☆第三十五話 閃光に照らされて☆
――ッギユーーンッ、ビューーーンッ、ドババババッ!
ビーム光弾やヒート系レーザー光線、追跡ミサイルなど、テロリスト船団は遠慮無く放出をしてくる。
『撃て撃てぇっ! なんとしてもっ、撃ち落とせえええっ!』
裏社会に生きる悪党どもからすれば、ホワイトフロールに関する、背筋も凍る恐ろしき噂話は、逸話や体験談や更には見知った当該人物の消滅など、あらゆる現実として聞き及んでいるのだ。
滅多矢鱈の攻撃も、自らの恐怖心に負けたくない一心からの、精一杯な強がりでもあったり。
そんな悪党たちの心理を知らず、マコトとユキは捜査官の任務に燃えて、テロリスト船団の沈黙化を計っていた。
「そろそろ射程距離だね」
「はい」
中型とはいえ航宙船なのに、直撃コースのビームを身軽な飛翔でヒラりヒラりと飛びかわし、接近するミサイルを誘導形チャフで逸らして誘爆。
おおよそ航宙船らしくない挙動というか、まるで技術的な対抗手段を有する自然の白鳥そのものな、白銀の特種船。
『なんだよっ、ありゃあ何だよぉっ!』
『きっ、来ますぅっ!』
恐れる様子も無く突撃を駆けてくる高速白鳥の両眼が、赤く光ったと思ったら、極短く最小限のエネルギーを発射して、テロ船団たちへと確実に刺しに来た。
――っビュウウンっ!
近距離でのすれ違い様に、白鳥の目から短距離ビームが放たれたと思ったら、船団外周を護る武装小型船の一隻がエンジンを貫かれ、火花を散らし。
『っぅうわああっ!』
――ッドオオオオンンッ!
内部の攻撃エネルギーや航行用エネルギーも含め、狙われた船体サイズのわりには盛大な爆散を見せた。
『五番艦がダメージっていうかっ、しょっ、消滅…ぇええっ!?』
仲間の船が、小型レーザー一発で爆発蒸発をさせられた光景に、テロリストたちはより深い恐怖で、混乱をさせられてゆく。
『ぅおのれぇっ! 手前ぇら仲間の仇討ちだあぁっ!』
『『『『ぉおおおおおっ!』』』』
ボスの号令の下、恐怖に負けまいとイキ上がる悪党たち。
これでもかと言わんばかりの一斉射撃の雨あられを、プラチナ光の白鳥は掠らせる事なく鮮やかに飛翔をして、再び接近を仕掛けて来た。
ユキの天然天才操作にとっては、敵の数も位置も攻撃手段の総数も見ただけで頭に入るので、攻撃のタイミングまで予想が出来る。
敵船攻撃を担当する銀河一の射撃能力を誇るマコトにとっても、それは同じで、更にパートナーかどう回避するかも以心伝心で理解をしているので、飛翔する白鳥からのどんな攻撃でも、命中させるに朝飯前なのだ。
「次は」
凄まじい弾幕攻撃に全く焦る様子も無く、マコトは近距離のビーム攻撃で、テロリストたちの違法改造船を一隻また一隻、宇宙の光と化して行く。
今の二人にとって唯一の困惑ポイントは、ヌードのまま操船戦闘を行っているので、急旋回などの遠心力で大きなバストがタプンっと弾んで視界に入り、恥ずかしさを感じてしまう事くらいだろう。
――っギュウンっ、ギューーンっ、ビカビカっ!
ほんの数回の接近攻撃で、十隻いたテロリストの違法武装船団は、半数が消滅。
十分とない戦闘で半壊させられたテロ組織の悪党たちは、戦意喪失よりも、命尽きる恐怖に呑まれ始めていた。
『ボっ、ボスぅ…っ!』
『っぐぐぐうぅっ!』
裸の少女二人に追いつめられつつある自分のプライドが軋む、テロリストのボス、オーガラン。
しかしテロボスは、無闇な攻撃や逃走を選択せず、逆転の一手を打ってきた。
船長の乗ったドローンと、ソレを追跡してきた脱出ポッドがどの方向から来たのか、ちゃんとチェックをしていたのである。
『手前ぇらっ、反転して客船へ取り付けぇっ! 客船を盾にすりゃあっ、あのガキ共もっ、手ぇは出せねぇっ!』
『『『おっ、おおおーっ!』』』
悪党船団は、攻撃を続けながら全船を反転させると、加速しながら豪華客船セカンド・タカラブネ号へと、接近を計る。
「まあ! マコト、ご覧になって!」
「仕方が無いね。あと一~二隻くらい脅かして、投降させようと思っていたけれど」
ユキが加速を駆けながら、マコトは更なる殲滅攻撃を仕掛けてゆく。
人質作戦へ走るテロリストたちの武装船が、更に二隻と消滅をして、残るはボス船を含めた三隻となった。
『っちくしょおおおっ! ボスっ、なんとか取り憑いて下さいぃっ!』
中型のボス船が豪華客船を人質に取る勝利を信じて、忠誠心の熱い悪党たちの小型武装戦二隻が、反転攻勢に打って出る。
左右へ距離を開けながらの間髪入れずなビームとミサイルの乱射だけど、攻撃の手数としては、普通に全船時の二十パーセント以下だ。
ユキにとっては、さっきまでの攻撃に比べても、当たり前に余裕で回避。
マコトにとっても、既に只の的でしかない。
「まったく。往生際の悪い」
二隻からのミサイル郡を、羽根からの小型拡散ビームで一掃すると、白鳥の目がギラっギラっと二回光って近距離レーザーを発射して、小型武装船は二隻とも消滅。
『っうわあああっ!』
『ボスうううっ!』
部下たちの全滅を、スクリーンの映像だけでなく音声でも確認をさせられたテロリスト組織のボス、オーガランは、激しい逆恨みで醜顔を歪ませた。
『っんなぁっ…んなんとしてもっ、あの船に取り憑けええぇっ!』
「まあ!」
「この期に及んでの、エンジン全速?」
ボスの船のエンジン出力は違法改造で強化されているようで、今まで吹かしていた通常エンジンとは別の、大出力エンジンが炎を吐き出した。
その様子に、メカヲタの血が騒ぐユキ。
「あのエンジンは、かつてダイピ・ッガー惑星連合に於いて製造をされた、爆進ロケット・エンジンですわ! 低価格にして超加速性能が売りでしたけれど、製品の三割が加速時に不具合を起こして爆散をして周囲を巻き込んでしまうという不適合エンジンでしたので、もはや製造中止も久しい無価値な骨董品ですわ」
エンジンとしての評価は最低だけど、存在としてはヲタク心を擽るらしい、ユキのイントネーションだ。
とりあえずマコトが理解した事は、あのまま突撃をさせたり白鳥のレーザーやビームで無力化してしまうと、その爆発で自分たちや豪華客船も巻き込んでしまう。
という可能性。
「なににしても、エンジンの誘爆だけは させられないね」
ボスの船が射程距離へ入るまでの数秒の合間、マコトは捜査官用の通信チャンネルを開くと同時に、突撃捜査艦へと、急いで伝える。
「こちら地球連邦警察所属、特殊捜査官ホワイトフロールです! テロ組織『オーガランの牙』のリーダーがそちらへ強襲中につき、緊急防衛処置を実行します!」
通信を受けた突撃捜査艦の中年男性艦長は、ブリッジ・クルーたちも含めたモニター内でやや慌てた様子ながら、通信を返す。
『りょっ――おぉ…っ、りょっ、了解した。御武運を!』
無意識に、いつも通りなモニター通信をしてしまったので、画像込みの通信によって美少女捜査官二人のヌードまでもが、突撃捜査艦へとお披露目されてしまっていたからだ。
しかし、根が生真面目なマコトとユキは、豪華客船や仲間たちを護る事に一生懸命で、裸身を晒してしまっていた事に、全く気付いていない。
「ユキ、やるよ」
「はい!」
通信を終えたマコトが、あらためて射撃のグリップを強く握る。
圧力反応で白鳥の鋭い嘴が開かれると、中から、クリアオレンジの長砲身が露出をした。
ホワイト・フロール号に搭載されている様々な火器の中でも、必殺最強の正当防衛手段「融合カノン砲・ガルバ・ブラスター」である。
「出力は最小で…っ!」
ボスの船からは、凄まじい数のビームやミサイル攻撃が向けられているものの、それら全てを、ユキの操縦だけで回避し続けている。
ガルバ・ブラスターは、中型航宙船へ搭載出来る火力としては、オーバー・スペックな程の高威力だ。
テロリストたちの武装船どころか、地球連邦政府と敵対関係な惑星連合軍の宇宙戦艦すら、命中個所によっては一発轟沈可能という、過激な破壊力を誇る。
ボスの違法改造船を、ターゲットスコープの中心に捕らえたマコトは、ガルバ・ブラスターの射出体性質を「遅くて短距離で太い」へと素早く調整。
ブラスターの先端部分で、集約されて凝縮をされるエネネギー粒子が混ざり合って臨界熱反応を起こし、光の粒子が渦巻いて、輝きを増してゆく。
「絶対に落とす!」
一発必中マコトの決意でトリガーが引かれると、白鳥の口から、眩い光の極太ビームが発射をされた。
――っっドビユウウウウウウウウウウウウンンっ!
ビームとしては低速だけど武装船を完全に飲み込む程の獄太い光が、数瞬でテロリスト船を捉え、包み込んでしまう。
『ぅわっ――ウソだろおおおおお――っ!』
灼熱のエネルギーに覆われたオーガランの悲鳴も途中で途絶え、高エネルギーで焼かれながら蒸発をする違法改造船は、爆散のエネルギーすらも飲み込まれて蒸発をさせられながら、この宇宙から蒸発をする。
凄まじい爆光で白鳥の船体表面もキラキラと照らされて、視認可能なレベルに遮蔽されているコックピット内では、二人の裸身も眩い光に晒されていた。
「防衛終了…ふぅ」
「周辺への被害は ゼロですわ♪ さすがは マコトです♪」
「ユキの操縦だからね。完全に集中出来るよ」
お互いへの信頼に、二人は掌をパチンと合わせる。
『こちら、突撃捜査艦艦長。コホん…事件の経過は、確認しております…』
「「……あ!」」
艦長たちが横を向いている映像で、二人は裸である事を、今さら思い出した。
~第三十五話 終わり~
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