☆第十一話 夜のコンパニオン☆


 マコトたちも属する、航海二日目の第三班は、いわゆる夜の担当である。

 三チームに別れて、それぞれが準備も含めてほぼ十時間の勤務をするのも、朝の担当と一緒であり、マコトとユキは朝一番の組だった。

 早朝のシャワーを済ませてから食堂で朝食を食べて、昨日と同じくトップレスの正装へと着替え、遊興ブロックへと向かう。

「具体的には、どのような業務なのてすか?」

「うん♪ 夜担当は~、大人の遊興の会場だツノね~♪ お酒とか煙草とかをトレイに乗せて~、会場内をウロウロするのが基本ツノ~♪」

「かちり。オ客様ガ、とれいノぐらすヤしがーヲ手ニ取ルカラ、ソノ時ハオ客様ガ取リ易イヨウニ、少し膝ヲ屈メル、トカネ」

「そうなのですか」

 経験者からの指導を受けたマコトとユキが、通路を歩きながら、立ち止まってトレイを持つ姿勢になって、少し膝を曲げてみる。

 上体を正したまま膝だけで小さく上下動をすると、二人の大きなバストがタプっと柔らかく弾んだ。

「ギョギョっ。ちゃんと背筋が伸びてて、綺麗な所作ですね!」

「ありがとうございます。うふふ♪」

 日頃、捜査官として身体を鍛えている二人は、体幹も安定しているから、動作に無駄もない。

 しかも二人は身体が柔らかくて、以前の潜入捜査でヌード・ダンスのレッスンを受けた際には、全裸での百八十度股割りも楽にこなせた程だった。

 金属生命体美女のソフティが、右手の人差し指と親指で「C」の形を作って見せてくれる。

「かちり。ソレト、コノ位ノ しゅーたーヲ、持チ歩クカラ」

「シューターですの?」

 女性の手の平にも収まる、宇宙からの観光客にも大人気なお菓子「ドラヤキ」形の、高性能な吸引器だ。

「そうそうツノ~♪ それでね~、会場の各処に設置してある灰皿からね~、タバコとか葉巻の 吸い殻とか灰をね、シューターで回収するツノよ♪」

 機械式の自動回収機も設置してあるけれど、会場によってはテーブルから離れた中央スペースなどにも、吸い殻ボックスが設置してあるらしい。

「ドロイドちゃんは 使用されないのですか?」

 メカヲタクのユキらしい聴き方が丸出しだけど、そういう細かい特徴は、マコトや家族しか知らないクセだ。

「あはは♪ ユキちゃん ドロイド好きなんだツノね~♪ こういう、高級クルーズのお客さんになるとツノね~、全体的に女性が接客をする事に~、価値を認めるっていうお客さんが、殆どツノよ~♪」

「「………」」

 あまり縁の無い価値観で、マコトとユキは、思わず美顔を向け合ったり。

 銀河旅行を楽しんだり、子供へ帝王学を学ばせるような大富豪たちの集まりクルーズなのだから、庶民であるマコトたちには理解出来なくても、当然だろう。

 会場スタッフ用の入り口へ到着をすると、二人の若い男性の担当者が、コンパニオンたちを出迎える。

「「お早うございます。早速ですが、お客様をお迎えする準備を」」

「「「は~い♪」」」

 船内時間で日を跨ぐ際には、昨日の担当である第二班の、最後を受け持ったチームが会場から退散をする時間から、一時間ほどの会場休憩がある。

 マコトたち夜の担当の一番乗りは、その間に会場の清掃を手伝う事となるのだ。

 とはいえ、清掃そのものはほぼ自動なので、コンパニオンは掃除の仕上げとチェックの意味で、吸い殻やテーブルなどを確認したり、空拭きをして廻るだけである。

「…ここが、いわゆる 夜の会場だね」

「そのようですわ♪」

 大人の遊興会場は、コンパニオンたちの浴室より五倍以上も広い空間で、床には暗い色合いな妖しい高級絨毯が、綺麗に敷き詰められていた。

 一面の壁は超耐性ガラスで真っ暗な宇宙が見えるけれど、現在は映像効果で、煌めく銀河の星々が映し出されていた。

 天井も高いけれど、床も平面だけでなく、広い階段やテーブル、大きなステージやカジノ・コーナーなど、確かにアダルティックでアングラな空間である。

 空間照明も暗めで、ライトの直下にいない人物の顔などは、二メートル程にまで近づかなければ、見えなかった。

「それじゃ~、マネージャーさんからシューターを受け取って~、お掃除のチェック、しましょツノ~♪」

 半裸トップレスの女性たちが、白い布で椅子を拭いたり、縦に長い銀色なブランデーグラス型の吸い殻ボックスを磨いたりしている様子は、背徳的であり官能的でもあった。

 女性たちの掃除に伴い、薄暗い会場の各処で、双乳や裸尻がタプタプくねくねと揺れうごめいていて、男性にとっては天国のような職場なのでは。

(…という感じ でも無いのかな…)

 マネージャーと呼ばれる二人の男性は、セミヌードの女性たちへニヤニヤとだらしのない笑顔を向けているのでは。

 とか想像をしていたら、コンパニオンたちが会場でサービスをするタバコやお酒のチャックなどで、それ処では無い様子だ。

「…女性たちのセミヌードを拝み放題な 職場ですのに、忙しさで 観賞をしている暇もないご様子ですわ」

 自分たちの肌を見られてしまう職場なのに、女性の裸どころではないらしい担当男性たちへ、なんだか同情めいた口調のユキである。

「仕事 だからね」

 チェックが終わると、コンパニオンたちは銀色のシンプルな二段トレイを渡されて、それぞれブランデー・グラスや高級葉巻などを複数個と乗せて、接客の準備が進んで行く。

 ステージ上で、楽団による静かだけどテンポの良い演奏が始められると、いよいよ大人の富豪たちが入場を開始した。

 お客さんたちは男女ともみな上品で、コンパニオンたちよりも、平均年齢が一回りも二回りも上だと見られる。

(さすがに お子様は連れてこないみたいだね)

(ええ。常識的だと 感じられますわ)

 開場と同時に、煌めくステージ上でも、アダルトなセミヌード・ダンスが披露されていた。

「「………」」

 マコトとユキは、潜入捜査で自分たちも上がった経験のあるダンス・ステージを思い出したり。

 照明も派手に廻る舞台上では、トップレスの女性ダンサーたちが、コンパニオンたち以上に扇情的な衣装で、柔らかく舞い踊っている。

 ボトムは紐Tだけど、パストトップは小さなアクセサリーで囲まれて強調をされていたり、肌にはラメが施してあって、ライトを浴びた肌がキラキラと輝いていた。

 富豪たちは、席へ着いてステージを観賞したり、カジノ・スペースでレートの高い賭けに興じたりと、それぞれの時間を楽しみ始める。

「では皆さん…失礼の無いように」

「「「はい」」」

 担当者に見送られて、トレイを持った半裸のコンパニオンたちが、お客様の中へと紛れて行った。

(…これだよね)

 トレイの上段には、アルコールが注がれた小さなブランデー・グラスが五つ。

 下段には、未開封の高級なタバコや葉巻が五つと、やはり未開封の紙マッチが七つ。

 葉巻に比して、紙マッチの数か多いのは、つまり。

(コンパニオンへの 夜の交渉材料…だよね)

 交渉方法は、一束二十本の紙マッチから任意に数本のマッチを切り出して、気に入ったコンパニオンの下段トレイへ載せる。

 富豪が葉巻を味わう場合、コンパニオンは当然、マッチで葉巻へ火を付ける。

 その際に、コンパニオンにその気があれば、ウインクで返信。

 気が無ければ、笑顔でその場から退散。

 という流れだと、マコトもユキも、三人娘から聞かされていた。

 ちなみに、富豪が葉巻を吸わなくても、紙マッチを乗せればコンパニオンはウインクか笑顔の返答をするし、相手の性別も特に問われない。

 薄暗いアングラな会場では、半裸の女性ダンサーの汗光るセミヌードや、コンパニオンたちの艶めくトップレス姿が、ピンポイントな照明で白く浮かぶ。

 コンパニオンは、歩くコースとして、天井や床からの小さなライトを適度に受けるようにと、仕事の条件にも含まれていた。

 カジノを歩くマコトも、綺麗な姿勢で片手にトレイを乗せて、富豪たちの間を、秘めたい布が捲れない様に、ユックリと通り抜けて行く。

 中性的な美しい王子様の如き美顔が、ライトを浴びると、闇で白く輝いて魅せる。

 歩くに合わせて弾む巨乳は柔らかく、先端の桃色媚突も、照明で健康的に艶めいていた。

 括れたウエストは影を刻み、平らなお腹や背中の中心線が、女体特有な柔らかいコントラストで彩られている。

 大きなヒップは左右に揺れて、滑らかな肌は照明の光を艶やかに照り返していた。

 美しく姿勢も正しく起伏に恵まれた若いコンパニオンに、特に男性の富豪たちは、視線どころか顔を向けて追いかけたり。

(見られている…)

 と意識をすると、顔や乳房やウエストやお尻に、男性たちの視線が刺さってくる気がする。

 どうしても恥ずかしく感じてしまい、ピンと立てたネコ耳や、本来なら柔らかくセクシーにユラユラと揺られていたネコ尻尾が、僅かに震えてしまっていた。

 それにしても、富豪たちの視線は、容赦無い気がする。

(…女性の裸とか…そんなに、珍しくも無いでしょうに…)

 ユックリと歩くマコトだけど、恥ずかしさで無意識にちょっと早足にもなっていて、一歩の歩幅も大きくなってしまう。

 その結果、ボトムの前布が、細切り状態で揺れてしまっていた。

 以前、天然生物の脱毛エステによって、今や白い肌には、艶やかサラサラな頭髪と切れ長で凛々しい眉と長い睫毛しか体毛がない、マコトとユキ。

 なので、揺れるボトムの細切りからは、艶々でツルツルな処女桃色の秘すべき溝が、チララチと衆目に晒されてしまっているのだ。

 それでも、無意識のやや早足なマコト自身は、気付きようも無い。

 男性の視線に困惑をするマコトの近くでは、ユキも同じく、男性たちの邪な視線に晒されていた。

(…ユキ、すぐに想像が出来るけれど…)

 パートナーの生活を当たり前に熟知しているマコトの想像通り、ユキは穏やかなお姫様みたいな愛顔を笑顔で輝かせ、柔らかく弾む丸い巨乳や先端の桃色突起や、括れたウエストや白い巨尻に集まる異性たちの視線を、ある意味でモノともしていない。

 衣服への尽きない興味だけではなく、裸への抵抗が薄いウサ耳ウサ尻尾の美少女は、むしろ耳も尻尾も楽しそうに揺れていた。


                    ~第十一話 終わり~

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