナもユウも良い人、私の目に狂いはなかった」
その日は遅くまで少女たちは話し合い、自分たちの夢を語り合った。
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