寺川高校包囲網
さて、そこから二日後――。
小澤から連絡があった。
いつまでずる休みすればいいのか? おばあちゃんを説得するにしても、いったいどうすればいいのか? などという問題があったわけだけど、これでとにかく状況が変わる……はずだ。
小澤が何かして段取りを整えたとして、小澤の言うように学校中がおかしな状態というなら、二日で何とかしたのだからそれなりの苦労があったのだろう。
……いや、そういう状態だからこそ、これだけ早く整えることが出来たのかも知れない。
とにかく私はもう放課後という時刻になってから指定の場所へと向かった。
指定されたように私服で。……これに何の意味があるのだろう? まぁ、それはなんでもいいか。
指定された場所は、名古屋発祥のあのメニューの量が尋常では無いことで有名な喫茶店。
私の家の方向とは真逆だから気付かなかったけど、学校からはそんなに離れてはいないんだな。
スマホで場所を確認してみると、地図では住宅街の真ん中に突然現れたような印象だった。けれど近くにスーパーとかレンタルDVDの店があって、それなりに便利そうな一角だった。
それなのに一瞬迷いそうになったのは、問題の喫茶店がレンタルショップの大きな駐車場の一角にある――ように見える――からだろう。
何だかおかしな場所にあるんだな。店の外観は、それっぽいのですぐに気付くことが出来たけど。
さて、小澤は先に着いていると連絡があったわけだが――。
私が店内に入り込むと、すぐに視線を感じる。それも複数だ。
「ん?」
思わず、声が出てしまう。
それを合図にしたかのように、まとわりつくような視線も消えてしまった。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
と私がどういうことかと首を捻っていると、店員さんが声を掛けてくれる。
しまった。こういう時どうすればいいんだっけ? ええと、とにかく――。
「いや、先にと……友達が――」
「中島さん、こっち」
私が店員さんに相談しようとしていたら、小澤の声が聞こえた。
当然、その方向に目を向けると――。
私はびっくりしてその場で固まってしまった。声を出さなかっただけでも褒めて欲しいところだけど、出さなかった、ではなくて、出せなかった、というのが正しい。
何しろ店内の席という席に見慣れた制服が陣取っているのだから。
菅野と私たちの話し合いを物見高い連中が見物しに来たに違いない。
私はそのまま引き返しそうになる膝に活を入れて、何とか一歩踏み出した。
多分、っていうか間違いなく、この状況は小澤が作り出したもの。それっぽい事言ってたし。
それならここで引き返すのは負けだ。
それに何より、陽子ちゃんのために!
……ところで間違いなく菅野は来てるんだろうな?
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