煽られ煽り
あの時、意味深に菅野と見つめあっていたのは何故なのか?
私のこの質問の意味が小澤には分らなかったらしい。
そこで、その周囲の状況を思い出しながら伝えてゆくと――。
「え? 何で? どうして待ち合わせ時間がわかるの? 怖っ! 怖怖怖っ!」
と、正座のままで飛び跳ねるようにしながら、小澤は大げさに身をよじる。
こいつ……間違いなく本性はこっちだな。
それなら私も遠慮はいらない。
「あのねぇ。あの時、江上も森もいるって伝えたでしょ? で、私たちがアニメファンってことももうわかってるんでしょ?」
「それはまぁ……」
「その中でも森は、画面の中の小さな違いとか、ちょっとした仕草に意味を持たせて考えるのが好きなのよ」
落ち着け私……まだ、加奈が腐っている情報を出すべきタイミングじゃない。
まだ早い。
そうやって、心を落ち着けながら私は説明を続ける。
「だから観察眼が尋常じゃないのよ。三次元世界でもね。時計を確認する様子とか、もうすぐ半だとか、それだけ情報があれば簡単に察するのよ。だから全然怖くない。怖いと感じたのなら、あんたが間抜けなだけ」
説明というか、徹底的に煽ったやって結果、今度こそ小澤は黙り込んだ。
それは間違いなくチャンスだったので、
「待ち合わせ時間も大体わかるものなの。で、その時にあんたは菅野と間違いなく見つめあってたの」
「…………ちょっと……考えてみる」
考える、じゃなくて、思い出す、だろ?
とは思うけど、それはどっちでもいいから、見逃すことにした。
いや、ここまで来ると流石に私も小澤と菅野が示しあって、陽子ちゃんを排除しようとしていたとは考えてないよ。
ただそれでも、あの妙な雰囲気は……。
「……あ! あ~あ~、あれか。待ち合わせの時間でしょ? それで思い出した」
私が改めて考えこんでいると、小澤はついに思いだすことに成功したようだ。
そして首を傾げながら、
「……あれは何もおかしなところなかったと思うんだけど。森さんは、わからなかったのかしら?」
……私がいたたまれなくなって逃げだしたから、加奈の考えは聞くことが出来なかった。
――なんてことを正直に小澤に教えるつもりはないから、小さく頷いて先を促した。
小澤も、せっかく思い出せたわけで、むしろ嬉し気にしゃべり始める。
そして――。
「思い出してみれば、簡単な話よ。待ち合わせ時間が近付いてきてるのに西村さんは来ない。それなのに、この男は何をぼーっとしてるんだ? 幼馴染みじゃないのか? 連絡とろうとはしないのか? って事を考えていたわ。その時、睨みつけそうになって、必死になってこらえてたと思う。そこははっきりしない」
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