長門と大和の幼稚園生活
「長門ー! 大和ー!」
「どうしたの鈴音」
「えへへ」
椎名一家の長女である鈴音に佐藤一家の長女初春、萩原一家の長女白露とは年齢が近いこともあり、よく遊んでいた。
長門と大和が早熟なためか、他の子達は年齢以上に長門達を姉、兄と慕っている。
「鈴音、僕達そろそろ幼稚園に行く時間だからまたね!」
「ええ! ブー」
「帰ったら遊ぼうね」
イブキの手を二人が握り、イブキが車で幼稚園まで送迎する。
車で十分ほどで幼稚園に到着し、二人は幼稚園の先生に挨拶をする。
「「おはようございます!」」
「はい、おはようございます! 今日も元気いっぱいね大和君、長門ちゃん!」
「では先生今日もよろしくお願いします。十八時には迎えに行けると思いますので」
「わかりました。後藤さんも頑張ってください」
「イブキまたね~!」
「じゃあねイブキ!」
「大和、長門またね~!」
こうして二人の一日は始まる。
私は幼稚園で先生をしている者だ。
後藤大和君と後藤長門ちゃんは天使病を産まれた時から患っているのだが、それはもう可愛くて仕方がない。
先生としてあまり特定の園児に肩入れをしちゃいけないのだが、私や他の先生方···園長先生を含めて二人にメロメロだ。
双子ということもあり、容姿も似ているが男の子の大和君は髪の毛に茶色いメッシュが入っているので見分けが付かないことは無い。
二人は朝来ると出勤している先生全員に挨拶をしてくれる。
挨拶を終えると連絡帳をボックスに入れて、他の子と遊び始める。
「長門ちゃん! おままごとしよ!」
「大和サッカーしようぜ!」
二人はそれぞれの友達に誘われて遊び始める。
十時になると朝の会を始め、体調の確認や朝の体操を行い、それが終われば勉強を始める。
といっても三歳児なので塗り絵をしたり、紙芝居を読んであげたり、粘土を使った図工をしたり、簡単な数字を教えたりだが。
紙芝居の時とかに大和君と長門ちゃんは翼が邪魔で最前列だと他の子が見えないと最後列に率先して移動して、若干浮かび上がりながら紙芝居を見てくれる。
塗り絵やお絵描きの時間では他の子から描いて欲しいキャラクターを綺麗に描いていく。
まだ三歳なのに他人への気遣いができているのを見て私は凄いと思う。
そして給食の時間になると箸を使ってちゃんとご飯を食べている。
ただ皆の給食だけだと足りないらしく、追加でお弁当を持ってきて食べている。
親御さんから人の数倍食べるのでと言われているので、自由にさせているが、他の子が苦手で食べられない物をお弁当の具と交換してあげたりしている。
本当なら駄目な行為なので一度注意してからは、本当にこっそりやるようになった。
あまり注意をしてもしょうがないので、好き嫌いをする親御さんに事情を説明すると、申し訳ないと言われ、好き嫌いを無くせるようにしますと改善の努力を始めたらしい。
子供の好き嫌いはどうしようもない。
ただ大和君と長門ちゃんは本当に好き嫌いせずに全て美味しそうに食べる。
給食に出された物は勿論、成人男性でも食いきれない様な円柱型の汁物とご飯とおかずが三段になっている弁当箱だが、皆が給食を食べている間に全て食べ終えてしまう。
それくらい食べているので身長も他の子に比べて大きく、百二十センチ近くある。
食事が終わると、大和君と長門ちゃんはお弁当箱を水道で洗い始める。
軽く汚れを濯ぐだけであるが、小さい子がそれをできるのは素晴らしいと言わざる得ない。
午後も二時間勉強時間でそれが終われば自由時間となる。
長門ちゃんはおままごとや絵を描くことが好きで、大和君は体を動かす遊びが好きだ。
十五時になると幼稚園バスで帰る子や迎えの親御さんが来て延長の子以外は帰っていく。
延長保育では基本自由時間だが、大和君と長門ちゃんはその時間は設計図みたいなのを話し合って決めていることが多い。
気になったので私が何を描いているのか聞くと
「ダンジョンの設計図」
と答える。
横には日本の絶景百選とかヨーロッパの観光地、ダンジョンの内部みたいな図鑑がよく置かれていた。
親がダンジョンで働いていると妄想のダンジョンを描いて遊ぶということはよくある。
二人に意見を求められたら、私も答えるようにしている。
一部の先生は探索者証明証を持っている探索者だった人(引退済み)も居るので、その先生達に質問したりしていた。
曰くどんなモンスターが居るのかから始まり、どんな資源があると嬉しいか、宝箱はダンジョンに何個出るのか、モンスターの強さ等を聞き、それを参考に文字を記入していく。
そう、二人はもう小学生低学年くらいの文字を書けるのだ。
これは元々親に教わっていたのもあるが、先生達が二人の学習意欲に目を付けて、延長保育時に算数や国語のドリルをやらせてみたら、最初は悩んでいたが、半年もすると普通に解ける様になっていた。
そうなると色々教えたくなるのが先生というもの。
親である後藤さんは父親の居ない片親かつ探索者でクランのリーダーをこなす多忙な人なので、二人の教育まで手が回らないだろうと先生方で手が空いている先生(特に園長先生)が二人に色々教えている。
これはもしかしたら幼稚園を卒業する頃には小学校中学年くらいまでの勉強を覚えてしまうのではないか?
と私は思うのだった。
「ねぇ長門、イブキ曰く、僕ら神様と同じらしいよね? 長門はダンジョンを創る力があるけど、僕はなんだろうね?」
「さあ? でも何かしらの神様なんじゃない?」
「何なんだろう? イブキは縁結びって言うけど縁って色々あるよね?」
「人に好意を持たれやすいとかじゃないの?」
「あー、そういう感じなのかな? うーんわからないな」
「それよりも私は早く意識して物質を創れるようになりたいなー」
「秋津鉄と朱餅鉄を産出するダンジョンだっけ?」
「うん、イブキ達の手伝いをしたいんだ」
「わかる! 僕も早く大きくなってイブキと同じ探索者になるんだ!」
「ねぇ、イブキに頼んで魔法を教えてもらわない?」
「あ、それ良いね! 魔導書? をイブキは作れるから教えてもらおうよ!」
二人はイブキに魔法を教わりに行くのだった。
「そうだね···人を傷付けない魔法だったら良いよ」
私は子供達が頼んできたので魔法を教えることにしたが、魔法の種類は指定した。
攻撃魔法は教える気はない。
なので万能防御魔法、水を出す魔法、『ライト』の三種類を教えることにした。
魔法理論を理解していたことと、魔導書を読み聞かせて意味を理解させたら、あっという間にできるようになり、もっともっとと言われたので、土を粘土にする魔法を教えた。
それだけでは納得できなかったのか、月精にゴーレムの魔法を教えてと言って教わっている。
月精もダメ元で教えたらしいが、適性があり、二人共覚えることができ、月精と一緒にカッコいいロボットゴーレムを作る遊びにハマるのだった。
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