【KAC20244】廃校にて【800字】

三毛猫みゃー

廃校に残された二人は……

「痛っ」


「大丈夫か」


「うん、手摺りがささくれだってたみたいで、指にトゲが刺さっただけだから」


「ちょっと見せてみろ」


 廃校の階段で二人の男女が向かい合っている。二人はこの廃校になった小学校の卒業生だ。


 今日は同窓会があり、帰り際に学校に行ってみようという流れになりやって来たのだが、気が付けば二人だけになっていた。


「ちょっと深く刺さってるな。抜くからスマホで照らしててもらっていいか?」


「うん、お願い」


 先程までは仲間がせっかく二人きりにしてくれたのに、何も言ってくれない目の前の幼馴染に対して刺々しい態度を取っていた彼女のささくれだった気持ちは、手首を優しく掴まれたことによる恥ずかしさで何処かへ飛んでいったようだ。


「よし取れた」


 刺さっていたトゲが抜けたことにより、傷から血が溢れ出して来ている。彼女はどこかに絆創膏があったかなと、ポシェットに視線をやった所で、指がなにか温かいものに包まれたのを感じ視線を指へ戻した。


 彼女は一気に頬の温度が上がるのを感じた。指は彼に咥えられ、舌でなぶられ、吸われていた。


「ちょ、な、なにしてるの」


「消毒」


 彼はそう言って自分の財布から一枚の絆創膏を取り出し差し出してきた。


「とりあえず貼っとけ」


「えっ、あっ、うん、ありがとう」


 その後は、また怪我をしたら危ないと言う理由で手を繋いで懐かしい校内を回った。校舎から出た所で、明かり代わりにしていたからの携帯が震えた。メールが届いたようで彼は中身を確認している。


「あいつら先に帰ったみたいだわ」


「そうなんだ」


「俺達も帰るか」


 先に歩き出す彼。


「ねえ、いつも入れてるの?」


「絆創膏か」


「違うよ」


 そう言って彼女は両手で丸を作って見せる。その頬は月明かりでも真っ赤になっているのがわかる。


「あー、なんだ、なあ今から家に来ないか、今日は誰もいないんだ」


「もう、先に言うことがるんじゃないの?」


 それもそうだと彼は彼女の前に立ち、覚悟を決めた。

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【KAC20244】廃校にて【800字】 三毛猫みゃー @R-ruka

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