☆第十六話 ドローン捜査☆


 翌日、第三班は再び朝の担当となり、富豪たちの食事を担当。

 マコトやユキたちトップレス・コンパニオンが受け持った、家族連れのテーブルへ食事を運ぶと、やはり少年たちは恥ずかしそうに真っ赤になって、下を向いたり視線を泳がせたりしている。

「お待たせ致しました」

 双乳も臍も隠れないカートで食事を運び、テーブルへとセッティングをする間、下向きで柔らかく揺れる巨乳に、少年たちの正直な興味と自尊心の葛藤が、見ているだけで伝わって来たり。

(これも任務だし、見られても仕方が無いけれど)

 とはいえ、自ら誘うのも、富豪の帝王教育の邪魔かもしれないし。

(…誘えと言われても、出来ないけれど…)

 そんな経験など皆無なマコトとユキは、セクシーなアピールを、自分たちが出来るとは思えないでいる。

(ユキのノリでも…無理だよね)

 寮の自室で、全身鏡の前で新しいランジェリーを着るユキは、嬉しそうにポーズを取ったりしてはいるけれど。

(あれは 他人がいないから、だもんね)

 同じく接客に努めるパートナーをチラと見ると、恥ずかしそうな様子の少年に勇気をつける為、あえて堂々としている、くらいだ。

 現状以上に裸を推せと命じられても、お姉さま方のように出来る自信は無い。

 ツインホもリュグもソフティも、富豪男性や少年の目の前で、微妙に肢体をうごめかせて、バストやヒップを極力自然に、揺らせて魅せている。

 あれも、映像のショー・ビジネス界で勝負をする為には、必要なテクニックなのだろうか。

 とか、マコトは想った。


 一日の仕事が終わると、マコトとユキは、与えられた自室のシャワーで汗を流す。

 裸になってシャワー室へ入り、ユキが特種な器具で、手早く操作パネルを外してみせる。

「どう?」

「戻って参りましたわ♪」

 壁の中を覗き込んだら、タイミングもバッチリで、捜査機器が戻ってきた。

 なるべく二人だけでシャワーを浴びるのは、極力バレるリスクを減らし、潜入させている捜査マウスからの情報を、ユキお手製のイヤリングへと転送させる為である。

 ネズミ型自立式捜査機、通称「ネズミちゃん」シリーズは、ユキの自作メカたちの中でも特に可愛らしいと、マコトは感じている。

 白いメカネズミだけど目や耳が大きくて、全身のシルエットもデフォルトっぽくて、このままオモチャとして販売しても通用しそうな程に愛らしい。

 しかし、制作者でありメカヲタクのユキ曰く「可愛い事は認めますけれど、まるで個性がありませんわ」との事。

 この捜査機器たちは、ユキが趣味で作っていたドロイド郡の一つであり、今回の任務の為に、急造&改造で仕上げたメカである。

 制作者としては「もっと凝りたかったですのに」との事であるが、メカヲタクの偏愛っぷりを、パートナーのマコトは深く理解をしていた。

 メカヲタクにとってメカの至高は完全二種類で、それは「機能」か「ロマン」だという。

 ロマンの方は、マコトにはチンプンカンプンだけど、機能についても、実は怪しい。

「例えますに、戦闘用のロボットを例に挙げますれば…いかにも砲撃戦用を体現するかの如く全身に重火器を配置した人型マシーンが『ロマン』で、戦闘に勝利する為とあれば人型にすら拘らない異形の重戦闘デザインが『機能』ですわ♪」

 とか得意げな愛顔で解説をされても、マコトには全く理解ができなかった。

「今日は、どのあたりを 調べたのだっけ?」

「はい。船体上方の Aブロックですわ」

 ネズミたちによる船内捜査にあたり、巨大な旅客航宙船を幾つかのブロックに分けて、捜索をさせている。

 この航宙船は、旧世紀の惑星海上での航海旅客船を、巨大にして喫水線で上下を鏡写しにしたようなデザインだ。

 地球本星のステーションで乗船をした際の、上下方向でまず分けて、前側から後ろ側へ向かって輪切りにしたように、百五十のブロックで区切ったマップとしてインプットをしてある。

 ドロイドたちは、ネズミ取りのようなマザーコンテナで、ユキたちの部屋のシャワールームへ設置された操作パネルの裏側から、壁の中を移動。

 最適な場所まで高速移動をすると、マザーコンテナが固定をされて、ネズミたちが出動をする。

 様々な場所の空気穴や配管を通り、赤外線や音波探知などを駆使し、それぞれの近隣構造を調べて廻るのだ。

 ネズミが小型なのでバッテリー容量が少なく、移動しながら電気の配線もチェックをしつつ、適当なタイミングでバッテリーも補充する。

「野生の鼠は 逃げながら草を食べるって、訓練学校の生物科目で習ったけれど」

 まさしく、シリコンで出来たネズミ、そのものだ。

 違いは、穀物等ではなく情報を食べるとか、ネズミ算式に増えたりする事など決して無い、あたりだろう。

 ネズミたちが、与えられたブロックでの情報収集を終えると、マザーコンテナへ戻って収容されて、コンテナがユキの元まで戻ってくる。

「お帰りなさい♪ ねずみちゃんたち♡」

 遠く離れたコンテナから電波などで情報を送らせると、万が一にも、船の通信網でキャッチされてしまうかも知れない。

 なので、集めた情報はコンテナからのケーブルを使って、ユキのイヤリングへと流すのである。

 手間ではあるものの、その分、万が一のリスクも少ない。

「まあ、いっぱい 食べてきましたのですね♪」

 ネズミたちの集めた情報料の多さに、まるで飼い主の如く、嬉しそうな笑顔のユキであった。

「ご苦労様でした♪ それでは引き続き、次のブロックも お願いいたしますわ♪」

 情報を移し終えてメモリが空になったネズミ型ドローンは、全機マザーコンテナへと収まって、再び壁の中の空間を高速移動しながら、姿を消した。

 ドローンたちを見送って、元通りにパネルを閉じる。

 そのまま二人は、裸身をシャワーで洗浄し始めた。

「ふぅ…やっぱり シャワーは気持ち良いね」

「ですわね♪ ふんふん~♪」

 シャワーヘッドそのものは壁への備え付けで、二メートル強な高さに位置する。

 頭から湯を浴びると、マコトとユキのピンと立つケモ耳が濡れて垂れて、反射的にピクピクっと振るわせて湯を弾く。

 ツルツルの頬や細い首を濡らし、大きなバストや細い背中、括れたウエストから豊かなヒップへと、温めながら流れて滑っていた。

 ケモ尻尾も湯を滴らせながら、ムッチリと張る腿や内側を湯が流れ、艶めかせる。

 巨乳の谷間や丸いお尻の合間、引き締まった下腹の清純な閉じ目などにも、心身の安らぐ湯で濡れて洗われた。

 シャンプーや石鹸の香りで湯気をホカホカさせながら、ベッドへ戻ると、反対側のベッドでは、三人娘が晩酌の真っ最中。

「お疲れツノ~♪」

「お疲れ様です」

「お疲れ様です♪ 晩酌ですか?」

 バスタオル一枚なマコトとユキは、中性的な王子様美顔や愛らしい無垢なお姫様フェイスに対して素晴らしいシルエット・ボディーで、超高度なミスマッチの魅力も輝かせていた。

 多くの召使いたちにお世話をされても、むしろ当然と思えるような二人なのに、庶民的な宿泊スペースで、バスタオル一枚で簡易ベッドへお尻を下ろしている。

 ベッドの一段目に腰掛け、両腿をピタりと閉じて、艶めくユルフワな長い髪に、優しく櫛を通しているユキ。

 比して、ベッドの二段目で正座しながら、サッパリとしてサラサラなショートヘアを、バスタオルでワサワサと拭っているマコト。

「ギョギョっ!」

 特にマコトは、頭を拭くのに合わせて大きなバストがタプタプと弾み、同性のお姉さま方から見ても「誘ってるの?」とか、想わず勘違いをしてしまいそうだ。

「かち。アラマァ…フフ」

 高貴な王子様とお姫様が下々の生活を体験しているようで、その背景とか、色々と妄想させられるお姉さま方である。

「あはは~♪ マコっちゃんてば~、大胆ツノねぇ~♪」

「? あ」

 言われて、ユキと二人きりな寮の自室とは違う環境なのだと、あらためて恥ずかしくなったマコト。

「かちり。ゆきチャンタチモ、ドウ?」

 と、晩酌のお誘いを受けた。

「申し訳御座いません。私たちは、まだ 未成年ですので…♪」

 飲酒というか、地球本星の青年齢は十八歳であり、マコトもユキも、まだ十七歳。

 ましてや地球連邦政府が直属の、特種捜査官である。

 任務であればともかくであろうけれど、それ意外での飲酒など、当然に御法度なのである。

 だから二人は、晩酌へのお誘いのお断りだけでなく、プライベートでもお酒を飲んだ事は無かった。

「んまぁ~、二人とも可愛いツノねぇ~♪」

 清純な妹たちが可愛くて仕方が無いらしいツインホが、真っ赤な顔でユキへと近づき抱き付いて、スベスベの頬へ自らの頬をスリスリし出す。

「んん~♪ すべすべでぇ、気持ち良いツノ~♪」

「ツインホお姉さま、酔われておいでですわ」

 銀河に流通している殆どのお酒は、含まれるアルコールそのものを銀河共通の基準で精製されていて、溜飲しても、旧世紀のようなニオイを発したりはしない。

 香りなどが旧来な趣向のお酒もあるけれど、そもそも、一般客の好みに合わせて香りは多様化していて、その違いを味わうのも酒飲みの楽しみらしい。

 お姉さま方が晩酌しているお酒は、体内に入るとイチゴの香りがするフルーツ酒類だった。

 マコトもユキも、晩酌の現場そのものが初めてなので、これも経験と、捜査官の本能で色々と吸収をし始める。

「…お姉さま方のお酒は、甘い薫りがするのですね」

「かちり。ンン~♪ ついんほハ特ニ、コノ香リガ 好キダカラネェ♪ 私ハ、昔ッカラノあるこーるノ香リガ 好キダケド♪」

「ギョキョっ。あたしは、ハーブ系が好きです♪」

 三人とも、適度に酔いが回ってきて、心地良さそうだ。

 そんな姿を見ていると、マコトとユキも、その気分をお裾分けして欲しくなった。

「お菓子、合いますか?」

 地球から持ってきていたお菓子を、五人で分けて楽しんだ。


                    ~第十六話 終わり~

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