☆第六話 コンパニオンたち☆


 ステーション内の、指定された集合ブロックへ行くと、若い女性たちが三百人ほど集まっていた。

 銀河連合への加入以来、地球本星にも様々な知的生命体が移住していて、日常的な地球人類以外の他惑星人の姿も、特に珍しくはない。

 それでも、地球人類の割合が多いとはいえマコトたちのようなケモ耳の人種だけではなく、植物系人類や魚系人類や鳥系人類、更にはシリコン系人類など、集まった女性たちは多種多様だった。

「みんな、コンパニオンかな」

「間違いありませんですわ」

 様々な女性たちに共通しているのは、肌の露出が大胆で、愛らしいフェイスで、プロポーションが恵まれている事だろう。

 マコトとユキも大胆な露出系で纏めたけれど、集団へ混ざると、それほど目立つ感じではない。

 ただ。

「ステーションのお客さんたち、みんな こちらを見ていくね」

「これだけ 若く大胆な女性たちが集まっておりますもの。殿方たちにとっては、いわゆる目の保養 という光景なのでしょう♪」

 異性の視線をあまり気にしないマコトとユキだけど、スタンスはかなり違う。

 マコトは、中性的な王子様みたいな美しさに対してかなり無自覚で、ユキは、見られる事よりも自分とパートナーへ気が向いているのだ。

 通り過ぎる男性客たちは、露出過多な女性たちの集団に目を奪われながら、特に美しく愛らしい二人のケモ耳美少女で、視線が釘付けにされてしまう。

 ほぼ剥き出しな白い背中や、生地を中から押し上げる柔らかそうな巨乳。

 縦長に引き締まった細い腹部や、続いて豊かに広がる少女腰や、衣服がパッツパツに張りついた丸い巨尻。

 更に、根元まで露出した張りのある白い艶腿から、細く絞まった膝と、柔らかいカーブで艶めく脛部と細い足首。

「おぉ…眼福眼福♪」

 男性たちの、遠慮が無い視線で何度も往復をされると、マコトは軽くヤレヤレフェイスを輝かせ、ユキはそんなマコトが可愛らしく感じて眩しく微笑む。

 女性客たちも、特に二人の美貌と愛らしさと、それを引き立てる大胆なファッションに見惚れて、足を止めていた。

 ステーションの客たちからの注目に、コンパニオンたちも笑顔を魅せて、ご機嫌な様子である。

「ね~♪ あなたたちも、セカンド・タカラブネ号ツノ?」

 三人グループで応募したらしい女性たちは、頭の左右に角を持った角系女性と、耳がヒレのような魚系女性と、全身が金属製なシリコン系女性だ。

「はい。皆様もですか?」

 マコトが対応をすると、三人は明るく笑う。

「ま、固いツノ~♪」

「ギョギョ、もしかして、緊張してますか?」

「かちり。コノあるばいとハ、初メテ?」

 どうやら三人は、コンパニオンに慣れている様子だ。

(…これは ちょっとラッキーかも)

(ですわね)

 さり気なく視線で頷き合って、今度はユキが対応をする。

「はい。私たちは、クルーズ船でのコンパニオンに関しまして、全くの初心者でして…。ご迷惑でなければ、色々とご享受を戴けますと、大変 有り難く存じ上げます♪」

「「「………」」」

 マコトよりも固い挨拶に、女性たちは一瞬お互いを見合って、また笑い出した。

「あはは、だから固いツノ~♪」

「ギョギョ~、って感じですよ~♪」

「かちり。マルデ かちかちジャナイー♪」

 そして、三人がフと思ったらしい。

「あ~、あなたたち、なんか見た事あるな~って 思ったけどツノ~♪」

「ギョギョっ、なんかっ、すっごく似てますねっ!」

「かち。ソウソウ、みーモ思ッタワ!」

((………))

 女性たちの言葉に、二人は目線で頷き合って、美しいドヤ顔にキメる。

「自己紹介が遅れまして。わた――ボクは、マコトと言います」

「私は、ユキと申します」

 綺麗な会釈を魅せると、女性たちは、直ぐに解った。

「ああ~、そうそう それツノ~♪」

「ギョギョギョっ、二人ともっ、ホワイトフロールそっくりです~♪」

「かちり。本当ダワッ、マルデ本物ミタイダワ!」

「はい。よく言われますので、今回のお仕事でも」

「名前だけなら 訴えられない…との事ですので…」

 その名前で仕事をする。

 と、嘘にならない範囲で、相手にソックリさんだと思わせた。

「成る程ツノ♪ たしかに、ソックリだもんツノね♪」

 ソックリさんだと納得をすると、女性たちは顔をグっと近づけて、二人の美貌や輝く白い肌艶を、ジックりと観察したり。

「ギョギョ~…お肌スベスベですね~。あたしなんて、サメ肌なのに~」

「かちり。みーナンテ、乾燥肌ダワ」

 肌の悩みは、種族を越えるらしい。

「それで なのですが…クルーズ船のコンパニオンとは、どのような業務内容なのでしょうか?」

「ん、教えて上げるツノ♪ 結構アダルトな感じだツノ~♪」

 明るい女性たちからレクチャーを受けていると、マコトたちが面接を受けたセカンド・タカラブネ号の人事担当者が、迎えに出てきた。


 銀河クルーズ船セカンド・タカラブネ号の外観は、旧世紀に地球本星の海洋を行き来していた豪華客船を、喫水線で上部だけ鏡合わせにしたような、上下対称な船体だった。

 艶めく白色に輝く本体には、他の色合いがほぼ無くて、上品さを感じさせる。

 マコトとユキが見た、クルーズ船の印象は。

(…これが本当に)

(密輸船 なのでしょうか…?)

 言い換えれば「偽装という意味では上手く出来ている」とも言えた。

 クルーズ船へと続くクリア・チューブな通路から、貨物ブロックと、その搬入を注視する。

(コンテナの搬入出は、後部ブロックだね)

(コンパニオンの生活ブロックと、どれ程 離れてますでしょうか…?)

 人事担当者を先頭に、クルーズ航宙船へと乗船をして、中央より少し後ろのブロックへと案内をされた。

「はいはいはい。え~ね、コンパニオンの皆さんは、こちらのブロックで、宿泊となりますよ~」

「「「「「は~い♪」」」」

 通路は、余り広くないけれど白くて清潔感があって、さすがは豪華客船だと感じさせる。

「え~ね、はいはい。班分けに従ってね、各自ね、お部屋で待機して下さいね」

 班分けは、会社の方で決定をしていた。

 旅の航路としては、まず地球本星を出発し、ワープ航法などで一週間過ごして、次の惑星の寄港ステーションで停泊をして、数日を過ごす。

 そしてまた出発後に一週間の銀河航海を経て、次のステーション衛星から惑星へ降りて、ノンビリとまた数日を過ごす。

 という、間違いなく、お金と人生と心に余裕が有り余る富豪たちの為だけの、超ノンビリなスケジュールであった。

「はいはい。え~ね。お部屋はね、六人一組ですからね。え~、ね。皆さん、ナンバー通りのお部屋ですからね」

 宇宙空間を旅する航宙旅行は、船内時間が設定されているとはいえ、基本的には不夜城である。

 なので、アダルトな遊興場で接客に努めるコンパニオンは、原則一日八時間勤務で、三交代制だ。

 午前の八時間勤務と、翌日の午後八時間の勤務と、更にその翌日は一日丸々休みという、なかなかのスケジュールと言える。

 更に、お客様もコンパニオンも知的生命体として人種が多いので、全ての班が、出来る限り多種となるような班分けでもあった。

「ボクたちが一緒なのは、やっぱり 二人一組で紹介して貰えたからかな」

「きっと その通りですわ♪ うふふ♪」

 なんであれ、ユキと別々の班にならなくて助かったと思うマコト。

「捜査はある程度 イヤリングで出来るけれどさ。違う班にされてしまったら、部屋も別々だろうし、ユキと連携 取り辛くなるだろうからね」

「まあ…マコトったら。私より お仕事ですの?」

 と、拗ねたお姫様のような、愛らしいワガママ愛顔のユキである。

「えぇと、ナンバーは 七十二号室…あっちだね」

 大勢のコンパニオンたちのように、マコトとユキは、与えられた部屋へと入室。

「あれ、室内 結構シッカリしてる感じだね」

「昨夜、私たちが泊まっていたアパートよりも、綺麗な内装だと感じますわ♪」

 真っ白な六人部屋は人数通りなスペースで、扉の左右へ、三段ベッドが設置されていた。

 正面の壁は大きな窓で、漆黒の宇宙に、青い地球や光るステーション灯が見えている。

 各ベッドの枕元は照明になっていて、壁側には鏡や収納も用意されていた。

 部屋中央のテーブルには、コンパニオンの衣装が包まれた袋が六つ、置かれている。

 ベッドの足下方向にあたる右の壁には、中型の冷蔵庫が設置されていて、これも自由に使用できるらしい。

 左側の壁には、トイレやシャワールームの扉があって、当然、使用は自由。

「トイレとシャワーは、従業員用の大型ユニットも、私たち裏方さんが使用可能のようですわ」

「…偽装としては、かなり注意深い感じ だよね」

 とか話していたら、ステーションで知り合った三人娘がやって来た。

「あ、この部屋だってツノ~♪」

「ギョギョっ、なんか結構 綺麗ですよね~」

「チョット 無機質ナ感ジダケドネ」

 等とワイワイしていたら、二人に気付く。

「あれ~、マコトとユキじゃないツノ~♪ 同じ部屋だったんだツノ~♪」

「はい。先ほど ご紹介をさせて戴きました通り、私たちは初心者ですので、色々とご迷惑をお掛けしてしまうと思われますが、存分に注意いたします」

「なにとぞ、よろしくお願いいします」

 綺麗な礼を捧げると「だから固いツノ~♪」とか、三人娘は明るく笑った。

 あと四時間ほどで、銀河周遊クルーズへと出発である。


                    ~第六話 終わり~

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