結局、二進法
「仲良く……」
「……なりたくない?」
江上と加奈が台詞を分割しながら繰り返す。
そしてお互いにそっぽを向いて、ムムム、なんて唸る。
何だか「黙秘権」という権利を思い出したけど、それが明確に主張されていない事を利用して、私はもう一度尋ねてみることにした。
「ねせ、小澤さんは一体どんな話を――」
「第一印象が戸松さんなのに、それが悠木さんの声に聞こえるなんてことがあるだろうか?」
私からの再度の質問を遮るように、というか遮る気満々で、江上がそんなことを言い出した。反語表現で。
そんな事尋ねられたら、私のやるべきことは決まっている。
「悠木さんも、わりかし何でもできる人だけど戸松さんは、さらに上を行くかも。江上なら覚えてるでしょ? 『GA』を」
「GA」とは「GA 芸術科アートデザインクラス」の事だ。
このアニメで戸松さんは主役を演じられたんだけど、その声が本当に能登麻美子さんに似ていて。
当時のアニメファンは「ノトマツ」(能登+戸松の意)なんて呼んだものらしい。
ちなみに加奈はこのアニメは知らないだろう。登場人物概ね女の子の日常系でイケメン出てこないし。面白いんだけどな。
――それはともかく。
悠木さんと言えば、やはりBL趣味を持っていることで有名だと思う。そういう趣味を獲得するに至ったのは「ベン・トー」ってアニメで、そういう趣味の女の子の役を演じることにな太、役作りの一環でBLに目覚めたと言われている。
その他にも「Free!」というアニメについても――は!
私は思わず加奈を見つめてしまった。
そう。BL上級者向きでは無いと言われてしまった「Free!」だ。
悠木さんが「Free!」好きであるなら、それはBL上級者では無く、では悠木さんと似た声になれる(かもしれない)小澤さんは果たして上級者であるのか?
……何だか哲学的な話になってきたけど、つまるところはだ。
小澤さんが上級者であるのなら、恐らく菅野は恋愛対象にはしないのではないのではないのかという
翻って、そこまででは無いのなら取材にかこつけて、菅野との接触を図る可能性がある。すぐにでは無くとも将来的には。
きっと、そういう
自分でもわかるほどに、全く破綻しているんだけど、オタク同士の話し合いの結論は何時だって破綻しているものだ。
引いては二人とも、
――「その判断を人に委ねるな」
というのが本音なのだろう。こちらの理屈は全く破綻していないわけで。
判断材料が増え、それを活用して問題をここまですっきりすることが出来た。
だがそれによって、私はますます悩むことになってしまう。なまじ二者択一に整理してしまったことで逃げ場を失ったしまったというか。
小澤さんを陽子ちゃんにに引き合わせるべきかどうか――。
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