サッカーバカ
私はどうにもその辺りでつまずいてしまった。
幼馴染みイコール一対一、までは合っている気がする。だけど、そこからはどう想像を巡らせても、うまく当てはまらない。
その辺りをシャーペンを動かしながら小澤に伝えてみると、むむむ、なんて小澤の呻き声が聞こえてきた。
そして、こんなことを言い出す。
「……ほとんど同じ場所で引っかかってるわね」
おい、小澤。
それで何で、呻き声を出す必要があるんだ?
「で、結論は?」
小澤に期待するのはやめて、私はそのまま話を先に進める。
「……要するに菅野君の言いたかった事は、ずっと一対一の状態で、他に選択肢が無いような状況でいるのはズルだと。そう言いたいんじゃないかと思うのよね」
「それは私も思い付いたけど――」
私はシャーペンを止めて、顔を上げる。
そして、難しい顔をしている小澤の表情を確認した。
「――それって、オフサイドって言う必要ある? 正確に言うとオフサイドが例え話になっているのかどうか……菅野は本職なんだし、何か他の意味があるんじゃないのかって」
思うのよね。
ただそれも外れている気がする。やっぱりどうにもわからない。
すると小澤が、
「ああ、本職。本職ね」
何の気なしに発した私の言葉に反応した。
でも、それがどうしたんだろう?
「調べた限りにおいては、菅野君ってずっとサッカーやってたみたいなのよね」
続けてそんなことを言い出した。
それについては、先を促すしかない。
「だから、他の言葉では上手く説明できないわけよ。私たちから責められて、何とか説明しようとしたけど、それが上手くいかない。でもサッカーならわかる。本職だしね。で、『オフサイド』という、かなり言いたいことに近い言葉が出てきた」
「……それで、思いついた瞬間に、それを口にした?」
「そう。だって、自分たちの関係性はオフサイドだ、なんて普段から考えてる方が不自然だしね」
確かに。それに気持ち悪い。
けれどそれならそれで、別の疑いが出てくる。
うちの学校のヒーロー。関係者の期待も大きい将来有望なのであろう菅野英治は――。
「サッカーバカ?」
「大成する人ってそういうものかもしれないけど、そういうことみたいね」
めでたく――めでたくないかもしれないが――私と小澤の結論は一致した。
つまり「一対一はずるい」。ただそれだけの意味しかないと考えるのが無難であろうということだ。
菅野としては他に伝えたいことがあったかもしれないが、それは受け止められない。
そして私が受け止めなくてはいけないのは――。
「それじゃ、菅野も陽子ちゃんを好きって事に……なるよね?」
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