見合い
「毎日毎日、休みもなく働かされる二人。給金は雀の涙」
「何言ってるのか分からない!」
「おお、すまんな。今の子供は学力落ちているのか? まあいい、簡単に言うと、毎日毎日働かされる織姫と彦星だった。給料はほとんどない」
「ひでえ」
「しかし、金持ちには、奴隷のように働く人材が必要なんだよ。自分では働きたくないのが金持ちだからな」
「そうなの?」
「今だって、株を売り買いしている人がお金持ちだろう。資本家と労働者の関係だな。工務店だって仕事を取ってくる所が金を抜いて行くから、本当に作業をするところまで来るにはほとんどお金が残ってないんだよ。中抜きってやつだな」
「今もかよ!」
「まあ、昔から変わってないな。贅沢をする金持ちを維持するためには、奴隷のように働く若者が必要。そこで、貧乏人の人口を増やすために子供が生まれるようにしようとした。ようは、見合いさせたんだな。そうでなければ、出会うはずのない二人だ」
「ふんふん」
「二人は意気投合し、お付き合いすることになった。しかしだ、二人とも仕事に手がつかなくなった。男女の付き合いに免疫のない二人。相手のことを思うと、仕事が手につかなくなり、ミスが多くなった」
「だめじゃん!」
「毎日会いに行っては夜更かしをし、仕事がいいかげんになる。雇い主達は怒って織姫を川の向こうの村に引っ越しをさせて会えなくなるようにしたんだ」
「横暴だ!」
「社宅みたいなものだから仕方ないんだ。住む所がなくなると困るだろう。しかし、今度は織姫は泣いて暮らすし、牽牛は、ボーッとするし、やっぱり仕事にならない」
「結婚させろよ!」
「それは雇い主達のプライドが許さなかった。下々の者の要求をいちいち聞いていたら、そのうち増長するからな。押さえつけるのは彼らにとって当たり前だ。今だって同じようなものだよ」
「今もかよ」
「ああ。雇い主たちは、正論やお気持ちやよく分からない理論展開で二人を説得したんだ。そして一年に一度、七月七日に会ってもいいと譲歩したんだ」
「譲歩なのか?」
「二人は、それからはサボることなく、一生懸命働くようになりましたとさ。めでたしめでたし」
「ちっともめでたくないよ〜!」
腑に落ちない少年を見ながら、坊主は言い切った。
「これが、ブラック企業のやり口だよ」
「ひでぇ!」
「ところが、話はこれで終わらなかったんだ」
「そうだよね。正義は勝つんだよね。ひどい扱いは改善されるんだよね」
坊主は意味ありげに微笑った。
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