人員の追加 二
「シーキング·ロドリゲスっす! よろしくっす!」
「はい、よろしくねロドリゲス君」
黒人型で母親は各国の国際開放されているダンジョンをアタックするチームの一員で、ベヒモスに二週間以上囚われていたが、隙を見て脱出した剛の者で、まだ混血の当たりが弱い日本で混血の子供を産んで、探索者協会と協議をし、引き取られた経緯がある。
「マザーとは連絡は取るんだが、国外での混血の扱いを聞くと、とてもマザーのチームで活動したいとは言えなくてな。日本に立ち寄った時には顔を合わす事はするっすが」
「そんなに国外だと扱い酷いの?」
「ヤバいっすよ、混血に人権を認めてる国の方が少ないっすからね。アメリカはオークの混血だけど成り上がり国民的ヒーローになったムーキー·フォードが居るっすが、それでも風当たりは強く、多神教でモンスターへの考え方が特殊な日本、優秀かつ、自国の利益になるなら受け入れてくれる中国は比較的差別が少ないっすが、欧州だと私刑が普通にあるし、中東の一部地域だと普通に殺されるっすからね。アフリカも似たりよったりっす」
結構日本でも差別が酷いと思うが海外だともっとなんだな。
「でも俺達混血をチームに加入させるのって利点あるんすか?」
「子供が特殊だから受け入れられる場所としてクランを作ろうとしているからね」
「あー、動画見ていますが天使病の大和君と長門ちゃんすか?」
「そそ、でも君達も地位が向上するなら良いでしょ?」
「そりゃそうっすね。ただ国籍は日本っすけど、外国人の俺とドナルドはどうなんすか?」
「問題なし。同じ苦労···いや、君達の場合より苦労していると思うけど、苦労を共有できる人が身近にいたほうがやりやすいでしょ?」
「そりゃそうっすね」
「まぁよほどじゃなければ今回の五名は採用するつもりだから安心して。あ、ロドリゲスの戦闘スタイルを教えてくれないかな」
ロドリゲスはハルバード使いであり、ベヒモス由来の超パワーとタフさで重戦車の様な戦いを好むらしい。
また長時間重い荷物を運べる持久力もあるため、長期間ダンジョンに潜る必要がある上級ダンジョンで荷物を運ぶのに適任だろう。
「俺の鼻は第三の腕として使う事ができるので、ハルバードを鼻で持ち、両腕で盾を持つ事もできるっす」
とタンク性能がずば抜けていた。
「期待しているよ。よろしくね」
「うっす! よろしくっす!」
最後にシーブの月精光と面接する。
彼女は緑色の長い髪を一旦髪飾りで折ってそれを束ねてポニーテール風にしているが、折り返してなおポニーテール部分が腰近くまで伸びており、毛量がヤバい。
「月精光(げっせい ひかり)です。シーブという精霊の最上位種で女神と呼ばれるモンスターに近い肉体をしています」
「髪の長さ凄いね。何メートルあるの?」
「四メートル近くあります。何度も散髪したんですが、すぐに伸びるので開き直って髪を伸ばしたらこうなりました。ちなみにこれベリーショートから伸ばして一年しか経ってないんですよ」
「そりゃ凄い」
シーブは神に近い精霊というイギリス由来の伝承から当てられたモンスターで、彼女の母親もシーブだったらしい。
で、彼女の場合はダンジョンではなく母親が捕獲され、裏のマーケットに流れ、無力化され、愛玩動物として繁殖を闇のディーラーにされ、それがたまたま日本の警察に摘発された時の商品だったのが月精らしい。
なので彼女も他の二人と同じ様にモンスターの血が色濃く、緑色の魔石が首の後ろに有るのだとか。
普段は髪の毛で見えないらしいが、髪をかき上げて見せてもらうとエメラルド色の宝石の様な魔石が輝いていた。
「生まれはそんな感じで、幼少期は人間イコール敵として認識していたので暴れまくって、三年ほど特殊な施設に監禁されてました。そこから勉強して、中学から混血のクラスに編入し、高校で探索者のイロハを習い、四年ほど活動をして今に至ります」
「凄い人生だね」
「いや、イブキさんも天使病になってからは凄い人生だと思いますが···」
「まぁすごいかもしれないけどさぁ···」
彼女は後衛でシーブ由来の風の魔法と本人の資質で土魔法を得意とし、日本でも五十人も使えないゴーレムの製造及び操作ができるスペシャリストということが判明した。
「機械いじりが好きで、ロボット工学をゴーレムに反映させたら半自動で動くゴーレムを製造することができるようになりまして···なので私の戦闘スタイルはゴーレムを多数召喚して物量で敵を倒すって戦法です。それ故に格上には正直滅法弱いです」
と弱点も含めて教えてくれた。
シーブは精霊を操る女王という意味もあるので、精霊ではなくゴーレムだが群れを操るというのはシーブの特性と合致する。
趣味は機械いじりで、高等学校の時にロボコンに出場したほどのメカヲタでもあるらしく、夢はゴーレムをメカ風にして全長十五メートルの巨大ゴーレムでドラゴンを倒すことらしい。
「それは凄い夢だね」
「前に別のクランに拾われていたんですけどロマンを理解してもらえなくて辞めました。違約金で素寒貧なのでお願いです拾ってください」
「ちなみに前のクランって明聖との提携クラン?」
「いえ、ライバル他社です。だから明聖にヘッドハンティングされて明聖が違約金を肩代わりしてくれたんですけど、明聖社に対して五億円の負債があるので」
「なるほど···逆にそれだけあなたに価値があるってことは理解できたわ。借金は明聖社と協議して無理のないペースで支払っていこう」
「は、はい!」
こうして面接が終わる。
「はい、全員採用です。で、マンション側や岐阜県探索者協会と協議して、一人部屋を幾つか借りれるんですけど一人部屋希望の人はいますか?」
「できれば私は一人部屋が良いです」
「私も···」
山姫と月精が手を挙げる。
『スカーレットは男共と一緒の部屋を希望します。ゲヘヘと下心丸出しで交渉します』
「はい、スカーレットは個室で隔離です」
『良いんですか? 私を一人にしてと脅してみます』
「本当いい性格してるなお前···ドナルドとロドリゲスどっちが良い?」
「ちょ! ボス!?」
「俺達を売らないでくれません」
『彼らと同じ部屋であれば問題ありません』
「じゃ、三人は同じ部屋でお願いね。何か起こったらすぐに連絡して。その時はこのポンコツを隔離するから」
『ポンコツではなくスカーレットだと怒りを示します』
「じゃぁ初っ端から酷すぎる言動をなんとかしろよ」
「イブキ、私がこいつの監視はします」
「良いの東横」
「スペックは良いのできっちり教育をしておきます」
『そんな〜! と落胆を示します』
ちなみにその姿を見て他の女性二人はスカーレットにドン引きしていた。
自身が苦労しているのに子供にまで苦労を背負わせるのかと···
スカーレット自身は子孫を繋げるのが人の役目と思っているので考え方の違いだろう。
両者の言い分がわかるだけに私も下手にどちらも養護できない。
とりあえず部屋割は東横とスカーレット、ドナルドとロドリゲスの二人部屋と山姫と月精は各自一人部屋と決まった。
ちなみに全員が覚悟ガンギマリで、荷物はキャリーケースのみ、家とかは既に解約していたと背水の陣で挑んでいたことをしり、私は少し引くのだった。
マンションでは他のメンバーが私の部屋で料理の準備を進めており、椎名の実家から送られてきたリトル鹿牛の肉を使ったステーキをメインに、グラタンや鯨の竜田揚げ、ポテトサラダと牛スジのスープが並ぶ。
「さぁこれで人員の追加はクラン成立まで終わり! 新加入した九人に元のメンバーの八人の十七人がクラン立ち上げまでチームとして活動します! 大所帯ですのでチームを二つに分けることもあると思います。休養日の調整もします。そして来月から(椎名)華澄だけでなく佐倉と佐藤も産休に入りますが、今回の加入を起爆剤にチームを盛り上げていきましょう! 乾杯!」
「「「乾杯!」」」
こうしてチームとしてのガイアは最終形態となったのだった。
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