第2話
防波堤の男子を、校内で見かけた。先生に呼び止められ、殴られているようだった。
先生たちは、不良相手だと手加減しない。
それを見ていると、あの人が私を殴ったり蹴ったりする夜を思い出してしまう。
あの人の大きな手が私の髪を掴む。
それを思い出すと、息のしかたがわからなくなる。手足が震えてきて、心臓が痛くなって、身体に力が入りにくくなる。倒れそうになるのをこらえながら、ゆっくりその場から離れる。
野次馬の生徒たちは、異物を見るような目で二人を見ていた。
金髪の不良と、すぐに暴力を振るう先生も、どちらとも関わりたくないんだろう。
階段をゆっくりあがり、踊り場で座り込む。
こんな風になる自分が弱くて嫌いだ。強くなりたい。変わりたい。
女子寮のある高校に行けたら、あの人から離れられる。
私立の高校は無理かもしれない。ウチの経済状況を考えたら、寮生活も現実的ではない。
強くなるには、自分の武器を作らなきゃ……
今の私には勉強しかない。
当たり障りなく友達と会話しても、相手は私を友達と思っていない。
なんとなくわかっているけど、そう思わなきゃ学校に来る意味を見失いそうになるから。だから、思い込んでいる。
そんな息苦しい毎日が過ぎて、暑い夏がやってきた。
夏休み。
家にいたくなくて、図書館で夏休みの宿題をしていた。
その帰り道、私は遠回りをして防波堤に向かっていた。あの子――金髪の男子――に会える気がしたから。
彼は、防波堤にもたれかかってたばこを吸っていた。
白いTシャツとジーンズ。きらきらしている金髪。不機嫌そうな表情。
触ったらビリビリしそうな雰囲気から、苛ついているのが伝わる。
遠目から見ていたのを、彼は気づいたらしい。私は吸い込まれるように、彼に近づいていた。
「髪の毛、きらきらして、きれいだね」
太陽の光で脱色で傷んだ髪が光っていたから。それがきれいに見えたから、無意識につぶやいていた。
彼は、「なんだそれ。傷んでるだけだろ」と笑った。
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