チームガイア

 岐阜県高等学校卒業の第一次追加メンバーと県外出身かつ、明聖社からスカウトされた第二次追加メンバーを交えて初めてのダンジョンアタック。


 第二次追加メンバーは最低でも三年ほどソロでダンジョンアタックをしている面子であり、レベルも上級下位はある。


 一方、第一次追加メンバーは四十レベル台であり、レベルに差がある。


 その為か、デビュー戦となった【関ヶ原】ダンジョンでは第二次追加メンバーが自分達が戦力になることをアピールしようと張り切って戦った。


 まずゴーレム使いかつシーブの月精が五十体近くの土でできたゴーレムと石の剣を生成して、足軽の集団に突っ込ませる。


 足軽達が槍を突き刺すが体が欠けてもすぐに復元して、ゾンビ戦法で倒していく。


 足軽の数も二百体はいたが、ゴーレム達の連携···というより月精の精密なプログラムにより十分も経たずに殲滅した。


 続いてスカーレットが鎧武者の集団に突っ込み、片手にハンマー、片手に盾を持ち、次々に鎧武者を破壊していく。


 途中足軽に囲まれ、槍を突き立てられる場面があったが、高レベルオートマターの機械の体は槍では傷付かずに、槍の方が折れてしまう有り様。


 目から熱線のビームを放ったりもして無力化していき、十分で四十体の鎧武者と足軽を倒していた。


 ロドリゲスは山姫とコンビを組み、ハルバード使いのロドリゲスと金棒で応戦する山姫の重戦車コンビは自慢の怪力で鎧武者が太刀でガードしたりするも、その太刀ごと叩き折り、鎧を粉砕していく。


 常に退路を確保した戦い方で戦闘経験の豊富さと即席コンビでの適応力の高さを物語っていた。


 ただ一番はフェニックスのドナルドで、飛び上がり、炎の翼を広げ、飛び回ると徐々に炎の渦が発生し、火災旋風となり戦場を横断。炎に熱せられた鎧武者や足軽達は次々に無力化され、ものの五分で数百体の鎧武者や足軽だった焦げた武具が転がっていた。


 これには第一次加入のメンバーも負けてられないと張り切る。


 ただ先輩探索者である彼らはそんな新人達に的確にアドバイスを贈る。


「(池田)真でしたね! 空で戦う時に空中で停止するのは良くないヨー! 滑空でも旋回でも良いから動かないと魔法攻撃ができるモンスターや弓を使うモンスターが居た場合的になるゾ!」


「はい! ドナルドさん!」


「OK! 聞き分けが良くてグッドですよ!」


 ドナルドと池田のコンビや


「南波君、もっと下半身に力を入れないとモンスターの攻撃に押し負けるっすよ! せっかくオーク由来のパワーがあるっすから皆のダメージを全部受けるくらいのイメージで戦わないといけないっすよ!」


「うっす! 参考になります!」


 ロドリゲスと南波コンビも同性同士ということもあり直ぐに打ち解けていた。


『月精さんのゴーレムは素晴らしい造りだとオートマターの私も称賛を贈ります』


「凄いです! ゴーレムの魔法私も覚えたいです」


「スカーレットさんありがとうね。えっと小風ちゃん、それは素質で決まるから頑張るしかないけど、プログラミングは教えようか? 何かの参考になるかもしれないし」


「はい!」


 と小風とスカーレット、月精が話していたり


「内藤さんの双剣の扱いは見事だね」


「ただ剣術をしながらの魔法行使が苦手なんですよね」


「私で良ければコツを教えようか」


「是非お願いします」


 と内藤と山姫も仲良くなっていた。


 ロドリゲスと南波コンビのところに萩原と松田の前衛コンビも話に参加したり、剣術を扱う椎名洋介が内藤と山姫の会話に参加したりする。


 互いに意見を言い合い、連携の確認から技術の教え合い、癖の修正等探索者として有益な情報を交換しながら仲良くなっていく。


 私は飛行組の話に参加して、ドナルドの飛行論を真剣に聞き、東横は妊婦組が無理をしていないか気遣うのだった。







 広範囲を高火力で殲滅できる人材が参加したことと、ゴーレムを操り、魔石の回収をスムーズに行うことができたため、大量の魔石に、マジックアイテムの鎧や刀、槍が集まった。


 換金総額は約三千万にもなる。


 チームの間は平等に分配すると決めているが、人数が増えたことでチームの運用費用も嵩むため、今まで一人分のお金だったが、総額の一割を先にチーム運用費用として徴収することが話し合いで決まった。


 なので今回は約二千七百万を十六人で分割する。


 一人当たり百六十八万が今回の儲けとなる。


「僕達からしたら大金ですけど、僕達が参加する前のイブキさん達のチームガイアやロドリゲスさん達がソロで稼ぐ金額に比べるとどうですか?」


 と池田が私達に質問する。


 私は池田の問に


「うーん、同じくらいかな」


 と答え、ロドリゲスは


「額だけで見たら下がってるっすよ。でも金じゃないんすわ」


 と話す。


「金じゃない?」


「チームやクランに入って収入が上がるのは結構稀な例っすよ。ただチームやクランに入ると社会的な信用が高まるっす。賃貸の契約、ローンを組む、融資を受ける···そういう社会的な信用が上がると色々な利点があるっす! 俗に言う金で買えない物っすね」


『補足をします。クランに入る利点は社会的な信用だけでなく安全の保障であるとスカーレットは考えています。中級ダンジョンでソロ活動ができていても、上級ダンジョンは別世界。今回は中級ダンジョンなので皆さんからしたら収益がそこまで上がらない、もしくは下がったと思われますが、上級ダンジョンでもしドラゴンを一頭倒して換金したと仮定します』


『ドラゴンは小型でも一億、大型や特殊なドラゴンは十億、二十億と額が跳ね上がり、ドラゴンを討伐する専門のクランは一体倒すのに十名は投入します。上手く討伐できたとして約一千万の報酬を得れたとしますが、それは少ないと思いますか? とスカーレットは問いかけます』


「いや、一人で挑んだら死ぬ確率が高いのがドラゴン···そう考えると報酬は適正価格か?」


『上級上位の探索者でも一回のダンジョンアタックで一人当たり億を超える報酬を得れるのは極稀。一千万をコンスタントに稼ぐのが本当の上級探索者と言えるとスカーレットは考えています。そのコンスタントに稼ぐためには仲間が必要になるのです』


『スカーレット達混血がイブキさんのチームに飛びついたのは将来的に参加していれば大きな利益を長期に渡り得られることと、混血を集めることでチーム内の混血の地位を相対的に上げて、スカーレット達の居心地の良い場所を提供してくれるから。金だけではないというのはそういう事を意味しますとスカーレットは人生の後輩達に教鞭をとってみたり』


 これに池田は


「いや、正直僕達が入ったせいで収入が減ってしまっていたり、戦力として未熟なのにこれだけ報酬を貰ってよいのかって考えてしまっていて···」


「気にしなくて良いのに」


 私は池田にそうツッコむ。


「誰だって最初から即戦力とはならないんだから、高卒組は徐々に慣れていけば良いよ」


「あれ? 県外組は?」


「馬車馬の如く働いてもらうよ!」


「酷い! 差別だ!」


「嘘、冗談だよ」


 ゲラゲラと皆で笑うのだった。








 私がこの体になって二年が経過し、三年目に突入した。


 一年目は勿論、二年目もだいぶ濃い一年だったと思う。


 今年の目標はクランの開設と全体的なレベルアップの年になるだろう。


 基盤が整うまでは上級ダンジョンに挑む予定も無いし、椎名華澄とか佐倉、佐藤の出産もある。


 それにマンションもクランの人員全員を住まわせるとなると部屋が足りない為、どこかの機会で建てるか買うかしないといけない。


 配信業でも混血の女性陣をデビューさせて少しでも混血のイメージを向上させる必要もあるし、人数分の機材調達もしなければならない。


「かぁ、やることがいっぱいだぁ!」


 私はノートにやることをメモしながら今年はどこまで成長できるか考えるのだった。

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