自白即ち結論
そんな小澤の説明は――腑に落ちてしまった。
そう説明されると、あの時の小澤の様子については説明できるし、納得も出来る。
結局、初体面の緊張があり、こういう本性を隠さなければならないってことなら、あの微妙な空気になるかもしれないって。
ただそうなると――。
「――菅野がおかしい?」
思わず私がそう口に出してしまうと、小澤は苦笑を浮かべながら曖昧な笑みを浮かべた。
「まだ、その辺りは検証が住んでないのよ。というか検証する必要があるのかしら。エピソードだけ拾って、あとはフィクションでも問題ないわけだし」
「あくまで、うちのサッカー部はモデルに過ぎないってことか。確かそんな話――」
そこで私はハタと我に返って、そのまま小澤に確認してみる。
「つまり、あんたにとっては菅野は全く魅力的ではないってこと? タイプでは無いって言うか」
「なにが“つまり”なのかわかんない。でもそうね……ああ、どっちの意味で?」
――どっちの意味?
空白が襲ってくる。
だけど、その空白は一瞬で埋め尽くされた。
それに押し出されるようにして私は――。
「小澤……あんた腐ってるね?」
「ええ、そうよ」
一瞬にして自白された。
そう言えば、いつからこいつはこんな悠木さんみたいな声になっていたのか。
それも昔の結城さんが持っていた、独特のアクセントまで再現している。
「あにゃまる探偵キルミンずぅ」のリコや「氷菓」のゲストキャラを演じている時ならはっきりと感じられる、あのアクセントだ。
そう言えば、私を追い込んだあの悪辣さはまさに「幼女戦記」――じゃなくて!
「――『凄剣』読んだわ」
「わぁ、ありがとう」
お嬢様のように、胸の前で小さく手を合わせるんじゃない。
私に猫被っても仕方ないだろうに……いや、猫被るのが習性になってるんだなこれは。
そして小澤は例の笑みを浮かべて、
「それならわかるでしょ? 私はそういうものを書いてるの。そちらの言葉で言うところの腐ってるのは間違いないわ」
「それは、うちのサッカー部にも……」
「そういう雰囲気を作るだけだから。気付かない人は気づかないものよ」
なんて奴だ、とも思うけど、小説ってそういうものかもしれない。
それに雰囲気だけを作り出すって事は……要は加奈の言う上級者ということにもなるのか。
――って、ああ、私の脳みそは本当に落ち着きがない!
「つまり腐女子的には菅野は何かしら魅力があるってことだよね? で、そっちの意味じゃなくて、お付き合いする相手としてはどうなのって……」
「あ、それは全然。全くタイプじゃない。腐ってる側としても、まぁ、タイプでは無いのかも」
そう言って小澤は笑い出した。
「アホガール」のよしこのように高らかに。
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