何に向けてのダメ出しなのか
恐らくだけど、加奈の指示は厳しいけれど、それはそれで陽子ちゃんに対しては真っ直ぐだったと思うのよね。
なによりまず、学校内を走り回るのは本当に危ないし。
小澤さんも、まず走り回ったりはしないと思う。
で。
積極的に話しかけるのは、我慢してみよう、と私が提案してみた。
恐らく、陽子ちゃんは菅野に対して、やたらに話しかけてると思うのよね。
私の提案に対して、
「え? ダメなの?」
なんて陽子ちゃんから返ってきたんだから、私の勝手な想像は当たっていたと思ううんだけど……。
「うん、まぁ、ダメって言うかとりあえず小澤さんの真似をしてみようって話だから。それで菅野の反応が変わるなら、それはそれでありじゃない?」
「うん……薫ちゃんがそう言うなら……」
明らかに納得いってないようだけど、他の二人も頷いているのを見て、私の提案は必要なことだと思い直してくれたようだ。
肝心の私がいまいち納得してないんだけど。
というのも、私のダメ出しは東山キャラに対するダメ出しの要素が含まれてる気がするのよね。
何だか東山さんのキャラが「負け」を予感させる時って、積極的過ぎる時だと思う。
多分これは、江上も加奈も同じで、陽子ちゃんの東山ボイスがおかしな影響を与えているというか、混ざってしまっているんじゃないかと思えて仕方がない。
「あと……そうだな。一歩引いてみることを意識するとか」
ほら、江上がおかしなことを言い出した。
「何? 時代錯誤な話なの? 男を立てろ見たいな」
流石に加奈がすかさずツッコむわけだけど、江上は慌ててフォローを入れた。
「意識の上でだって。実際にそうなれって言うんじゃなくて、何と言うかこう視野を広くして欲しいって言うか……」
うん、だからね。
それって東山キャラに対するダメ出しと区別出来てる?
私が冷や汗を垂らしながら、様子を窺っていると陽子ちゃんは一番深刻そうにこう呟いた、
「それは……英治君にも同じようなこと言われた」
菅野もまた東山ボイスに影響を受けていたのか。――じゃなくて、実際陽子ちゃんへのアドバイスとしては的確にも思えるから、厄介なのよね。視野を広くって言うのは。
それで、やっぱり元に戻るけどオタクに持ち掛ける相談じゃないと思う。
東山ボイス云々だけじゃなくて、アドバイス全部が「
でもまぁ、陽子ちゃんの相談に親身に取り組んだことは間違いない。
陽子ちゃんも首をひねりながら、とりあえずは納得してくれたみたいだし。
――とにかくこうして、相談会は終わった。
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