第5話 舞踏会③

「共にするパートナーがいる、か~。

ウィルもかっこよくなったね~」



「・・・やめてくれ!気づかなかったのは悪かった!だからもうやめろ!」



私は少し意地悪げに言ってやると、

ウィルは手で顔を覆いながら返答した。



声が震えている。



それに耳までしっかり赤くなっているから、

どんな表情をしているかなどバレバレだ。



見知らぬ女性にやさしくしたと思っていたら、

なんとそれが知り合いだったのだ。



うん。とっても恥ずかしい。



特に普段の彼とは違い、舞踏会用に

クールに取り付くろった姿を見るのは、

とてもおもしろかった。



でも、それ以上に、



「うれしかったよ。私の事、見捨てないでくれで」



「当たり前だろ!俺の方から誘ったんだから!」



ウィルは私の言葉に

少し大きな声で返した。



照れ隠しだということはすぐにわかった。

だんだん口調も崩れてきてる。



素だ。素が出てきてるよ。



クスクスと少し笑う。

そしてもうからかうのは終わりにする。



「ごめんごめん。からかいすぎたね。

でも、私にもああいう態度で接してくれてもいいんだよ?」



「嫌だよ。誰がもう君なんかにするもんか。

お互い素を知ってるんだ。やめだ、やめ!」



ウィルも大分落ち着いてきたようで、

顔を手で隠すのをやめた。



そうして、真面目な顔になって、

こちらを見つめてきた。



「2年ぶりだね。元気だった?」



「ああ。手紙に書いてある通りさ。

で、そっちは?」



「私も」



お互いに短い言葉を交わして、

そして笑う。



ウィルは本当に変わっていないようだ。

それが、うれしくて、とても安心する。



「・・・でも、少し痩せたとは書いてあったが、

これは少しではないだろ?驚いたよ」



ウィルは私の全身を見つめながら、言った。



ウィルに見られている。

そう思うと、少し背筋がゾクゾクした。



そうだよ。



肩を出した大胆なドレス。

私もこんなドレスを着ている手前

人の事を言えないのだ。



忘れていた感情が一気に吹き出してくる。



「・・・・・!」



は、恥ずかし。



ウィルはこんな私をみて、どう思うだろうか。

昔の私は、肌など一切出していなかったのだ。



それなのに、急にこんなに露出の多い服を着て、

変だなと思わないだろうか。



今度はこちらの耳が熱くなってくる。

ま、まずい。



「すごく、似合ってるよ」



けれど動揺する私に触れることなく、

ウィルは微笑みながらそう言った。



・・・そうだ。



ウィルは、どこまでも優しいのだ。



「・・・・・・馬鹿!」



「なんでえ!」

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