小澤が来た!
「それって、古尾みたいな反応だって事か? サッカー部というか体育会系とは縁が無いんで本当にわからないんだけど」
そんなもの私だって無い。
江上の言い訳半分の問いかけに言い返しそうになったけど、それはあまりにも無駄なことはわかっている。
むしろ私があまり関係ないだろうとわかっていながら説明してしまった、古尾の反応が無駄にならなかったことを喜ぶべきなんだろうな。
それで陽子ちゃんから聞かされた菅野の反応というのは――。
「古尾の反応は確かに似てるのかも。陽子ちゃんがこう……大人しくなったわけでしょ? そうすると、菅野はそれを気にしないで、さらに
とにかくそんな感じらしい。
ちらっと見かける雰囲気は確かにそんな感じだ。今までは陽子ちゃんが熱心に話しかけていて――つきまとっていた、とは言いたくない――それが大人しくなったわけだから……何というか菅野の動きは素早くなっていた。
「ということは、菅野は今までの西村に迷惑してたって事になるわね」
私が何とか避けていた言葉を、加奈はあっさりと口にした。根谷さんによく似たキップの良い発音で。
確かに簡単に言ってしまうとそういう事になるのよね。
今までよりも素早い、ってことは元気になったって事だから、それはつまり今まで迷惑に感じていたって事なんだから。
そして菅野は古尾みたいに、それを寂しくは思ってないみたいなのよね。
改めて考えると菅野の反応が一番悪いのかも。
つまり私たちの提案は完全に裏目を引いたという事に……。
けれどそうやって私が落ち込んでいると、江上がこんなことを言い出した。
やたらに渋い声で。
「だけど今は、それが直ってるってことってわけだよな。少なくとも直りつつある。それなら、これから菅野の反応も変わってくるんじゃないか? まだ大人しくなってから一週間も経ってない」
それは……そうかも。
他が陽子ちゃんの変化に極端に反応したからそういうものだと思ってたけど、確かにもう少し待ってみても良いはず。
加奈も、江上のその指摘には頷くところがあったみたいだ。
それなのに何だか顎を上げながら、こんなことを尋ねてくる。
「――そもそもサッカー部の反応はどうなのよ? 大人しくなった陽子を見て何か思うところはないの? サッカー部は」
「俺に言われても知らんよ。その辺りはどうなんだ?」
なぜか自分が責められていると思ったらしい江上まで私に尋ねてくるけど、その辺りはわからないのよね。
陽子ちゃんからサッカー部の説明はないわけで。そうすると私にはサッカー部の反応を知る方法は全くない。
「……つまり体育会系は鈍いという可能性が残るわけだ。もう少し待ってみるか」
「そうね」
「わかった」
と見事に先送りになってしまったこの問題、というか話のタネ。
そもそも私たちに何の責任も無いんだけど、それでもかなり無責任という感触は拭えない。
――だが、ここで新たな局面を迎えることになる。
その翌日。
問題の小澤さゆりが私を訪ねてきたのだから。
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