家に帰った俺は、さっそく紅いキャミソールを身に付ける。

肩にかかる紐の部分が首の裏で結ばれるタイプなので、鏡に映る俺は変態女装野郎というより、昔話の絵本に出てくる金太郎だ。

昔の女ってこういう下着でおっぱいをカバーしてたのか?

江戸時代の浮世絵で、こんな服着てるおっさんの絵とかあったけど、あれもおっぱいカバーだったのか?

とにかくこの上にシャツを着て、人に見られなければ大丈夫だろう。


次の日、中学の時の同級生から電話がかかってきた。

昨日までの俺だったら、宗教の勧誘か営業だと思って遠慮しただろうが、今の俺はホイホイ出向く。

指定されたファミレスに着くと、名前も思い出せないが昔どこかで見たような女が、もじもじしながら俺に向かって手を振った。

適当に挨拶し、当たり障りのない会話をしていると「ふたりっきりになれるところに行かない?」と誘われたので、とりあえずカラオケへ。

個室に入った瞬間、彼女は大胆に胸を押し付けてきたので、俺は遠慮なく彼女の水色のブラウスを手荒く開き、白いレースの縁取りがされたハーフブラを強引に引き上げた。

剝き出しの生肌おっぱいを舌で堪能して、スカートの中に手を入れると「ここじゃいや」と腕にしがみつかれる。

今からホテルに移動するほどの金と時間、なにより熱意がなかったので「またあそぼう」と言って解散した。

彼女には悪いが、俺にとっては「ここに女がいるね」と認識するレべルだった。


帰り道に公園を通ると、犬の散歩をしている女性とすれ違う。

背中のあたりまである流れる黒髪からいい匂いがした。

もう一度鉢合わせようと別の道から迂回して、先回りする。

歩いてくる彼女を正面から見ると、背筋がぴんと伸びた姿勢の良さがまず目についた。そして肝心の部分、彼女の着ている桜色のTシャツにゆるく形作られる柔らかそうな膨らみは、歩くたびにふるんっふるんっ、と律動する。健康的でとてもいい。

顔もわりかし美人だったので「可愛いわんちゃんですね」と声をかけた。自慢の我が子を褒められて嬉しかったのか「ちょっとそこまで歩きませんか」と誘われる。

俺は自分も犬を飼っていること、少しでも元気がなくなると動揺してしまうことなど、愛犬家あるある話を披露し、意気投合を図る。気づけば人気のない生け垣に引き込まれ、彼女は桜色のTシャツとアッシュグレイのスポーツブラを自ら脱ぎ捨て、上半身裸で俺の頭を抱え込んでいた。

この瞬間、モーセが受けた天啓のような確証が下った。


少しでも好感を持たれれば、おっぱいはオープンマインドとなる。


その日から、おっぱい有望な女を見つけると親切に振舞うことが習慣になり、俺の指と舌は忙しくなった。そして悟る。


自分は三度の飯よりおっぱいが好きだ。

おっぱいが気になる。

おっぱいをほおばりたい。

舐めてしゃぶって甘噛みして、吸って弾いていじめつくしたい。

お碗おっぱい、スイカおっぱい、ロケットおっぱい、いちじくおっぱい。

大きくて揺れるおっぱいもいいが、小ぶりで上を向いたツンおっぱいもいい。

美人のおっぱいもいいが、できればちょい可愛いレベルのおっぱいが萌える。

おっぱいは大きすぎず小さすぎずがいい。

とにかくおっぱいならいい。おっぱい良ければすべてよし。

おっぱい! おっぱい!! おっぱい!!!



「ねーぇ? なんでそんなにおっぱい好きなのォ~?」

二日前に合コンで知り合った女子大生の琴音ちゃんが、俺の頭上で囁く。彼女のたわわで瑞々しい膨らみは、俺の顔を両側から優しく包んでいた。

「なんでって言われてもなぁ。男は生まれつき好きなんだよ」

俺の髭剃り痕で傷ついてしまいそうな白い柔肌。

労るように舌で優しく撫でるたびに、彼女はくすぐったそうにクスクスと笑う。

「赤ちゃんの頃なら誰だって母乳飲むから好きじゃん? でもなんで男の子ばかりおっぱいに執着するんだろうね」

琴音ちゃんは哲学科にでも通っているのだろうか。

男のおっぱい好きを真面目に考察するなんて、無意味なことなのだが。

「女の子は自給自足できるから、人のおっぱいに関心持たなくなるんじゃね」彼女の疑問に適当に答えてやる。こういうピロートークを疎かにすると女心は離れていく。

「自給自足って」と琴音ちゃんは吹き出し、俺の頭をぐっと押し付けた。

柔らかくて温かくて水滴を弾く若おっぱい。

若さと元気が有り余っててたまらん。

「マリー・アントワネットは自分のおっぱいを誇りに思って、シャンパングラスを自分のおっぱい形にしたんだぜ」

俺はおっぱいの蘊蓄うんちくで、琴音ちゃんの知的好奇心を満たす試みに出る。

「えーなにそれ、痴女ちじょってこと?」

「違うでしょ。集まる貴族たちに自分のおっぱい型で発泡ワインを飲ませて楽しんだんだよ」

「うーん、理解できないわー」

「琴音ちゃんもさ、シャンパングラス作っちゃおう!」

そう言って俺は彼女の谷間にスパークリングワインを注ぐ。

たぷたぷと波打つ白い肉丘と、間でこぼれる透明な甘い雫。


――ぢゅ……ぢぅるるるるッ……ぢゅぽ……っ


わざと下品に音を立てて啜り上げる。

彼女は甘い吐息を漏らす。

俺は彼女の器を嘗め尽くすことに集中した。

「も~やめてよぉ~! ベタベタするぅー」

笑いながら抗議する彼女の皮膚を、俺は犬のように丹念に舐めとる。

「こんなに綺麗で美しい器は、堪能しないと罰あたる」

女と二人っきりの時はこういうことを恥じらわずに言ってしまった方が、好かれることを学習していた。


狙いを定めた女の好感度を得ること、それ自体は難しくない。

異性として好きとかそんなレベルじゃなく『あ、この人いいひとだ』と少しでも警戒心が解かれれば、こちらの思い通りに動いてくれた。

ただし、最後までいこうとすると相手が「今はダメ」と抵抗したり、いいタイミングで邪魔が入るので、本当に『おっぱいだけを堪能するための道具』だと気づいた。

なので、開き直っておっぱいでできるありとあらゆることを試した。憧れのアレやコレ――AVや成人雑誌に出てくるシチュエーション全て。

最後までできない女友達のことを俺的には『セフレ』とは定義しないし、『恋人』でもない。とりあえず『おっぱい仲間』と分類した。

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