池田と三葉

「ホエールズの皆こんにちは〜」


「おお、池田! それに今日は彼女連れか?」


「三葉です。今日は見学の許可をいただきありがとうございます!」


 年度が変わり一月となった頃、【サザン海】で鯨モンスターの捕鯨をしているクランのホエールズと僕らのガイアクランが業務提携を結び、交友のあった僕が連絡役として彼らの捕鯨を手伝いながら話していた。


「彼女さん、池田は本当にできた男だよ! 見た目は女だが、しっかりもんで、責任感も強いからな!」


「んだんだ! 池田は鯨の潮吹きを見つけるのが上手いし、発信機の取り付けもしてくれるからな! ドローンとかだとなかなかうまくいかねーんだわ」


 ホエールズの人数は七十人の男共で構成されており、まずは各自がドローンで海上を偵察したり、ソナーで海中の様子を確認したりする。


 ただソナータイプは海中のモンスターを刺激して攻撃されて壊される為、ドローンで見つけた後に追跡を振り切られた時に使ったりするくらいでメインではない。


 次に鯨モンスターを見つけたらモーターボート(水雷艇)で鯨モンスターに近づく。


 そして麻痺の状態異常を起こす魚雷を撃ち込む。


 魚雷が命中すれば鯨モンスターは二から三時間海面に浮いて動かなくなるので、別働隊が海面を凍らせて足場を作り、鯨にトドメを刺す。


 メンバーの中にはイブキの魔法理論を覚え、水中を高速で移動する魔法と『ノッキング』の魔法で魚雷を使わなくても気絶させることができる人もいるらしい。


 そこから鯨の体に浮遊石という重力に反発して浮かぶマジックアイテムを取り付け、海面から浮かせて、風船を運ぶ要領で小型船にワイヤーを取り付けて鯨を運ぶ。


 流石にでか過ぎるので、入口付近で下請けの解体業者を交えて、ある程度の大きさに解体し、外の加工工場へと運ばれる。


 一頭当たり平均十五億で、下請けの取り分や諸経費を除いてもクランに十億近く残り、そこから給料が出るのだとか。


 今の僕が話しているおっちゃん達はダンジョン船舶免許と大型兵器取り扱い免許(魚雷)というダンジョン内で使える特殊免許を保持しているので、月給百万円に、一頭捕鯨する毎に追加で百万円のボーナスが貰えるのだとか。


 僕の場合は見つけて探知機を取り付けることで協力金を五百万も貰っているが、見つけることができないと何も始まらないため、これでも安いと言われた。


「よう池田! 今日も頼むぜ!」


「キャプテン今日もよろしくお願いします」


 ホエールズのクランリーダーの佐田さん···愛称はキャプテンで、ウエットスーツ型の戦闘服に身を包んでいる。


「池田、これから発見したら探知機の設置だけでなく『ノッキング』もしてくれるらしいが良いのか」


「ええ、皆さんにはお世話になってますし、業務提携した以上、できる事は全てやらせてもらいますよ」


「おう! 助かるぜ、嬢ちゃんはうちの若いのに魔法理論を教えてくれるってことで良いか?」


 話を振られた三葉が頷く。


「はい、私も未熟者ですが、うちのリーダーに教えても大丈夫と言われたので」


「そりゃ頼もしいぜ! じゃぁ池田さっそく頼む」


「はいはーい!」


 探知機を持って僕は飛び立つ。


『サーチ』の魔法を使いながら探すこと十数分···一際大きな反応がしたので狙いをつけて上空から反応が上がってくるのを飛びながら待つ。


 すると浮き上がってきて潮を吹いた。


 僕は直ぐに降りて、『ノッキング』の魔法を最大出力でぶちこみ、探知機の電源を入れる。


 すると十分もしないでホエールズの皆が集まり、手際よく浮遊石を取り付け、締め作業を行い、運んでいく。


 入口付近まで運ぶと、解体業者が待っており、ホエールズのメンバーと共に解体していく。


 巨大な槍の様な包丁を使い頭と胴体を切断し、ある程度の大きさでどんどん外に運ばれていく。


 僕と三葉は一旦ダンジョンの外に出て加工工場の方にお邪魔して鯨モンスターの肉の加工を見学する。


 ベルトコンベアで流れてきた肉塊から骨と肉を分離させ、部位ごとに分けていっているみたいだ。


 骨も骨粉として利用できるため、綺麗に洗浄してから粉砕機で粉砕されて粉になったのを袋詰されていた。


 可食部はある程度のブロックにされて冷凍保存されていた。


 一部はそのまま缶詰に加工されて中部地方各地のスーパーに送られ、冷凍された肉類も各地に送られていく。


 鯨一頭の完全解体はその巨体により慣れた人達が数百名いても三から五時間近くかかる。


 今日の鯨は特に大きかったのか、トラブルが特に起こってないにも関わらず五時間以上かかっていた。


 僕達は一度体と装具を洗うためマンションに戻って入浴し、私服に着替えてからホエールズのメンバーを近くのカフェで待った。


 解体が終わったホエールズの面々がダンジョンから出てきて、近くの銭湯で体を洗ったと連絡があり、僕らが向かうとまず協力金を渡された。


「それと肉の方も今月は五百キロ分クランの方に送らせてもらったぜ。嬢ちゃんも今後よろしくな」


「はい! 真が行けない日も教えに行きますね」


 そのままホエールズのメンバーは酒宴をすると言い、僕らも誘われ、そのまま参加した。


 今日の捕鯨した鯨モンスターの大きさは二百五十トンだったらしく、特大サイズでたんまり稼いだので明日と明後日は休みとキャプテンが号令し、男共の酒宴が始まる。


 二日酔いを気にしないで飲める為か皆凄まじい勢いで飲んでいく。


 僕は明日クラン方でダンジョンに潜るのでと早めに切り上げて、三葉と一緒に家に帰った。


 時刻を見るとまだ十八時、少し酔っているがまだ寝るには早いと何か食べようと台所に行こうとしたら、三葉が私が作りますと言って僕を制止した。


 三十分後にテーブルには鯨料理がズラリと並び、鯨の竜田揚げ、鯨のしゃぶしゃぶ、鯨ベーコン入りのチャーハンとどれも美味しそうである。


「今日はこれも飲みません?」


 と言われ出されたのは赤いドロっとした液体で、コップに半分注ぎ、それを生姜湯で割った。


「これなんの血?」


「ドラゴンの生き血で活力がみなぎるらしいですよ」


「へぇ~、じゃぁ乾杯!」


「乾杯!」


 特に気にすることなく食事を始め、料理を食べていったが、食べていくうちに酔が覚めて体がポカポカ熱くなってくる。


 食事がドンドン進み、しゃぶしゃぶの残り汁で温玉うどんを締めに食べた。


 ふと三葉を見るといつも綺麗だと思っていたが、今日は色っぽく見える。


「三葉!」


「きゃ!」


 そのままベッドに三葉を押し倒して行為に移ってしまうのだった。


 ちなみにドラゴンの生き血にはEDを絶倫にすると言うくらい凄まじい滋養強壮作用があり、それを生姜湯でブーストしたらこうなる。









「後藤さん、やりました!」


「おお! 作戦通りだった?」


「はい!」


 実は三葉はイブキに池田と子供を作りたいと相談しており、早めに手を打たないと実家が介入してくることを言い、ならばとイブキはドラゴンの生き血入りの一升瓶をプレゼントした。


「男女共に性欲が高まるし、女性は排卵しやすくなるらしいからね。ただちゃんと何かで割った?」


「はい、生姜湯で割りました」


「ナイス!」


 三葉は大学を実家の都合で退学させられて好きだった先輩と離れてしまった経験から次に好きになった人が出来たら早めに行動すると決めていたので今回の行動となった。


 一方池田の方もイブキにヤッちゃえよと押されており、三葉の実家の方もイブキは一言連絡を入れていた。


 三葉の実家の方は跡継ぎはしっかり居るし、政略の都合で振り回してしまったので結婚やその子供達に関しては三葉家は関与しないと言質を取ったため、イブキはイケイケモードで二人をくっつけた。


 まぁ三葉が事務員なので産休期間も短くて済むし、毎年孕んでも四ヶ月程度働いてくれれば御の字なので別に気にしていなかった。


「政略ができる人材って言ってるけど実態は政略の駒であって、彼女達が効力を発揮するのは彼女達の実家ありき、実家を使えるのであれば令嬢三人組は祝福(子供を作ること)させたほうが後々の利益になるかな」


 そういうイブキのゲスの考えもあったとか···


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