オフサイドの謎も含めて
……その後に帝際付属校との練習試合があったわけだけど。
それについては「よくそんな気になれるな」が正直なところ。
でもまぁ、陽子ちゃんがすっかり元気を取り戻し、最前列で声援送っているのを眺めるのも悪くはないか。
ただ菅野は絶不調みたいで、
ピピーー!!
また笛を吹かれている。多分、オフサイドに引っかかったんだな。
外にいる審判が手を挙げてるから。それぐらいは何とかわかるようになった。
「――だから今からグラウンド見て確認しても仕方がないのよ。線審に気付いているのは進歩だとは思うけど」
いきなり心を読むな。
しかも相変わらず上から。
振り返るまでもなく、小澤の所業だ。
私は今グラウンドへ続く階段に腰掛けてるわけだけど、小澤はさらにその上。
物理的にも上から登場というわけだ。そのまま私に憎まれ口を叩く。
「何? どうしたのこんなところでボッチになって。厨二病?」
お前もそうだろ、と言い返しそうになったけど、同時に「同病相何とか」という言葉が浮かんできたので、やめておくことにした。
その代わりに、
「古尾に頭を下げて礼を言ったり、神幸先生の疑惑を晴らすために先生に怒られたりしてたら、今更前には行けなくなっただけだ」
と、ごく真っ当な理由を伝えることにする。
結局、悪党相手にはこういう正攻法が一番効くんだと思うのよね。
……ほら。何も返ってこない。
というわけで、ここからは私が救いの手を差し伸べてげることにした。
「――で、こっちは何とか収まりそうなんだけど、帝際付属の方は大丈夫なのか? 気持ち悪いくらいに協力的だったし」
「ああ、それはね」
私の質問に小澤が飛びついてきた。
まぁ、いいけど。それに帝際付属とどういう話をしたのかは興味がある。
「私、サッカー部の話を書こうと思ったのは、先に
ん?
その小澤の発言を理解するまで、少し時間がかかった。そのせいで思わず振り返ってしまう。
小澤はダークブルーのワンピース姿で、にんまりと私を見下ろしていた。
そしてそのまま、私が腰を下ろしている段まで、トトト、と降りてくる。
このまま並んで座られることに恐怖したが、そこはやっぱり小澤だ。
腰を下ろすことなく、そのまま話を続ける。
……こういう時は、気が合う――と言っていいのかな?
「あの凄く目立ってた新庄君がいたでしょ? あの新庄君に興味があってね。だってなかなか見ないでしょ、あんな俺様」
その点は同意だけど、多分この場合の「興味がある」は別の意味があるんだろう。
私は何となく察してしまった。
恐らく、小澤のBL的な好みは付属の俺様エースなんだって。
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