☆第二十五話 新イベント☆
「「あ、お疲れ様です。四人とも、ちょっとお時間、宜しいですか?」」
「はい」
数回とクラッカー・ディッシュをこなしているマコトたち四人は、仕事終わりのタイミングで、担当さんズに呼ばれた。
何か失態でも、しでかしたのだろうか。
あるいは、富豪たちからクレームでも入ったのか。
なんとなく、クロスマン主任に呼び出されるいつもお説教を思い出しながら、マコトとユキは美顔を見合わせて、思わず警戒をする。
ヌード・コンパニオンとはいえ、担当さんズは男性なので、女性たちは当然、着替え室で羽織物を着てから二人を招き入れての、仕事に関する話であった。
入室を許可された担当さんたちは、なんだか笑顔。
「「実は、キミたち四人に 相談なんですが♪」」
この旅客船セカンド・タカラブネ号に於いて、マコトたちが努める新しい接客サービス「クラッカー・ディッシュ」が、好評らしい。
「それは 何よりですわ♪」
勝手にとはいえオシャレを努めたユキは、特に嬉しそうだ。
「「いやぁ、キミたちのお陰ですよ♪ それでですね、ご相談というのは…」」
新しい試みが評判となったので、更に企画をしていたイベントにも、新たにGOサインが出たらしい。
「新しいイベント ですか?」
「「はい。それで、こちらで選ばせて戴いたコンパニオンさんたちへ、現在、お声をかけさせて貰っている。というワケです」」
「あのっ、それはっ!」
「どんなぁ~、イベント~、なんですかぁ~?」
マコトたちと一緒にディッシュを努める二人のコンパニオン、ナナイーとヤチエが、緊張しながら仕事内容を尋ねた。
(まあ 当然だよね)
仕事内容がわからなければ、引き受けるも断るも無い。
問われた担当さんズは、本当に説明が後になってしまってウッカリしていたと、表情で解った程、今回のイベントにノリノリなのだろう。
「「あぁ、はい。新しいイベントは『レディー・ホース』と言って、簡単に言えば、コンパニオンたちによる徒競走です♪」」
言いながら、手元のデジタルペーパーへ、会場とコースを映し出す。
コースは、陸上競技のコースというより小さな競馬場みたいな造りで、コースの出入り口を除いて廻りは客席で埋め尽くされていた。
「徒競走 ですか…?」
ユキが頭の中で想像している徒競走と、マコトたち三人が想像している徒競走は、同じであろう。
「その徒競走は、つまりボクたちコンパニオンが、トップレスでコースを駆けて、お客様方が賭をする。というイベントですか?」
ネコ耳なマコトの質問に、ウサ耳のユキも同意し、水色肌のナナイーと全身真っ赤なヤチエは、少し身構えた。
「「はい。そんな感じてすね。コースは三百メートルのコーナー込みな半周で、お客様の観覧席もありますし、船内での中継もされます。地球本星の伝統レース『ケェバー』に倣って一着を競うレースですし、参加者にも、一着から五着までは賞金が出ます」」
「しょっ、「賞金っ?」んんっ?」
ナナイーとヤチエが、ハモって問い直す。
「「はい♪」」
担当さんたちの説明によると、一着の賞金は、今回のコンパニオンのフルタイムのバイト代と、同額だとか。
「えっ、「ぇええ~っ?」ぇ~?」
「すごい金額ですね」
「「でしょう?」」
笑顔の担当さんズは、更に説明をくれる。
二着でも、フルなバイト代の半分ほどの額で、三着以下は流石にバイト代よりはかなり安いものの、金額としては走りがいのある額だ。
その財源はつまり、お客様の「勝ち馬投票券」ならぬ「ヴィクトリー・ガール・ウイニング・チケット」から賄われる為、運営側としても、十分な娯楽性を提供しながら利益を得られるイベントだという。
「「既にお客様方へ情報を提供した様子では、かなりのお客様が お楽しみにされていると、データが出てまして♪」」
そして、マコトたち四人が選ばれたのも、お客様たちからの要望なのだとか。
「「レースは、初回ですので、まずは十二名のコンパニオンで行われる事になります。イベント開催の日時は三日後。いかがですか?」」
(トップレスで レース…)
場面を想像すると、やっぱりマコトには、何が面白いのか全く理解が出来ない。
しかし、そういうイベントを男性が好むという趣向は、今回のコンパニオン業務で、なんとなく理解はしていた。
(ユキは…)
パートナーへ目で確認をしたら、ユキは思った通り、愛らしい笑顔を輝かせる。
(…まあ 楽しみを見つけるよね)
裸に抵抗が薄いうえ、ファッションにも明るいユキである。
(スポーツ・コースをトップレスで走る開放感とか、特にユキ 興味あるよね?)
(はい♪ マコトも、ですわよね?)
(ぅ…)
小声での会話で、お互いの心理は手に取るように解っている二人。
言われたマコトも、かつて繁殖欲に猛る野生生物の惑星で、ユキと二人で蔓植物に大の字姿勢で絡め取られ、高い崖の上から強制放尿をさせられた際の、非常識この上ない羞恥と強烈すぎる開放感を、いまだ覚えていたりはする。
「…それじゃあ――」
出場するか否かを、マコトが応えようとしたタイミングで、ナナイーとヤチエが声高に応える。
「はっ「は~い! 出場します~♪」ぅ~♪」
「二人とも、出場をするの?」
「もっ「もちろんですよ~♪」ぉ~♪」
驚かされたけれど、納得もした。
何と言っても、トップレスなのに紙マッチデートを断るのが辛くてヌードのディッシュを選ぶような二人である。
コンパニオン四人の了解に、担当さんたちは、満面の笑顔。
「「いやぁ、それは助かりました。それでは、船内時間で、明後日の午後四時に、第六ブロックに集合ですので」」
と言い残し、担当さんズは別のコンパニオンへと、出場要請の為に出て行った。
そして、三日後の午後三時。
今日のテーブル担当を終えたマコトとユキは、これから出場をする「レディー・ホース」の為にシャワーで汗を落としながら、ドローンの捜査状況を確認する。
シャワーの機会に、ねずみ形ドローンからの情報を、ユキが集めて分析をするのだ。
「ねずみちゃんたちは どう?」
「はい。やはり このお船の構造体には、密輸品を隠す構造上の余裕も、あるいは船体の改造も 確認できないようですわ」
まだ船体の全てを調査したワケではないけれど、最も怪しいポイントでもある「船体そのものを密輸品隠しとして使用する違法改造」等は、片鱗も見られない。
「という事は、やっぱり、その…あの子たちの活躍に期待…という事だよね?」
マコトとしては、メカヲタクしか歓喜しないであろう「限りなくリアルに生物的外観を模した黒艶メカのG」を思い起こすだけで、身震いがする。
中性的な王子様の如くな美顔が、憂鬱に曇りながらも、なお被虐的な官能美で輝き、艶漆黒のネコ耳やネコ尻尾が、サワワっと総毛立つ。
小さな身震いで、豊かな巨乳もプルルっと震えて、先端の小さな桃色もギュ…と身を固くしてしまっていた。
マコトの反応に、ユキはむしろ、自信を深める。
「あら、あの子たちの完成度を見れば、むしろ 可愛らしいではありませんか♪ マコトが怖がる程の完成度だなんて、製作をした者として、合格点満点を戴いた気持ちですわ♪」
「そう…? まあでも、次の寄港ステーションで 回収するんだよね」
「はい。アリヤ捜査官から、捜査本部と 次の寄港ステーションの現地惑星捜査官へと、連絡がなされている筈ですから」
あの、色も形も艶も動きもほぼ本物Gなドローン郡をお迎え行くとか、出来ればエンリョしたいマコトであった。
シャワーを浴びると、超速乾バスタオルで濡れた裸身をくるんで、メイクのためにベッドへ向かう。
「あら~、マコちゃんとユキちゃん。今日は、これから例のツノ~?」
「はい。トップレスで 徒競走をして来ます」
「かち。マァ、大胆ネェ♪」
「私も そう思いますわ♪」
「ギョギョっ。ユキっちは、なんか楽しそうですよねっ!」
「うふふ♪」
未体験のファッション・シーンを楽しみたいユキは、心底からの明るい笑顔で、お姉さま方へ応えていた。
マコトは、ユキのベッドでメイクをして貰って、自分のベッドで、いつものトップレスへと着替える。
「それではマコト、参りましょうか♪ お姉さま方、行って参ります♪」
「では、行って来ます」
「私たちも~、食堂のモニターで、応援してるツノね~♡」
同室のお姉さま方に笑顔で見送られ、二人は、教えられていた第六ブロックへと向かう。
「今回のレースを引き受けたのは、断るよりは目立たないから だよね」
「それと、私たちの設定にある『女優の卵』という観点から、でもありますわ」
お姉さま方ほどではないにしても、設定としては「俳優の事務所に所属してチャンスを求めている女子」なのだ。
肉体関係NGは特に変では無いにしても、トップレス接客やヌード・ディッシュを引き受けておいてトップレス・レースを断るのは、違和感を感じられてしまう可能性もある。
と考えられる。
「それに、ベッド関係ではないのにお仕事のお断りをしていれば 担当者さまの覚えも悪くなり 捜査活動そのものに支障をきたす可能性も、ありますもの♪」
言葉尻が楽しげなユキは、レースを楽しむ気でもいると、マコトは理解をしていた。
「ここだね」
ランナーの控え室へ入ったマコトとユキは、驚かされる事となる。
~第二十五話 終わり~
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