61:お婆ちゃんふえた


「あの天幕?」


「そうだ。時間的に……、もう皆集まっていてもおかしくないな。」



初めての遠足ならぬ、初めての戦争として補給潰しをした翌日。


昨日夜通し敵の基地を燃やしたって言うのに、今度は貴族集めて会議ときた。まぁ大事なのは解ってるんだけど、まだ体が幼くて体力足りないせいかきちぃぜ……! でも帰って来た直後のオリアナさんはピンピンしてたし。横にいるナディさんも同様で顔色一つ変わっていない。ティアラちゃんさっきから欠伸止まんないって言うのに、上位勢はほんと体のつくりが違うなぁ。ふぁぁ、ねみ。



「ん? あぁそういえば昨日丸一日動いていたな。すまないことをした。だがこういう顔合わせというのは案外馬鹿にならなくてな。お前がどのような道を進むのかは知らんが、姉上の孫として出席しておくに越したことはないだろう。ほら、捕まれ。」



そういうと、私の腰に手を廻しするッと抱き上げてしまうナディさん。わぁ、ママみがある。ここで『ナディさんちの子になるー!』なんて言えば前みたいに私のリアルマミィ、故郷にいる母からの念が飛んできそうなので言わないが、ほんと包容力あるよねこの人。口調とか態度とかむっちゃ武人なんだけど、垣間見える母としてのパワーが脳を焼いていくっていうか……。



「ありがと。」


「構わないとも、姉上の孫であれば私の子のようなものだ。さ、入るぞ。」



私を抱きかかえながら、天幕の中に入る彼女。見えてくるのは大きな机と、その上に乗せられた地図と駒。そしてそれを囲むようにずらりと並ぶ貴族っぽい人間たち。だいたい……、20人いかないくらいかな? あ、オリアナさんもいる。やっほー。手振っちゃお。



「遅いですぞ、ナディーン殿。」


「すまないな侯爵、この子を探していたせいで遅くなった。謝罪しよう。」


「まぁまぁ侯爵殿、まだ定刻から数分も経っておりませぬ。そうかっかなさらずに。……してナディーン殿? その子はもしやエレナ候ですかな?」



なんかちょっとふんぞり返ってるおっさんがナディさんに文句をいい、それを細目の男が宥めている。なんかこれだけでもここにいる人の関係性が見えてくるよね。立っている位置とかで派閥とかも違って来るんだろうし。……あ、そのふんぞり返りおじさんがこの中で一番爵位の高い侯爵で、細目の人がナディさんと同じ子爵さんなのね。把握・



「ふふ、いやあの子は領地だ。まだ未熟なところもある故な。この子は先日話していた姉上の孫だよ。ほらティアラ。」


「はーい。」



そう返事をし、腕から降ろしてもらった後。トテトテとオリアナさんの元に向かいその脚に抱き着く。ティアラちゃんオリアナさんの孫なんで、そこんとこよろしく!



「あら、可愛らしいわね。ティアラちゃんと言ったかしら? 今おいくつ?」


「7さい!」



集まっていた貴族さんたちの中でひときわ“お婆ちゃん”な人にそう問われ、子供の声を意識しながらちょっと訛らせてそう返す。うん、反応は上々ね! やっぱティアラちゃん可愛いでしょ! ……え、オリアナさんはお婆ちゃんじゃないのかって? いやこの人確かに髪とか白くなってきてるけど、お婆ちゃんというよりも戦士とかそういう感じの体つきだからさ……。



「ふんッ! この場に子供を連れてくるなど、どういう了見だナディーン殿。遊び場ではないのだぞ!」


「あぁ、侯爵。その通りだとも。だが彼女も十分すぎるほどの戦力である故な。ティアラ、今の職と階位は?」


「『天馬騎士』で、二回目だよ!」



上級職のLv3、この人たちにもわかる様に、そう言う。この世界に於いて『職業』というのは強さを示す一つの指標となっている。天馬騎士団の姉ちゃんたちが私が『上位職』になったの聞いて驚いていたように、ここにいる貴族さんたちも驚き、私を見る目が変わる。どうやらただの幼子から、この場にいるメンバーの一人、と判断してもらえるようになったようだ。


侯爵さんも……、あら。思い通り話が進まなくてイラついてる顔してますね。それだけナディさんを叩きたかったというか、この場での上下関係を決めたかったのかな?



「それはまた、優秀なお孫殿ですな。オリアナ殿。」


「だろ? まぁ私でも息子でもなく、ナディと同じ職を選んじまったが、まぁそれも愛嬌ってもんだ。まだ体は出来上がってねぇが、才だけはあるからな。足手まといにはならんだろうと思って連れて来た。」



以前親交があったのだろうか。どこか親しげな声をかけてくる男の貴族に、そう言葉を返すオリアナさん。


……オリアナさんって普通に平民の出なんだけど、貴族に対してタメ語で話せるってのはすごいよねぇ。それだけ自分の強さを周囲に認めさせてきた、ってことだもん。あと“お婆ちゃん”が私のことそういう風に言ってくれるなんて、ティアラちゃん感激! これはもう喜びの舞を踊らなきゃ……。あ、ふざけたら拳骨? んじゃ黙っとく。



「では早速、本題に入らせていただく。議題としては……、我ら王国軍の本隊についての対応。ということで相違ないな?」



ナディさんが机の奥、お誕生日席とかに当たる場所に立ち、言葉を紡ぐ。ここに集まった貴族たちがそれぞれに首を縦に振り、話を進めるように促した。


内容を簡単にまとめると、王国の本隊。いわゆる国王の配下の兵や、王宮に本拠地を置く五大臣などの配下に当たる兵たちが全く信用できないため、信用できる貴族たちで手を合わせて何とかして王国を守ろう、ということのようだ。上の指示に従ってたらただ兵力を磨り潰すだけの結果になっちゃいそうだから、独断で動けるようにしときましょ。って話だ。



「だが各部隊バラバラに動いては勝てるものも、勝てぬ。故に連携を密にするために貴公たちに声をかけた、というわけだ。無論、戦後“あちら”から難癖をつけられた時に対応できるように、という側面もある。」



ここで帝国軍を撃滅したとしても、戦争は終わらない。戦後処理やその後の力関係という政治が多分に含まれた戦い、帝国ではなく王国上層部との戦いが始まる。王宮で力を伸ばしながら王国を腐敗させている“五大臣”に対抗するためにも、貴族たちで結束しようよ、ってことみたいだね。



(……原作開始後の、“連合軍”みたいだな。)



そんなことを考えていると、さっきいちゃもんつけて来た侯爵が口を開く。



「私も同意だ。今の王宮の腐敗は目に余る。それを止めず酒と女に溺れる国王陛下も、だ。故にここに居る者の中で此度の話を受け入れぬものはいないだろう。だからこそ、一つ話を先に進めよう。今ここで話し合うべきことは、どうやって今年の帝国を切り抜けるか、だ。」



そう言いながらおそらく部下らしき人に顎で指示し、盤上の駒、机に置いてあった地図の上の駒を移動させていく侯爵。3000年近く殺し合い続けたのが帝国と王国だ。相手がどのような配置を置くのか、そしてどのような戦略を用いてくるのか大体理解しているのだろう。すぐに敵と味方の陣容が、完成する。



「敵推定兵力は約12万そして“帝国十将”や帝国最強と名高い“黒騎士”も確認されているという。対してこちらは7万、士気も決して高いとは言えず、主力となる王国軍4万は烏合の衆。」


「改めてみると……、これほど頼りない味方は初めてですな。」


「我らを合わせて約……、2万ほど。お守りをしながら6倍の兵とやり合うのは、少々厳しいです。」



……私がもうちょっと強くて周囲に能力を開示できていたのならば、『上位勢だけ足止めしてくれれば10万ぐらい殲滅して来るよ』なんて言えたんだけど、まぁ無理な話だ。もう天馬騎士団とナディさんには“能力”のこと教えちゃってるから今更だけど、どこから話が飛んでいくか解ったもんじゃないからね。黙っとくが吉です。



(そういえばオリアナさん。さっき会話に出てた“帝国十将”とか、“黒騎士”って強いの?)


(ん? あぁ、かなりな。黒騎士含め10人の上澄みを合わせて“帝国十将”。全盛期の私ならタイマンっていう前提だが、半分ぐらいは倒せるだろう相手だ。今じゃ……、一人じゃ下の三人。ナディとコンビ汲んで7人くらいいければいい方か? 黒騎士は無理だな。戦場で黒っぽいの見つけたら離れとけ。あいつ全身黒づくめだから。)



どうやら全盛期のオリアナさんより強いのが5人、弱いのが5人。そして今のオリアナ&ナディコンビで倒せそうなのも7人までとのこと。……つまり3人ぐらいとんでもない化け物がいるってこと!? と、戸締りしなきゃ……。



(……そういやゲームで中盤のボスに“黒騎士”っぽいの出てたけど、アレ二代目だっけ? 強い方ではあったけど、オリアナさんとナディさんを圧倒できるとは思わないよな。と言っても声や仕草的に老人って感じでもなかったし、多分違う存在なんだろうな。)



帝国十将というフレーズも、原作じゃ聞いたことがない。まぁつまり。殺しちゃっても原作的には大丈夫な敵なのだろう。そしてこの場にいる貴族さんたちの顔も、知らないものばかりだ。まぁ早い話。原作への影響を恐れて何かしなきゃいけない、ってわけじゃなさそうね。


倒せるかどうかわかんないけど、まぁそこは一安心かな。


っと、考え事してたら話聞きそびれちゃった。今は……、指揮権についての話かな?



「……故に、この場でより爵位が高く保有する兵力も多い私が指揮を執るべきではないかね?」



まぁ別に間違ったことは言っていない侯爵さんだったが……、彼の取り巻きっぽい貴族以外の反応が、すごく悪い。え、何オリアナさん? あ、あの人滅茶苦茶用兵下手なんだ。けど自分出来るって思っちゃってるタイプ? 処断したくなるほど悪人ではないけど、プライドが高くて面倒。ほへー。


小声で私に説明してくれたオリアナさんは、少し荒めに私の頭を撫でながら、声を上げる。



「おいおい、兵力つっても質は数に勝るぞ? 兵力、“保有する兵たちの総合的な能力”だったら私が一番上だ。だったら私が指揮を執るべきじゃねぇか侯爵さんよ。……おい、ユリアン。お前がやれよ。この中で一番“できる”のはお前だろ?」


「あらら。もうお婆ちゃんなんですけどねぇ。もっと若い子に任せるべきかと思いますが……。ま、皆さんがよろしければやらせていただきましょうか。」



さっき私のことを“可愛い”と言ってくれたお婆ちゃんがそう言う。


あんまり強そうには見えないけど……。一瞬、目の奥に見えた強い意思の力。肉体的な強さはそれほどだろうが、戦術戦略の分野になるとタダ者ではないお婆ちゃんなのかもしれない。侯爵以外の貴族さんたちも頷いてるし、このユリアンってお婆ちゃんが指揮を執る感じかな?



「では軍議を始めていきましょう。本来なら一塊になっておきたいところですが、我らの敵は帝国だけではありません。それに、敵軍の数を考えると分散させ各個撃破を繰り返す他ないでしょう。囮として使う本隊が敗走するまでの時間でけりを付けないといけませんし、幾つかに軍を分けて各個撃破を狙います。そのため指揮が取りにくくなるのですが……。」


「あぁ、そこは我ら天馬騎士団が受け持とう。伝令役として大隊一つをそのまま任せる、好きに使ってくれ。」


「感謝を。」



淡々とお婆ちゃんが指示を出していき、動き始める貴族さんたち。不満そうだった侯爵さんも一応指示には従うみたいで、渋々行動を起こしていた。……多分だけど、さっき自分が指揮権を握ろうとしたのってプライドとかもあるかもだけど、戦後の政治も絡んでいたんじゃないかな。ある意味貴族たちで構成された新しい派閥が出来るわけだし。


もちろん生き残れたらの話だけど……、まぁそういう発言力は考えちゃうよね。



「それで、オリアナとナディだけど……。オリアナ、体の方はどうなの?」


「このクソガキのおかげで鍛え直したからな。まぁまぁって感じだ。だが全盛期ほどは動けん。」


「……そう、ご家族のことを聞いたときは心配だったけど、また貴女の顔が見れて嬉しいわ。こんな場所で言うのもなんだけど。……では二人は合わせて運用しましょう。相手の“上位勢”、帝国十将レベルを確認した場合は、そこに飛んでもらいます。」



それに、強く頷くオリアナさんとナディさん。……話してる感じやっぱ交友あったんだろうな。



「あぁそうだ忘れていたわ。ティアラちゃん?」


「うに? 私? どうしたのユリアンお婆ちゃん。」


「貴女には拠点防衛をお願いできるかしら?」


「え、やだ。」



即座に飛んでくるオリアナさんのげんこつ。ふっ! ティアラちゃんを甘く見ないでもらおう! 何度も喰らえば回避も余裕……! なに、二発目ッ! しかも避ける方法をあらかじめ予知したかのように向かって来る拳、よ、避けられないッ!!!


ごちん。



「いちゃい。」


「言い方を考えろこのクソガキが。……はぁ、悪いがユリアン。こいつは私らと一緒に動かした方がいい。目を離すと勝手に前に出る奴だからな、近くに置いておいた方が安全だ。それに……、単純な戦力は私らに劣るが、自分よりも“格下”を狩るのはこいつの方が早い。」


「あら……。」



おそらくさっきのは、ユリアンお婆ちゃんなりの優しさだったのだろう。戦場で死ぬ可能性を減らすには、後方で拠点防衛をしている方がいい。前線にでなければ死亡率は減る。けれど後ろで一人でいるよりも、実際オリアナさんの傍の方が生存率高いだろう。それに私が前に出て暴れた方が敵への被害は大きくなるだろうし、勝率も上がってくる。


何せやろうと思えば万単位で殲滅が可能なのだから。



「そういえば、息子さんにも結構スパルタだったわね貴女。解ったわ、その方向で行きましょう。でも……。いえ、これは今言うことではないわね。また戦後、お互い生き残ったら時間を取りましょう。」


「あぁ。」



何か言おうとしたユリアンお婆ちゃんだったが、オリアナさんの顔を見てそれをやめる。そして何故か私に笑いかけた後、指揮系統を構築するためか、他の人に話しかけに行ってしまった。何だったんだろ? ま、いいか。たくさん殺すぞ~!



「また物騒なこと考えてるなお前。ま、好きなだけ暴れればいい。暴れれば暴れるほどあっちも“上澄み”を投入して来るだろうが、それを私とナディで狩る。基本的にはそういう戦い方になるだろ。……お前は生き残る事だけ考えとけよ。」


「あいさー!」



私がそう言った瞬間、この天幕に走り込んでくる……。わ、モヒカンズじゃん。どした? 奇抜な見た目過ぎて貴族さんが剣抜いちゃったぞ? ほら所属と用件プリーズ。不審者として切り殺される前に早く。



「は、はッ! ティアラのあね、じゃない。ティアラ殿配下の者であります! 伝令として参りました! 帝国軍に動きアリ、侵攻の可能性大とのことです!」



はい、良く出来ました! ユリアンお婆ちゃんに『あれ貴女の趣味?』みたいな目で見られた以外はオールOK! さ~、んじゃ戦争が始まっちゃうみたいだし、気合入れていきましょー!


あとユリアンお婆ちゃん? ウチの子たち服装とか髪型に規定ないから……、うん、アレ本人の趣味。ティアラちゃんの趣味じゃないよ!







 ◇◆◇◆◇






「皇帝陛下、準備整いましてございます。」


「……そうか。」



場所は変わり。帝国軍陣地へ。


帝国軍本陣の一際大きな天幕、その中央に座していたのは、戦装束に身を包んだ男。その頭には皇帝位を示す帝冠が乗せられていた。


時刻はちょうど、ティアラが戦場に出るためにタイタンを呼びに行ったのだが、まだ機嫌が悪すぎて二回ぐらい撥ね飛ばされてしまったころ。帝国軍は侵攻に向けて準備を進めており、後は皇帝の号令を待つのみ。



(本来であれば、あちらの士気が完全に崩壊するまで待つ予定だった。)



そう考えるのは、先ほど皇帝と呼ばれた男。


彼らは今年を決戦の年と定め、大規模な動員とそれを動かすのに必要な物資を用意していた。この国境線の戦いに於いて王国軍を撃滅し、戦う力を失った王国を次々と破壊、占領していくという作戦。3000年も続いた因縁を自分たちの手で終わらせるのだと帝国軍の士気は非常に高い。


もちろん、これまでの王国んであれば。帝国が集めた兵と同量、そして同じだけの強者を集めて対抗し、帝国は厳しい戦いを余儀なくされていただろう。しかし、今は違う。


現在の皇帝が即位する前。


最盛期のオリアナや、原作主人公の祖父リッテル、また乱心する前の国王がいたころであれば帝国の全力をもってしても敗北していた可能性が高いが……。王国側の名だたる英雄たちは老化が始まっており、それにより引退した者も多い。そして国王が乱心したため英雄リッテルは奥地へと移り住み、王宮は奸臣の巣窟になってしまっている。


そんな王国の弱体化を示すように。帝国軍の前に現れたそれは、非常に弱く拍子抜けするものであった。



(こちらの被害を最小限に抑えるために“待ち”。今後王国内部で起きるであろう攻城戦などに備え、兵力や物資を温存しようとしていたが……。)



帝国側の計画に、幾つかの想定外が生まれ始めている。


間者を放ち、士気を最低まで下げ、内部を丸裸にし、互いに連携できぬよう分断した後ですべてを踏み潰す。皇帝や彼の配下たちはそのような策を用意していたのだが……、昨夜未明。帝国が誇る大型補給基地の一つが、地図から消えた。


これだけの大攻勢だ、もちろん補給基地は他にも存在しており、この本陣にも多くの物資が保管されている。故にすぐさま兵たちが飢えてしまうようなことはないのだが……。


同様の被害が数日、数週間、連続で続くのであれば、話は変わってくる。



(迂回し帝国内部へと入り込み、的確に補給を潰す。そして敵の襲撃があったのは基地だけではない。)



ティアラの攻撃により、帝国は複数の輸送隊と、帝国内地から物資を送るのに必要な補給路の複数を失った。輸送隊は死体含め跡形もなく消滅し、補給路は突如として現れた巨石によって封じられた。たった一日で、である。そしてさらに昨日消滅した大型補給基地とは違う場所の基地においても、王国のペガサスを発見したが逃がしてしまったという報告が上がってきている。


つまり時間を掛ければかけるほど、帝国軍はその動員した兵数によって押し潰されてしまう可能性が出て来たのだ。


通常であれば国境線の防備や、補給基地の防衛隊を増強するなどを考えられたのだが……。



(昨夜消滅した基地、あそこには“十将”には手が届かないものの、優秀な者とその兵たちがいたはずだ。)



同じ程度の実力者を上げるとすれば、ティアラと出会う前のロリコン伯爵だろうか。それと同等程度の指揮官と、多くの将兵が防衛として派遣されていたのだが……。ティアラの進化した“射出”によって穴だらけになってしまい、残ったのはオリアナによって消し飛ばされてしまっている。そして死体も物資も全て、ティアラが回収済み。


このことから皇帝とその配下たちは基地を守ることを諦め、敵の大本である眼前の王国軍を叩くことにしたのである。



(間者からの情報だが……、王国貴族たちが何か動きを見せていたようだ。何かことを起こされるよりも、攻め切ってしまった方が得策だろう。)



「黒騎士よ。」


「はっ。」



皇帝がそう問いかけると、彼の後ろに控えていた2m越えの巨大な黒い甲冑がくぐもった声を出す。地球とはそもそも人の作りが違うこの世界においても、異質と判断される存在。オリアナが戦場から身を引く数年前から帝国側に現れるようになった強者であり、帝国最強の名をほしいままにする存在である。



「此度の戦、お前にも動いてもらうことになるだろう。」



皇帝の声に、深く礼をすることで答える黒騎士。



「兵に伝えよ、進軍、とな。」



この世界の運命を、原作と同じ道を進むのか、それとも根本から違う世界になるのか。


全てを決める大戦が、今始まる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



〇ティアラ

タイタンに数回撥ね飛ばされたが無事。オリアナさんのげんこつも相まって完全に目が覚めた模様。徹夜しちゃってるのでテンションがクソ高い。戦意クソ高いので放置してると勝手に敵陣に特攻しそうで怖い、とのことでオリアナさんたちと一緒に行動することに。


〇オリアナ

何人か旧友と呼べるような相手と再会できたので機嫌がいい。孫が相変わらずすぎて頭を悩ませてはいるが、ティアラが褒められたりすると口元が緩くなってしまう様子。


〇ナディーン

私もエレナ連れてきたらよかったかな? と実は一瞬思ったが、ティアラの様な不思議な力は持たないためやめておいて良かったと思っている。以前物資の輸送をいつの間にか単身でやり遂げていたことから何かあるとは思っていたが……、やはりお前はとんでもないな。とティアラに思っている様子。


〇ユリアンお婆ちゃん

すっごくお婆ちゃんな人、仲良く成ったらたぶんお菓子くれる。

あまり目立ち過ぎると五大臣やそのほか勢力に目を付けられると考えたが、それよりも今は生き残り勝利することが肝心と考えている様子。戦後どれだけ手を貸してあげられるか……。

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