嫌いな母の日

多肉ちゃん

第1話

私は母の日が嫌いだ。そのころになると心がささくれてひどい時には動悸が起きたり具合が悪くなったりしていた。

高校性の頃だったと思う、母の日が近くなり母に、

「お母さん、今年の母の日何しようか?」と尋ねたら、

「母の日、そんなの何にもいらん。お前の誕生日が近いから誕生日何もせん。それでいいやろ」と言われた。

確かに私の誕生日は母の日に近いし、年によっては重なることもある。でも、だから言って、お祝い事を相殺するなんって・・・・・。普段から私に対して物言いが強い人だったが、私はその言葉かショックで、それ以来母の日や誕生日が近くなると、思い出し心がささくれ体調にも影響が出た。


学校を卒業して、サークル活動とか行うようになって、他の人たちが『母の日どうしよう』とか、『私はこれを送るんだ』と言っているのが羨ましくもあり、「あ~あ、ああいうのは普通の家族だよね。私には遠い話。あの人たちは幸せなんだな」と余計にみじめになった。やはり心はささくれたまま治ることはない。


結婚して子供が出来て母となった。子供が小さい時は母になったからと言って祝ってもらえる訳ではなく、子供が幼稚園になると、母の日に書いた絵とか、母の日の行事はあったけど、それでも、母の言葉の呪いが解けることはなかった。


少し楽になりだしたのは、娘が中学生ごろからだろうか。誕生日は長女、母の日は次女と言うように二人で2回とも祝ってくれるようになってきてから。

特に次女はビーズ細工を始めて、最初はストラップ程度だったのだが、ネックレスとか指輪とかをセットで作ってくれるようになった。


それでも、母が在命中はどうしても言われた言葉を思い出し、心のささくれは完全には治らなかった。


本当に楽になったのは、母が鬼籍に入ってから。祝いたくても祝えないというジレンマから解放されたからだと思う。今は母の日や誕生日には仏壇にお供えはしている。母の日や誕生日が近くなって体調が崩れるということも少なくなってきた。


今は次女と二人暮らし、誕生日と、母の日は娘が食事とか、私の欲しいものを買ってくれたりしている。

もう、心のささくれが再発することは無い。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

嫌いな母の日 多肉ちゃん @tan1kuchan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ