成長著しい大和と長門
来年から大和と長門は幼稚園に入園するため、その準備として日常生活や幼稚園に入園してから必要な事を私が教えていく。
と意気込んだのは良いが···
「イブキ! 箸で大豆を掴むの楽しいね!」
「イブキ、大和ね、腕立て伏せ百回数えながらできたよ! 次は二百まで数えながらやってみるね!」
「イブキ、長門ね漢字書けるようになったよ! 見て! 『岐阜県、後藤長門、後藤大和、日本』! 凄いでしょ!」
「イブキ、大和ね、イブキが居ない間にこの本よみおわったよ! 学習漫画シリーズもっと読みたいから今度買ってよ!」
と言ってきたり、ある時は託児所から抜け出してマンションの公園で小学生達と遊んでいたりすることがあった。
託児所の人からはものすごく謝られたが、私は二人が託児所よりも近所の小学生達と遊ぶのが楽しいとわかると、育休中の椎名華澄や佐藤と佐倉、休み中のクランメンバーに私がダンジョンに潜る日は預け、昼頃からは小学生達に混じってマンションの公園だったり、近所の大きい運動公園(交通公園も兼ねている)で遊びまくるようになった。
まだ二歳だが体の大きさは既に小学生低学年くらいあるし、見た目も可愛い為、近所の小学生だけでなく中学生や高校生、大学生からも人気がある。
私が魔法理論の講師をマンションでしているので、その子供ということを近所の人達は知っているし、天使の容姿が目立つので二人は近所の人気者になっていた。
必ず誰かが見張っているし、地域のボランティアの人や老人会の人達も子供達の様子を見ているので今のところ大きな問題は起こっていない。
まぁ大和と長門がもし誘拐とかをされそうになっても、いつの間にか覚えたショックの魔法で気絶させるし、レベルが十五もあるので探索者以外だと普通に大怪我をする可能性がある。
私は力の使い方については重点的に教えているが、子供同士で喧嘩になったりしたときに相手を怪我させないかヒヤヒヤしている。
まぁそんな感じで今大和と長門はクランでもアイドルだし、地域の人達からもアイドルの様な扱いを受けていた。
大和と長門に試しに魔法理論を教えたところ、直ぐにコツを掴んで一週間も経たずに六基を習得した。
で、本人達に何か覚えるのに意識したことはあるか聞いたら、お腹に居た時に知らないお姉さんがずっと現れて魔法の話を教えてくれたと言っていたので、多分辻聖子ことマーちゃんの精神魔法を受けていたのを二人もうろ覚えながら覚えていたらしい。
なので食事が子供茶碗から大人が使う丼ぶりに買い替え、毎日大量に食事を取るようになった。
産まれた時から大きかったが、魔法理論を習得したのが今年の五月で、今は十月中頃、約五ヶ月の間に食べた栄養を身体の成長に回しているのか更にグングン背が伸びている。
というか大和と長門はまだ二歳中盤、一次成長期真っ只中の為、過剰な栄養は丈夫な身体を作るのに使われ、既に百十センチ近く成長していたし、普通の子ならまだプニプニした肉付きなのに、大和と長門は腹筋が既に薄っすら割れており、腕や足に筋肉が付いていた。
ちなみに本当になんでも食べるしなんでもやる。
秋になってからは特に顕著で、一人でお風呂に入りたいって言い出しで、風呂を私の真似をして掃除をしてから入っていたり、文字を覚えたいと最上階のラウンジの棚に並べられている本を読んでみたり、遊んでいる小学生の子が使い終わった国語や算数のドリルを貰ってきてやってみたりと二歳児とは思えない成長をしていた。
私はこれが神の種族スペックなのか、マーちゃんの精神魔法の影響で早熟になっているのか、そもそも二人がそれらとは関係無しに優れているだけなのかはわからないが、親としては教えたら教えただけ響いてくれるので育児がとても面白く感じた。
ある日、探索者協会に協力してもらい、大和と長門の能力をテストすることとなった。
理由は二人は産まれた時から十五もレベルがあり、それによる影響を確認するためだ。
まだ自己がしっかりしていないので適性職業みたいなのはわからないし、運動テストも酷なので、魔法の適性テストと耐性のテストだけを受けさせた。
結果がこれだ。
【後藤大和】
·レベル十五
·適性魔法
火◎
水◎
風◎
雷◎
土◎
光◎
雪○
草○
·耐性 火◎水◎風◎雷◎土◎雪◎草◎闇△光◎
毒◎火傷◎眠り◎麻痺◎呪い◎石化◎魅了◎
【後藤長門】
·レベル十五
·適性魔法
水◎
雪◎
草◎
闇◎
光◎
風○
土○
火△
雷△
·耐性 火○水◎風◎雷○土◎雪◎草◎闇◎光◎
毒◎火傷◎眠り◎麻痺◎呪い◎石化◎魅了◎
検査結果がわかると直ぐに支部長の松田努に呼び出され、二人の魔法への適性の広さと耐性の高さを言われた。
「この子達は可能性に満ちているな」
「そうですね」
二人は支部内の託児所で久しぶりに遊んでもらい、私は支部長と話す。
「大和君が八属性に高い適性があり、長門ちゃんは全ての属性に適性がある。彼らが魔法を本気で開発したら幾つ新しい魔法が生まれるかわからんな」
「確かに、そうですね。既に魔法理論は習得済みですので二人が我が師である辻聖子を超える賢者になれるかもとも思っています」
「一般的には五属性以上の魔法適性があれば賢者と言われるのだがな」
「いやいや、本物の賢者は魔法使いとは別次元に居ますのでね」
大和と長門の話をし、そのままクラン運営の話に移る。
「秋にも新規で十人前後の人数を採用すると孫達から聞いているが?」
「ええ、混血五名、事務員予定が六名の十一名が加入予定です」
「なるほど。そうなると総人数は四十七人、だいぶ大きくなってきたな」
「こっちはやや赤字で運営に苦労していますがね」
「配信業を加算すれば黒字じゃないのか?」
「まぁそうなりますが、メインは探索者なのでね···松田支部長は我がクランの三軍構想はご存知で?」
「ああ、それも知っている。良いんじゃないか? ただ後藤君が育成に回るとは思わなかったがな」
「固有能力でそれが適材適所って奴です。ここからは育てる事に重点を置いていきますよ」
「そういえばガイアクランに業務提携を依頼しているクランがあるが」
「物好きが居たものですね」
「いや、捕鯨のクランでお世話になっているから互いにクランの交流を更に深めたいらしいが」
「ええ、それは勿論。あちらも私が『サーチ』の魔法を教えれば捕鯨の頭数が増えるでしょうし、より有用な魔法を開発することもできますからね」
「それではガイアの方に利益が少ないのでは?」
「まぁガイアクランには利益が少ないかもしれませんが、お裾分けで鯨のモンスターの肉でも多く貰えれば食費が浮きますのでね」
「それで良いのか?」
「それくらいの関係の方が親しみやすいでしょ?」
「確かに···そうだな」
支部長から大和と長門も保護対象に加えることも伝えられ、大きくなったら、支部から大和と長門の護衛を派遣するとも言われるのだった。
十一月になり、明聖社が各地からスカウトした混血の人員がクランに加入した。
社宅用にもう一棟小型マンションを購入し、彼らを受け入れる。
三軍構想も始動し、新規加入の十一名は私のチームに入れて、岐阜県探索者高等学校から昨年十一月に加入したドラゴン娘の龍宮竜華と人狼の西園狼樹の二人を私のサブ教官に指名した。
二人は強力な混血であるが、優しい臆病者なので根本的に危険度の高いダンジョンで戦うことに強いストレスを感じるため、自身の命の危険が少なく、安定して戦える下級及び中級ダンジョン上層部にてダンジョンアタックをしたいとアンケートに書いていたので、性格と能力を考慮して私の直の部下とした。
で、カリキュラムとしては県外からスカウトの混血組は能力が高いので最初から魔法理論の六基習得からスタートしてもらい、その間に探索者未経験もしくはレベルが低い奴を下級ダンジョンを巡ってレベリングをする。
三ヶ月である程度形にして、入れ替えさせスカウト組は中級ダンジョンでレベリング、他の六人は魔法理論を覚えてもらう。
で、四月の新規加入前までにスカウト組は上級下位までレベルを上げて二軍に配置転換し、残りの六名はそのまま事務職へと移動となる。
十一月加入の中途採用はこんな感じの育成カリキュラムとなるのだった。
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