何を選べばいいのか?
本当にその確認は時間稼ぎにしかならなくて、実際小澤さんも誰かから特別に聞き出したというわけでは無くて、
――西村さんと仲が良いのは誰?
みたいなざっくりとした質問を投げかけた結果だったみたいだ。
それで私の名前が出てくるのは光栄にも感じたけど――陽子ちゃんの顔は広いわけだし――最近は陽子ちゃんとひそひそ話なんかしてるから、そんな風に見えただけなんだろう。
「あの、もしかして、あんまり仲良くないとか? それならごめんね。先に確認しておけば良かった」
「い。いや大丈夫。ちゃんと仲は良いと思う」
小澤さんが気の毒になって、反射的にそう答えてしまったけど、こういうの自分で言うのって恥ずかしいものがある。
そして、そう言ってしまった事で、私はますます追い詰められてしまうことになった。
小澤さんの「お願い」を聞くべきかどうか、という問題。
今のところ、それを拒否する理由としては、私が勝手に二人を対立させているだけで……うん?
そもそも何故、小澤さんはこんなに手間がかかる方法で陽子ちゃんに会おうとしているのか。
普通に陽子ちゃんに話しかければ済む話だと思う。
一度、それに気づいてしまったら、どうしてもそこが気になるのは仕方がない。
それに問題を先送りにもできるし、私は思い切って確認してみた。
「あの……私も自分で面倒くさいとは思うんだけど、普通に陽子ちゃんに話しかければ済む話なんじゃ? って今更気付いたんだけど、聞いても良い?」
そうやって私が恐る恐る確認してみると、小澤さんのピンと伸びた背筋が、いきなりくたっとなった。
そのまま私に顔を近づけるようにしながら、こちらもひそひそと私に話しかけてきた。
「あの……ね? もしかして私、西村さんに嫌われてるのかな? 会いに行こうとしてもどうしてもつかまらないし、避けられてる?」
ああ、そんなことになっていたのか。
それに加えて、仲が良い私がこれだけもたついてるんだもの。
小澤さんも、何となく察してしまったんじゃないだろうか?
陽子ちゃんは、
そうなると私が「お断りだ」と答えても、それはそれで納得してくれるような気がする。というか、もうそういう流れだよね。
――でも、
と、私は同時に思う。
陽子ちゃんは、確かに落ち着きが無いけれど、それは色んな人と知り合うきっかけで、それで私は救われたところがあるし、こんな風に相手が会いたがっているのに、それを拒否するのは、果たして陽子ちゃんらしいと言えるのか?
もちろん、私には陽子ちゃん「らしさ」を決めることは出来ないし、その権利もないんんだけど……。
……どうしよう?
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