拷問に近い
けれど悩む間もくれない小澤の追求によって、私は吐いてしまった。
一気にでは無くて、徐々に、なんてことは言い訳にもならないだろう。
……いや、そもそも言い訳が必要だったのか。
ただ「東山奈央さんは負けヒロインを演じることが多くて、その声を聞くとどうしても不吉さを感じてしまう」みたいな理由を吐いたことで少しばかり話が進展した。
私の
「……は~~、なるほどね。あなたが妙に後ろ向きだったのは、西山さんの声が、その東山さんの声に似ているからだと」
「…………はい」
「わかっているだろうけど、それ無茶苦茶だからね?」
「……はい」
「でもこれで、最初にあなたと話した時のおかしさについては説明できそうな気がするわ」
やっぱり、おかしかったか。
いや、あの時は我ながらおかしかったとは思うけど。
そこで小澤は少し間をおいてジッと私を見つめた。
「……もしかして、西山さん以外にも声優に声が似ている人がいるの? いるのね?」
「まぁ……いますね」
「私は?」
「いるけど、こればっかりは言わない。オタクの間でのお約束がわかってないと、説明しようとするだけで誹謗中傷になるかもしれないから」
例えば戸松さんに似ているは言えるけれど、悠木さんに聞こえるというのは「悠木さんがBL好き」という前提を理解してくれないと、説明が難しい。
いや、この半分拷問みたいな状況を作り上げることが出来る時点で、声質についてはBL関係なく悠木さんを思い出すんだけど。
どちらにしても、うかうかと正直に話すわけにはいかないだろう。
そんな私の決意が通じたのか、小澤は、はんっ! と鼻息を荒くして、とりあえずは矛を収めてくれたらしい。
けれどそれも一瞬の事。
「――そういう気の使い方ができるなら、それで勝手に絶望して、私を悪者にするのは納得いかない」
と、もっともなことを言い出した。
私としても頷くしかない。
「そうね。こっちの思い込みで悪者にしてしまった事は間違いだった。それは認める。そういうこと関係無しで、あんたは十分悪者なんだから」
「言ってくれるわ……でも、私が西村さんに悪いことしたわけはない事も納得したんでしょ?」
「まぁ、それは」
「じゃあ、その悪評は振り払いたいわけよ。まだまだ取材したいことがあるのに、これじゃあやりにくくてやりにくくて」
そこまで聞いて私は首を捻った。
「……学校ではもう菅野とあんたはくっついたみたいな噂なんじゃないの? 喜んでいる連中もいそうだし」
「それがサッカー部になると、ちょっと様子が違うのよ」
それは確かに弱音というものだったのだろう。
悠木さんから戸松さんの声に変化しそうになっている。
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