菅野の憂鬱
で、その日曜日――。
……って、やりたいんだけど、ここでうちのサッカー部の様子を伝えないといけない。
やっておかないと私が面倒だから。
とは言っても、私は相変わらずサッカー部の事はわからないので、ほとんど全部は小澤が後から説明したものになるけど。
まずサッカー部では禁じ手の「西村さんと付き合っているのか?」みたいな質問を、増本が菅野に投げかけたと。
そのきっかけになったのが古尾の動きと神幸先生の挙動不審さがあるわけだから、それだけで私は十分役目を果たしていたと言っても過言ではないはずだ。
とにかくそんなわけで、実際に菅野に投げかけた質問は「西村さんと別れたのか?」という感じの、さらにダイレクトな質問になったんじゃないかな?
まぁ、それぐらいしないと菅野には効果が無いかもしれない。私の印象だけの話だけど。
で、菅野はまったくこちらの想定通りの返答をしたらしい。
――「自分と陽子は関係ない」
と。
その瞬間、罠にかかった、とサッカー部の面々の目がギランと光った光景が想像できる。江上なら、うまく映像化してくれる監督なりアニメーターなりの名前を並べ始めるに違いない。
で、そのあとすぐに次のターンに移ったのか、それともしばらくたってからなのかは知らないけど、増本と箭内で陽子ちゃんの取り合いを始めたらしい。
そういう計画だったからね。
そんな状態になったらサッカー部が二派に別れてもおかしくないと思ったんだけど、その辺りはわからない。だって、そこからは菅野の反応しか興味が無かったから。
そしてその反応もまた、私たちの想定内であったらしい。
かなり動揺したと。
練習にも身が入らないと。逆に練習すればするほどおかしくなっていったと。
そういった反応については、
「多分、サッカー部だけでこれやったら菅野君もどこかで見切ったと思うわ。ただそれ以外でも西村さんがモテ始めたことで、どうにも否定できなくなったんだと思う。それに、菅野君の西村さんの評価が高いこともあったからね」
と、小澤がしたり顔で解説した。
確かに陽子ちゃんなら、いきなりモテ始めても不思議は無い、と私も思う。
それに、例の「幼馴染みはオフサイド」発言で、モテ始めるきっかけも菅野は自分で作っている。
それが菅野をさらに追い詰めたのだろう。
練習試合が決定して、それに向けての具体的な練習をしようと思っても、それに身が入らない。
そしてそれをフォローしてくれる陽子ちゃんはそばにいない。
だいたい、こんな状態でサッカー部は帝際付属を迎えたらしい。
……ええっと。多分負けるよね、これ。
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