23:やっぱいるよね、ロリコン



「オリアナさん~ッ! これほんとに意味あるんですかぁーッ!」


「なかったらやんねぇよ。ほら口よりも手を動かせ! あと持ち方また間違ってんぞ! 槍先は下に向け続けろ! 脇も締めとけ! 腕持ってかれてぇか!?」


「ひぃー!」



神の元でカステラを食べさせていただいてから数日後。無事オリアナさんを信者に迎え入れた私は、現在彼女から戦い方の指導を受けているところだ。最初の間は簡単な槍の持ち方の指導だったり、素振りの指導とかそんなのだったんだけど……。急に段階が上がったと思えば超スパルタお婆ちゃんに大変身。


毎日お叱りを受けながら頑張ってるところです。といっても……。



(布で丸めたボールだけど痛いものは痛いぃ! 効果あるのは解るけど怖いぃ!!!)



今現在やっているのは、オリアナさんが投げてくるボールを槍で打ち返すという訓練。しかも打ち返し方もちゃんと教えてもらった槍のフォームでしないといけない。動体視力と運動神経、後は空騎兵に特攻を持つ弓兵からの攻撃を弾けるような特訓らしいけど……! ボールが! ボールが速すぎる! なんやお前! 絶対時速200kmぐらい出てるやろ! 頭おかしい!!!



「絶対! 子供に! 投げるものじゃないッ!」


「お? まだ余裕ありそうだな。ペース上げてくぞ~!」


「お、お助けーッ!!!」



レベル上がってスペランカーから一般人程度には成りましたけど! 防具つけてるからある程度のダメージ軽減できますけど! これ当たり続けたら死ぬ奴ですから! 殺す気! 殺す気か!? 色々やらかした私を!? いやまぁ順当かもですけどォ! もうちょっと手心をくださいぃ!



「おーい。だから避けるなよー! ペガサスの上じゃ逃げた瞬間、地面に真っ逆さまだぞー!」


「そうですけどォ! ひぃー!」



何とか銅の槍で飛んでくるボールを弾きながらさばいていく。


けどまぁそんな簡単に何度も出来るわけなく。半分は回避しちゃって、三割はもろに胴体で受けてしまう。残りの二割は何とか槍に当てることができてるが、ボールを外側ではなく内側に返しちゃうこと多数。



(内側、つまり自分の体やペガサスに被弾しちゃう可能性大! 空を飛ぶためにペガサスは軽くしなくちゃいけない。つまり馬鎧みたいのは使用不可! 翼に掠っただけで飛行不可になることもよくあるらしい! なのでそのあたりは騎手である私が何とかしなきゃいけないのは解る! 解るけど!)



あ、ちなみに現在のステータスはこんな感じね?




〇ーーー〇


ティアラ 空騎兵 Lv2


HP (体力)10

MP (魔力)6

ATK(攻撃)6

DEF(防御)6

INT(魔攻)6

RES(魔防)7

AGI(素早)8

LUK(幸運)0


MOV(移動)4(7)


〇ーーー〇




皆さんご存じの通り、このステってのはレベルアップ以外にも肉体の成長によって向上させることができる。訓練すればその分上げることができるんだけど……、まぁそれもわずかな程度。でもその雀の涙で生死が決まることもあるから油断はできないんだけどね?


ゲームみたいにセーブしたところからやり直す、ってことはできないし。死んだらそこで全部終わりだ。


だからこういう訓練も真面目にやらなきゃってのは解るんだけど……! まだ私5歳よ! 5歳児に剛速球投げるなボケぇ! 死ぬぞ? 我死ぬぞ? お陀仏ぞ!



「はぁ。わかったわかった。じゃあ休憩な? 息子は最初からこれぐらいできたんだが……。」


「それは単純にYOUの息子さんが凄かっただけでは……!?」


「でも嬢ちゃんもう『空騎兵』なんだろ? これぐらい行けると思うんだがなぁ? 『村人』じゃないならいけるいける。」



だーかーら! 私は空騎兵だけど実質的に最低値なの! 5歳児だから無理やりたたき上げてこのレベルなの! 言ってしまえば『村人』よりも弱いの! 『村人』でも強い人はステ10超えたりしてるの! 生まれながらにして強者の主人公とか! 槍鬼って恐れられた人の血は引いたりしてないの!


『何かあったときのために大量に傷薬買っておいたぞ。』で安心できるほどタフガイじゃないの! お願いだから解って!!!



「全力パンチされたら私、死ぬんだからね???」


「するわけないだろ。だが、かなり手加減してるんだけどな……? でも弱いってことは訓練しなきゃ強く成れないよな! ほら“目標”があるんだろ? 頑張れ頑張れ、もっかいいくぞー。」


「ひぃ~ッ!」



とまぁこんな感じでバイオレンスな毎日を送っております。


いや~、にしても魔法の『傷薬』ってのはすごいねぇ。ゲームでは使用したら即座にHP10回復してたけど、それはこの世界でも同じみたいで、患部にぶっかければ即座に元通りになる優れものだ。塗、即、回復!って感じ。



(まぁ見た目が真っ白で粘着質だから、すごく事案だけど……。数分したら乾いて透明になるからいっか。)



あんまり日持ちしないのがこの『傷薬』の欠点且つ特徴みたいだけど、そこはアユティナ様から頂いた“空間”がある。つまり劣化を気にせず買い込んで使いまくることができるってわけ! まぁそのせいで私地獄にいるんですけど……。


まぁね? 死ぬ死ぬ言ってますけど、流石に殺されることはないってのは解ってるんですよ。


アユティナ様もそれを理解しているみたいで、私がどれだけ泣き言を言っても完全にスルーされてるし、むしろこの訓練が“成長につながる”せいか、時たま応援のメッセージが届いたりもする。『がんばれ♡がんばれ♡』って。あの、オリアナさんに少し控えるように言ってくれたり……、はしないですよね。うん知ってた。


って、ちょ!



「おほぉ!!! 掠った! 今頭掠った! 死ぬ! 死んじゃう!」


「だから死なねぇって。というか痛みに耐える訓練も兼ねてんだから気張れっての。意志だけじゃどうにもならん事ばっかだぞー。」


「そりゃそうだけどォ!!! ひぃぃぃぃ!!!!!」



私たちには関係ない話……、正確には“原作の私”は関係してるんだけど、僧侶系の職業に進むと回復魔法が使えるようになる。んでそれを極めて行ったり、上級職に転職すると四肢の切断くらいなら回復できるようになる。


正確に言うと、切断されたものをくっつけられるようになる。って感じだね。時間経過しすぎるとくっつかないみたい。


まぁそれぐらい回復魔法が優秀なら、ある程度の無茶は利く。それはつまり、戦場に於いて兵士は腕飛ばされても戦い続けた後、自分の腕拾って戻ってくるぐらいの根性が求められている、ってことらしい。怖いね……。まぁそもそも戦場で痛い痛いって叫んでたらその間に殺される。だからオリアナさんの言うことは正論なんだけど……。



「やっぱ師匠選び失敗し、おごぉ!」


「あ、やべ。大丈夫かー?」


「き、傷薬使うからちょっと待って……。よし治った。」


「よーし、ならもっかいイクゾー!」


「ギャーッ! もうヤダー!!!」










んで、場所を移しまして迷宮。


訓練だけじゃレベルは上がらないし、お金も貯めなくちゃいけない。ということで訓練が終わってまだ時間と体力がある日や、訓練に使ってる町の外に他の団体が来てるときはダンジョンに潜っている。実戦経験も必要なので、弱い魔物がいる階層ではこれまでの“射出”オンリーの戦い方をせずに、【銅の槍】を振り回して頑張ってます。



「にしても、ちと『ジャイアントうねうね』の数が多いな。何かあったのか?」


「……オリアナさんが素面でそれ言ってると、なんかすごくシュールだよね。」


「何か言ったか?」


「あ、なんでもない。でも確かになんでだろうね?」



そう言いながらでっかい芋虫の死体に【銅の槍】を突き刺し、中から『虫玉』。換金素材を取り出していく。現在私たちがいるのは一階層で、この芋虫がメインで出てくる場所だ。オリアナさんのおかげである程度体の動かし方が解ってきたので、何とか一人でこの芋虫は討伐できるようになった。


まぁ動きが単調だし、壁側にうまく追い込めばやりやすいってだけなのかもしれないんだけどね? とにかく“射出”に頼らず動けるようになったのは大きな一歩だと思う。



「“よく知らない”けどさ、ダンジョンからモンスターが溢れるってこともあるみたいだし。気を付けておいた方がいいかもね。」


「だなぁ……。っと嬢ちゃん。お代わりだ。」


「はーい! ティアラちゃんが死をプレゼントしますよ~!」



にしても……。複数人のダンジョン攻略ってめっちゃらくちんだよね。これまで索敵に戦闘にマッピング。このすべてを全部自分でしなくちゃいけなかった。けれどオリアナさんがいてくれるおかげで分担ができる。


一階層では私が【銅の槍】で、それ以外は“射出”を用いて戦闘を担当。ついでに剥ぎ取りも私の仕事。オリアナさんはその戦闘でのフィードバックと索敵。あと私がマッピングできていない三階層以後は彼女が担当してくれることになっている。



(それに、オリアナさんはすでに上級職『槍騎士』。この序盤の階層じゃ経験値が入ってこない敵しか出てこない。そのあたりの経験値配分の問題とかを考えなくていいのもすごくいいよね。)



この世界の人間もゲームと同じように自分たちの肉体がレベルアップ。進化していくことを何となく理解している。だからこそ経験値の配分ってのはパーティ間の揉め事に繋がるらしい。ダンジョンで手に入れたお宝の配分と同じように、問題になっているのかもしれない。


それを考えると、オリアナさんの上級職Lv10と、私の下級職Lv2ってのはちょうどいい塩梅なのだろう。



「おっし、倒した~。にしても全然レベル上がんないなぁ。」


「まぁまだ一階層だからな。『空騎兵』ならもう少し下の階層が適切だろうし、仕方ねぇよ。……にしてもどうやってそこまでレベル上げたんだ?」


「“射出”で盗賊皆殺し。」


「あぁ……。お前も大概だな。」



何が!?



「にしても嬢ちゃん。ペガサスはどうするんだ? 相棒がいないと『空騎士』とかタダの槍兵だぞ。しかも本職の『槍兵』よりも弱いって言う何とも言えない存在……。まぁ人と同じように相性もあるし、タイミングはお前さんに任せるが……、決まってんのか?」


「あ~、それが全然。迷宮都市なら買おうと思えば買えるだろうけど……。」



そうなると余計にお金を消費しちゃう。


お馬さんはこの世界の高級外車みたいなものだ。そもそも高いし、維持費もかかる結構な金食い虫。しかも軍馬となると肉体を維持しなきゃだから餌代もよりかかるでしょう? あの最初の町で売っちゃった白馬君もそういう理由で手放したの。私世話できないし。まぁ単純にお金が心もとなかった、ってのもあるけどね……。


なのでもしペガサスを手に入れるとすれば、ある程度の経済基盤が整った後に、野生から捕まえてくるってのが一番いいんだけど……。私ペガサスの群棲地がどこにあるのかよくわかってないのよね。王国のどのあたりの地方、までは資料集の知識で頭に入ってるんだけど、細かい場所までは不明。


だからまぁ……、私の相棒探しも結構時間かかりそうなのよねぇ。



「野生か……。確かにそれもありだが、それを狙うよりもちゃんとした厩舎とかで訓練された奴を手に入れる方がいいと思うぞ。ある程度配合が進んでるだろうし、人慣れもしている。野生は野生の良さがあるだろうが、まぁ平均値が高いのが欲しいってなれば買った方がいいだろうな。」


「ほへぇ……。」


「まぁそのあたりはお前さんが決めな。『空騎兵』ってのは一頭のペガサスと一生を過ごすって聞く。相棒ってのはゆっくり決めるもんだぜ。」



なるほどなぁ。ま、体出来上がるまではあんまり動けないし。おいおい考えていくことにしましょうか。まだ私5歳ですしお寿司。



「っと、こんなもんか。嬢ちゃん、次は一個飛ばして三階層に行くぞ。“射出”入れてドンドン稼いでけ。」


「あいあいー!」



訓練のストレスとか全部ぶっ放すために! 魔物をばらばらにしていくぞー!








 ◇◆◇◆◇







深夜、迷宮都市の一角。


ティアラがこの町に入ったときに通った、歓楽街と呼ばれる区画。この町一番とも呼べる宿の一室で、一人の男が杯を傾けていた。


どうやら先ほどまで“お楽しみ”であったようであり、彼の視線の先には泥のように眠る女がいた。それだけであればこの『欲望の町』と呼ばれるこの町でありふれた一幕だったのだが……。その女の年齢は、明らかにティアラと同等。もしくはそれよりもほんの少し上、といったところ。


何処か濡れた彼女を撫でまわすように見ていた男だったが、そんな彼の鼓膜を震わす音が三つ。誰かがドアを叩いている様であった。



「入れ。」


「失礼いたします。」



足音一つ立てず、大きな声ではないのに部屋中に届くような声で話す老年の男性が部屋の中に入ってくる。その執事のような服装から、どうやら先ほどまで情事に耽っていた男に仕えている様子。



「っ。お楽しみのところ申し訳ありません。」


「よい。……だが少々興醒めだな。『欲望の町』と言うがこんな簡単な趣向も理解できぬとは。人は獣ではないというのに。」


「こちらで手配しなおしましょうか。」



少し強張った声で未だ眠りにつく娘子の方を見ながらそういう執事。しかしながら彼の主人が顔を横に振ったことで、少しだけ息を吐きだす。



「少女というモノは無垢であるべきだ。ゆっくりと自分色に染め上げていく順序が大切なのだよ。しかし彼女は少々この町に染まり過ぎていたな。……まぁせっかくここまで足を運んだのだ。普段と違うことをするというのもまた一興、か。おい、この者の身請けをする。」


「は、かしこまりました。」


「すでに染まったものをもう一度塗りなおす、屋敷での日々を楽しみにすると良い。」



そういいながらやさしく女の頬を触る男。この国の爵位を持つ彼は、領地を保有し自身の屋敷には数多くの少女たちを抱えている。その特殊な趣味にはあまり合致しなかったようだが、今夜の一幕で目の前の存在を気に入ったのも確かだったのだろう。



「にしても。つまらない商談しかないと思っていたが……、やはり私は運がいい。こんな場所であのような存在と出会えるとは……! して、わざわざこのような時間に来たということは。」


「はっ。調査が完了致しましたので、ご報告に参りました。」


「素晴らしい! して、あの“天使”! 麗しき彼女の名は!?」



大きな声を出す男に一つの紙束を手渡す執事。その一番上には白髪碧眼の幼女が描かれていた。



「名を、ティアラと言うようです。」


「おぉ! そうか……。やはり、やはりいぃ! 触れば折れてしまいそうな細い腕! 抱きしめれば消えてしまいそうな細い体! 儚げにこちらを見つめる青い瞳……! まさに、まさに私が追い求めた天使がここに……!」



狂ったような眼で資料を読み進めていく男。


そこには彼女の情報。ティアラの情報が事細かに綴られていた。


あと二年ほどで主人のお眼鏡に叶うような幼女がいる宿屋に宿泊していること。単身でダンジョンに潜れる実力があること。ギルドから目を掛けられていること。現在元王国兵であるオリアナという女性が傍にいること。それ以外にも多く、大量の情報がそこに集められていた。


ダンジョン内部での情報や、彼女が真に隠さなければいけない情報はそこに書かれてはいなかったが、それ以外の全て。町の中で生活している時に発生した出来事のすべてが男の手の元に。



「素晴らしぃ! 素晴らしぃ! あぁ、私の天使! 君はティアラという名なのだな。何とも可愛らしい響き……! あぁ早く私に君がどんな声なのか教えてくれ……っ!」



既にご理解いただいているだろうが、この男。重度のロリコンである。ティアラの前世の社会ではYESロリータNOタッチ! という標語ができるほどロリコンたちの規律は整えられていたが、この世界では違う。現代のように司法制度や警察組織が整っておらず、その二つを司るべき領主が“ソレ”だった場合……。まぁ大変なことになる。


幸い彼は『芽吹いたばかりの花をぐしゃぐしゃになるまで手折りたい』というタイプではなく、愛でるタイプのようだが……。まぁ普通に手を出しているのでOUTである。ティアラがこの場にいれば『え、キモ。“射出”。』と全くふざけずに処刑するだろうが……、残念ながらこの場にはいない。



「して! していつ彼女はここに!?」


「それが……、すでに冒険者として登録されている様でして。何人か指示を出したのですがどの者も帰ってきておりません。」



出来る限り声に恐怖を乗せないように努めながら、そう話す執事。冒険者として登録されたということは、その身分を組合に認められたということになる。また通常そのような年齢で登録を許されるということはなく、明らかな例外であると思われる。


つまり早い話、少々引き抜きが難しい相手、ということだ。


もちろん貴族としての強権を発動すれば不可能ではないのだが、今の彼は“この迷宮都市の指導者”と商談しに来た貴族。その商談の際に相手に付け込まれるような要因を作るようなことは避けるべきであった。なにせ相手は海千山千の商人、迷宮都市という欲望と金が渦巻く魔境で頂点に立つ相手だ。



「……帰ってきていないだと? たしか、オリアナといったか。」



彼に仕える執事も、それは理解している。故に“誘拐”という手段でこちらを把握させず主人のモノにしてしまおうという意図から複数の刺客を差し向けたのだが……。そのすべてが未帰還。もちろん雇い主側の情報が洩れぬように手配した者たちだったが、それでも全員が帰ってこないというのは明らかに異常。


その要因を探るため先ほどの資料を思い出した主人は、自身の天使までの道を阻む敵の名を口にする。


……なお実際はオリアナが処理したのではなく、ティアラが『なんか最近治安悪いっすねぇ。まぁこの町だし仕方ないか。ロリコンは処刑!』と言いながら闇夜に紛れて処理しているのだが……。まぁそんなものわかるはずがない。死体などの痕跡も全て“空間”に収納されるため、このロリコンからすれば急に刺客たちが消えたように見える、ということだ。



「お前のことだ、送った者も手練れであったのだろう。しかし相手の方が上手だった、ということだ。オリアナと言えば私でも知る王国の老兵、“鬼”と恐れられた存在だ。なぜ我が天使を然るべきもとに返そうとしないのか不思議ではあるが……。」


「金貨100枚にすべきでしょうか。」


「足りぬな、3倍にするといい。」



執事が主人の意向を読み取り、彼女の身柄。ティアラの身柄に金貨100枚の値段を付けようとする。彼が主人から許されている最高限度額であり、この世界に於いて慎ましく生活すれば一生何もしないで過ごせる値段。しかしながら男は、その三倍を指示する。



「傷一つ付けずに、我が元に連れてくるのだ。」



彼がそう言うと、深く礼を返しながら執事がこの部屋を去っていく。


その数時間後、この町に依頼人不明のとある話が流れ始めた。



『ティアラという少女を傷つけず連れて来た者に、金貨300枚を支払う』というモノが。





なお、当の本人は……。





「ねぇねうるさい……。」


「かすてら、かすてら……。」



宿屋の看板娘と一緒に眠りながら、アユティナ様から大量のカステラを貰う夢を見ていた。


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