☆第三十二話 一番困ったタイミングで☆
マコトとユキが密輸の証拠を押さえた豪華客船セカンド・タカラブネ号が、惑星スルッスのステーションを出港して、二日が過ぎた。
二人は、潜入捜査としての今日のコンパニオン業務を終えて、シャワーで汗を流している。
「そろそろ だよね?」
「そう思われますわ。明日か あるいは明後日か」
二人が捜査報告を本部へと送ったので、次の作戦としては、いよいよ地球連邦所属の突撃捜査局による、公海上での強制立ち入り捜査だ。
宇宙空間での、突撃捜査艦による接舷及び乗船調査であり、惑星ステーションでの乗り込み捜査に比べ、犯罪者を取り逃す可能性も格段に低くなる。
マコトたちが潜入をする際にも、密輸の証拠が確定次第に行動開始であると、知らされていた。
ただ、証拠確定から銀河標準時にして何日くらいで突撃捜査が開始されるかまでは、当たり前だけど確定されていなかったのである。
それでも、乗客たちの安全確保という観点から、二人は推察をする。
潜入捜査を開始した時点で、突撃捜査機動隊の出動準備は、整っている筈だ。
マコトたちが本部へ送った報告データを、その日のうちに捜査部で検証をして、強制捜査の許可が発令されて、すぐに出動をしたと考えて。
「すでに 本部より突撃捜査艦が出港をされていて、このセカンド・タカラブネ号へ追い付くタイミングが、明日か明後日。と、私を計算をしておりますわ」
と意見を聞かされたマコトは、パートナーの考えに疑いが無い。
「でもさ、出来れば 明後日の方が 有り難いよね」
「ですわね」
突撃捜査艦の接舷は明後日の方が嬉しいという理由は、コンパニオン業務の日程であった。
第三班の今日の業務が午前の班だったので、いわゆるトップレスでの、朝食のテーブルサービス。
なので午後の班である明日は、ヌードでクラッカー・ディッシュを努める、コンパニオンたちの言う「女体盛り」の日なのである。
「全裸業務の時に、突撃捜査隊の方たちが乗り込んで来るとか 恥ずかしいもの」
特に、荒事を想定している突撃捜査隊員は、男性が殆どでもあるので。
「乗り込み捜査の時とか、乗客も乗務員も みんな極力 現状維持だからね」
流石に、裸の女性に上着くらいは、羽織らせて貰えるだろうけれど。
それ以前に、裸で女体盛りをさせられている有様を仲間の男性たちに見られるとか、裸に対して抵抗の薄いユキであっても、流石に恥ずかし過ぎるだろう。
「とはいえ、それも任務である以上 致し方ありませんですわ」
「…まあ そうだけど」
なんだか、マコト程の憂鬱具合でも無さそうなユキだった。
そして翌日、マコトとユキとナナイーとヤチエの四人が、いつものように全裸を飾ってクラッカー・ディッシュの上へ仰向けになって、男性客たちの間を流されている時に、それは実行された。
「戴こうか」
「はい」
初老の富豪男性の指先で、マコトの巨乳先端を隠すクラッカーが摘み取られて、バージン・ピンクの媚突が数秒間と晒されて、更に下腹部の無毛な処女縦筋を隠すクリームが掬われて数秒間だけ露わにた瞬間、船内業務員たちがザワつき始める。
(! ユキ)
(はい!)
突撃捜査艦が、豪華客船へと警告を発信し停船をさせて、乗り込む為のチューブを接続したと感じられる、微細な音と振動。
マコトとユキの、まさしく一肌脱いだ潜入捜査が、功を成したのであった。
とはいえ、まだ二人も、動くワケには行かない。
二人が直接、突撃捜査隊員たちを視認出来たワケではないので、強制捜査が始まったと確信をするには、早いのだ。
「ワタシも、戴くよ」
「はい♪」
乗務員たちのザワつきに気付かない富豪たちの指で、ユキのクラッカーを摘み取られて桃色の媚突が晒されて、クリームを掬われ、閉じられた恥処を数秒だけ室内灯で照らされる。
(早く 突撃捜査官たち…!)
幾人もの富豪たちに秘めたい恥処を公開させられる恥ずかしさで、特にマコトが焦っていると、カジノブロックの高所通路を、足早に急ぐ男性が視界に捉えられた。
「「!」」
マコトもユキも、視認したと同時に反応をして、お互いの動きを確認する必要も無く、同時に行動を開始していた。
全裸のままディッシュから飛び降りて、富豪たちへと急ぎながらも綺麗な礼を捧げ、早足から疾走。
「ユキ、今の…!」
「はい。この セカンド・タカラブネ号の船長『マカリン・ユカリン・タルカリン』氏に、相違ありませんわ!」
突撃捜査隊員たちの姿を視認してはいないけれど、重要参考人である船長の逃走を許すワケにも、行かない。
ヌードの美少女二人が控え室へ飛び込むと、担当さんズが慌てていた。
「「あ、あのっ、お二人…? なにかトラブルでもっ?」」
マコトは中性的な王子様の様な美顔を凛々しく引き締め、ユキは穏やかなお姫様のような愛顔を凜と引き締めて、正義で輝く意志を魅せている。
「すみません。急用です」
「私も、同じく」
「「え、あ、はいぃ…っ!」」
テキパキと答える美しい裸の二人に、担当さんズは、どう対応して良いのか解らなかった。
二人は通路を走って自室へ駆け込むと、急いで荷物を探って、火器から偽装したアクセサリーを手にし、逃走中の船長を追いかけ始める。
「ユキ」
「船長は、船内前方へと逃走中ですわ!」
密輸の証拠を押さえた二人は、乗船した夜に、ネズミドローンたちのリミッターを解除していた。
ネズミそれぞれが、今やこの船全体に届く短波発信をしていて、目標人物の移動を壁の向こうから、充電しながら交代で追跡をしている。
ドローンからの電波はマザー・コンテナで統合をされて、ユキのイヤリングへと送信され続けているのだ。
逃走船長をユキが追いかけ、共に駆けるマコトは、偽装アクセサリーを素早く銃器へと、組み立て直す。
「こちらが近道です――きゃっ!」
角を曲がろうとしたら、慌てた様子のトップレス三人娘とバッタリ遭遇し、ユキだけでなくマコトも驚かされた。
「お、お姉さま方! どうされました?」
急ぎながらも平静な対応をするマコトへ、ツインホたちが告げる。
「な、なんかツノね~、船内が バタバタしてる感じツノよね~!」
「ギョギョっ。銀河警察の船とかも、接近しているようなのですっ!」
「かちり。コノ船、ナニカ アッタノカシラ?」
それだけで、逃げ出した船長は、犯罪行為を自白したようなモノだ。
二人としては、コンパニオンたちの安全も、最優先するベキ事案である。
「とにかく、お姉さま方は 自室で隠れていて下さい。荒事になる可能性が、高いですので」
「私たちは、もう一つのお仕事を 完遂いたします!」
という注意をどのように解釈したのか、三人の目が、果然やる気でランランと輝いたり。
「ギョギョっ! マコちゃんとユキちゃんには、別口のアルバイトがあったのですかっ!」
「かちゃり。ソレナラ、私タチモ、力を貸スワヨ!」
言いながら、劇団コンパニオンの倉庫から金属棒やらチェーンやらを持ち出して、手慣れた動作で扱って見せる。
「あの、お姉さま方は 体術の経験が…?」
マコトの問いに、三人は自慢げに輝くドヤ顔をキメる。
「うっふふ~。こう見えて、私たち~、宇宙海軍の初級訓練課程を~、満点で履修済みなのツノ~♪」
「そ、そうなのですか?」
女優業へのアピールとして、色々な国家組織で体験入隊をしていたらしく、まさしく今回のコンパニオン業務の直前に、護身体術をマスターしていたという。
「無茶はしないけど~、コンパニオンみんなの安全くらいには~、役立てるんツノよ~♪」
三人の笑顔には、自信が輝いている。
「…はい。それでは、このブロックの安全を、宜しくお願いいたします」
「ギョギョっ。お任せあれです!」
「かち。二人モ、裏ノあるばいと、気ヲツケテネ!」
「は、はい♪」
勘違いはあるけれど、とにかく今は、船長の逃走を阻止しなければならない。
船内には、すぐに突撃捜査隊が乗り込んでくるし、こちらのブロックが直接の危険に晒される事も、無いだろう。
二人は、お姉さま方にブロック入り口の警戒を任せて、逃走者の追跡へと、ヌードのまま走り出した。
マコトとユキを見送る三人は、円陣を組んで気合いを入れる。
「不審な輩がきたら~、撃退するツノよ~っ!」
「ギョギョーっ!」
「かちりーっ!」
この時の決断と行動が、後に、三人の新たな運命を切り開いた。
「ユキ、容疑者は?」
「船首の緊急脱出ポッドへ、向かっている様子ですが…!」
「うん。違うね」
突撃捜査隊員たちが乗り込む以上、脱出ポッドは、最初に押さえられている。
なのに、ポッドの方向へ向かっているという事は、別の脱出手段がある。
という事だ。
「っうわっ!」
「っぉおおっ!?」
裸で駆ける二人の美少女と、次々にすれ違う乗務員たちが、驚いて通路を空ける。
「ユキ、これ!」
走りながら船体設計図をチェックしていたマコトは、船首脱出ポッドに隣接設置されている、デブリ探索用の空間ドローンへ、目を付ける。
「これ、たしか 人一人くらいなら、乗れたよね?」
~第三十二話 終わり~
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