その後どうですか?

 相談会から三日後の放課後。

 私たちは、飽きもせず江上の教室に集まってダベっていた。だって毎日アニメが放映されているから仕方がない。


 私三人は、大きなくくりではアニメファンではあるんだけど、細かく言うと「担当」が違う。

 私は改めて言うまでもないけど声優さん中心にアニメを楽しんでいた。


 江上に言わせれば、その中でもかなり変わっているらしいけど、確かに純粋な声優さんのファンというわけでは無いだろうことは自覚している。


 その江上は、とにかくアニメの監督とか、作画とか、そういう部分が好き。というかこだわっている。

 語らせたらどこまでも語ることが出来るし、火が付いたら一番厄介なのは江上だとは思うけど、それは江上自身もまた自覚しているのだろう。普段は割と控えめだ。


 声が似ているトネケンのキャラで例えると「バクマン。」の服部編集が一番近い感じだろうか。

 私と違って苦手な種類のアニメもほぼ無いようで、頼りになる、というのは少し違うか?


 その反対に加奈はかなり限定的だ。

 何よりまず、美形なキャラがいないとそのアニメは見ない。ああ、美形と言ってもいわゆるイケメンね。


 江上に言わせると「イケメンが出てこないアニメはまずない」とのことなので、見てるには見てるんだろうけど、加奈の見方が偏ってしまう事は仕方のないところだろう。

 偏っている私が言うのもおかしな話なんだけど。


 昨日は少年漫画原作で、江上が興奮してまくし立てるような凄い作画のアニメが放映されていて、それの中心人物が加奈好みのイケメンという事で実に盛り上がった。


 私はそこまで盛り上がらなかったわけだけど、それはそのアニメを見てなかったとか、面白くなかった、というわけでは無くて――


「――で、どうなの? 西村さんの様子は?」


 いきなり加奈がこんな風に私に尋ねてきたのは、私のいまいちな反応にあたりをつけられたせいなのだろう。

 そう。ずっと気がかりではあるのだ。


 何しろ、どういうわけか私にはその後どんな具合か確認する役割が与えられてしまったわけで。

 その理由を探せば、元々私だけが指名されていたこと。そして知ってしまった以上、結局私が陽子ちゃんの事を気にするだろうと見抜かれていたことだろう。


 そのため大義名分をくれた――って言うのは大げさな気もするけど、まぁ、そんな感じだ。


「ああ、とにかくいつもの感じじゃなかったな。まず走り回ってないし」


 そこに江上からわかりやすい変化について目撃情報が寄せれれた。

 確かにそれはそうなんだけど……。


 実のところ、あんまり成果はない感じなのよね。


 私は二人に説明を始めた。

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