引き篭もる事には自信がある
それから二日経って、今は火曜日の夕方――。
そろそろおばあちゃん相手に仮病を使うのも限界だろう。
熱は出てないし、咳き込んだりはしてないし、ただただ頭が痛い、体が重い、とかの私の訴えがあるだけ。いくらでも嘘が付くことが可能な訴えだ。
そこまでして学校に行きたくない。
だから察して欲しい――なんてのはおばあちゃんには通用しないだろう。むしろ二日仮病に付き合ってくれただけ、優しくしてくれているのかもしれない。
私はベッドの上で寝転がりながら、はぁ、とため息をついた。
江上と加奈には適当な言い訳を伝えてあるけど、きっとそれも信じてはくれていないだろう。
それでも、しばらく放っておこう、といういつもの距離感で放置してくれているのだ。
ありがたい。
陽子ちゃんからも連絡貰ってる。
病欠となっているので、ちゃんとしたお見舞いの連絡だ。
当然それには嘘ばっかりの返信を送り返しているんだけど、実はあんまり罪悪感が無い。だって休んでいる理由は、ただならぬ雰囲気だった小澤さんと菅野を見てしまったから――なんて伝えるよりは、嘘の方がずっと良いと思うから。
――あの時。
私はやたらに緊張感がある二人の様子を見て想像してしまったのだ。
もしかしたら二人は示しあって待ち合わせ場所を変更して、陽子ちゃんにそれを伝えなかったんじゃないかって。
そんな想像がきっかけとなって、小澤さんとサッカー部の初顔合わせ、とか、フットサル会場で取材とか、そんなこともただの想像でしかなくて。
それに比べて二人に漂う緊張感は確かに感じられて。
それならきっと初顔合わせっていうのは間違っていて、二人はすでにどこかで会っていて。
学校では人目があるから、学校の外で会うことにして。サッカー部の公認になって。
とにかくそんな想像が頭を埋め尽くして。
やっぱり小澤さんと菅野が会う手助けをしてしまった後悔は正しくて。
そんな後悔に陽子ちゃんを巻き込んでしまって……。
間違え続けたのは理解できた。
だからこれ以上間違わないために、人に会いたくなくなって。
でも、いつまでもそんなわけにはいかないこともわかっていて。
むしろ今は誰かに命令された方が楽なのかもしれない。
自分で選び続けた結果が、これだもの。きっと私はずっと……。
「薫! お友達が見えたわよ! 身体は悪くないんだから、ちゃんと出てきなさい」
……うう。
それでもおばあちゃんからのこの命令は骨身にこたえるなぁ。京田尚子さんに似た声は背筋が伸びてしまう。……陽子ちゃんが来てくれたんだろうか?
そんなことを考えながら身体を起こすと、おばあちゃんは続いて、こんなことを伝えてくる。
「小澤さんですって! 部屋にあがってもらいますからね」
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