騒動師を巻き込め

 「え? 先生? ええと……美術の先生だっけ?」


 小澤はどうやら書道選択らしい。

 「先生」という言葉に驚いただけで、神幸先生についてはよくわからないようだ。


 そこでざっと陽子ちゃんと神幸先生の関わり方について説明する。

 割と真剣に聞く小澤。やっぱり「先生」という立場は利用できると考えているのだろう。


 私がこれを思いついたのは神幸先生の声が杉田智和さんに似ているから。

 そういう立場の杉田さんの声で思い出すのは「おねがい*ティーチャー」の先生。あの先生、最終的に教え子の女子高生とくっつから。


 その他にも「こどものじかん」で、かなりヤバめロリコンの役をやっていたような気がする。いまいち覚えてはいないんだけど。


 まぁ、いつものように「先に声がある」から発想が始まっていることは否定しない。

 小澤が私を疑いの眼差しで見つめてくるのは、そんな私の発想の元を気付いた――わけでは無いようだ。


「確かに年上という部分はかなり効果があると思うけど……リスキー過ぎない?」

「大丈夫だと思う。先生だって本気にはならないだろうし」


 アニメはアニメだ。


「そうじゃなくて、教職がピンチだって言ってるのよ。生徒と噂になるだけでダメージは大きい。小説では時々出てくるけどさぁ」


 その辺りは漫画と変わらないのか。

 だけど、そういう指摘が来るのもわかっていた。私はそこで二の矢を放つ。


「ああ。それはわかってる。第一、どう説得しても神幸先生が協力してくれるとは思えないし」

「それじゃあ、最初から無理な話じゃない」

「神幸先生に直接頼もうとするから、無理な話になるんだ」

「……話が見えない」


 それはそうだと思う。

 いや、これは小澤が学校の事を知らなすぎる疑いがあるな。とにかくもったいつけても仕方ない。私は答えを告げる事にした。


「遊野先生を巻き込むのよ。どうも神幸先生の弱みか何かを握ってるみたいなぐらいの力関係が見えるし、遊野先生は困ったことだけど、こういう悪巧みが好きなのよね」


 遊野先生は声が死亡フラグといわれる桑島さんに声が似てるんだけど、確かあの声で傍若無人のキャラの覚えがあるのよね。

 未だに思い出せないんだけど……。


「……他の先生も巻き込むなら、やってみてもいいか。ただし私は手伝えないわよ」

「それはわかってる。私が持ちかけてみる」


 小澤はそこまで二人とは親しくないみたいだから、これは仕方ない。ただ何となく上手くいきそうな予感がするのよね。

 けれど、これ以上に候補が思い浮かばない。もう十分という気もするけど……。


「でもあなたがそこまでやるのなら……私ももう一つ心当たりがあるわ」


 そこで小澤から新たな提案。

 私は反射的に、


「またサッカー部?」


 と返したが、それに対して小澤はにんまりとほほ笑むだけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る