小風凛とのダンジョンアタック
新人達も二週間もすればある程度順応してくる。
【関ヶ原】ダンジョンの一層で前衛の松田、萩原、南波、内藤の四人が交代で向かってくる足軽や鎧武者を足止めし、残りが魔法で迎撃するパターンが定着化しつつある。
時折気分転換に【サザン海】ダンジョンに行って釣りをしたり、エビやカニと戦ったりする。
【サザン海】では池田が大活躍であり、単独で遠くまで長時間飛べる彼はクジラのいる場所を見つけ、探知機を取り付けるという事を一日に三頭も行い、うち二頭が討伐されたため協力金をたんまり貰うことができた。
モンスターとしてのクジラの為、鯨の保護団体も煩くなく、しかも可食部が多いし、肉質が部位によって牛肉や馬肉に近い。
内臓系もまた違った味わいだし、骨は骨粉等の肥料に、油は武器等の潤滑剤として利用されたり、マジックアイテムのランプの燃料としても使われる。
そんな鯨のモンスターはシロナガスクジラサイズあり、重さは百八十から二百トンもある。
大きさにもよるが一頭十五億近くで取引され、捕鯨専用のクランがあるくらいだ。
捕鯨方法はクランの秘密なのでわからないが、何らかの方法で鯨のモンスターを捕獲し、外に持ち出して解体しているのだろう。
池田は協力金として一頭五百万もの金額を貰っていたので二頭で一千万、後日発信機を取り付けたもう一頭も捕獲されれば更に五百万入ってくる。
流石に池田単独で稼いだため、そのお金を分割してとは言えるハズも無く、池田は凄いウハウハしていた。
そうでないメンバーも釣りをして堅実に稼いだり、カニやエビを倒したりして稼ぐのであった。
せっかくなのでカニを換金後に買い戻してカニ鍋やカニコロッケ、カニしゃぶしゃぶ、カニのアラ汁、カニ味噌を絡めたパスタ等のカニ尽くしの料理をモンスター調理師免許を持つ小風と佐藤にマンションで作ってもらった。
「高級なカニに負けてないね」
私の言葉に皆頷く。
「カニはカニでも三メートルもあるんですけどね」
松田がそう言う。
「モンスターってどうしてこうも美味しいのが多いんだろうね」
佐倉の質問に東横が答える。
「魔力が肉質を柔らかくしたり、雑味を取ったりしているって研究結果があるね。魔石を砕いて肥料にした果実の糖度が大幅に上がったってのも聞いたことがあるし」
「なるほどねぇ」
流石東横は探索者協会の幹部教育を受けただけあり、モンスターの活用方法や素材による経済効果等も頭に入っているらしい。
「ダンジョンのお陰で日本の食料自給率は八十五パーセントまで押し上げていますからね···お隣の中国とかは更にモンスターの料理の研究が進んでいるとか···ね」
池田が東横に質問する。
「でもこれだけ海産物がダンジョンで捕れるって事は普通の漁師とか打撃を受けたんじゃないんですか?」
「大いに打撃を受けた。特に家畜業と養殖業が大打撃を受けたが、モンスターの材料を使った餌のコストダウンに成功した所と国から大規模な補助金が当てられて生き残った感じ」
「一次産業系はキツイですね」
「まぁどこかにしわ寄せが行くのは仕方がないよね。いくら昔より金の回りが早いとはいえ、金も限りがあるからね」
その後東横のダンジョンによる経済雑学を聞きながらカニ料理を楽しむのだった。
「よし、小風ナイスアシスト!」
「はい!」
私と小風は皆が休日の日にオークが大量に出る下級ダンジョンに挑んでいた。
私が前衛を、小風が後衛で弓で攻撃していく。
小風の弓は明聖製のコンパウンドボウでスポンサー価格で五十万の品を購入したらしい。
矢は複数種類があり、矢じりの形が尖っている物と平べったいのと矢じりが無い物がある。
尖っているのは貫通力重視、平べったいのは傷つけるのが目的、矢じりが無いのは突き刺さった時に出血を強要させるのが目的である。
矢じりが無いとはいっても先端は金属でできているので突き刺さった時に折れるというのはオーク等の生命モンスターならあまりない。
更に痺れ薬を先端に塗って弓を放つので、オーク達は次々に無力化されていった。
「流石高校できっちり基礎を固めただけあるね! 技が熟練のそれだ」
「イブキさんもオークを拳で一撃で仕留めているじゃないですか」
「まぁレベルが上がっているからね」
倒したオークをリヤカーに乗せていく。
私の翼にも複数体巻き付けて二十体のオークを運んでいるが、残りは魔石のみの回収になるだろう。
「イブキさん達のチームに加入してからレベルがもう二上がったんですけど、それだけ経験値効率が良いってことですか?」
「う~んと経験値効率もそうだけど、天使病の人って何かしらの固有能力を持っているんだよね」
「はぁ···?」
「ピンときていないみたいだね。私の固有能力は才能の付与。レベルアップの必要経験値を大幅に引き下げる能力だよ」
「めちゃくちゃ有益な能力じゃないですか!?」
「うん、だからチーム内の人にしか言っちゃ駄目だよ。あとこの固有能力は私には適用されないんだよね」
「え?」
「私自身は必要経験値の引き下げが行われていないからレベルアップが皆んなより遅いの。だからこうして休日にダンジョンに潜って経験値を稼いでいるわけ」
「なるほど」
小風は納得してくれたみたいだ。
まぁあとはもう少し稼ぎたいって気持ちもある。
うちのチームのメンバーも一週間のうち必ず二日休みを入れるなら残りの日はダンジョンに潜っても良いことになっている。
なので松田と萩原に誘われて内藤、南波と池田は毎週一回【サザン海】ダンジョンに釣りをしに行っているらしいし、(椎名)洋介も(椎名)華澄の実家の【ケーナーティオ】ダンジョンの間引きの手伝いをしたりしている。
「結構自由なんですね」
「そりゃ毎日拘束していたらまいっちゃうでしょ。そういえば小風は好きな人とか居ないの?」
「う~んと強いて言うなら南波君かな。虐められていた時に庇ってくれた事があったから」
「ほうほう! おじさんそういうの好きだよ!」
「何言ってるんですか!」
話を聞くとモテランキングだと一番モテるのは内藤だったらしい。
ボーイッシュな見た目で王子様系と言われる容姿をしているため、混血ながら普通クラスからも人気があったらしい。
それに剣術の腕も合わさり混血でなければアイドルになれただろう。
まぁ私が配信者デビューさせてアイドル化させるが。
「こう付き合うとかそういうアオハル的なのは無かったの?」
「う~んと無かったですね。高校だと混血でもクラスがバラバラになりますから」
小中学校ではクラス替えも無く混血の子は混血の子で纏められているが、高校になると一般の生徒と混じって勉学に励むことになる。
ただ絶対に退学できないプレッシャーからアオハルをしている余裕は全く無いし、混血の子は差別を受けて育ってきたので子供にも辛い思いをさせたくないと恋愛にまで発展しないらしい。
「うちのチームはチーム内恋愛オッケーだから」
「まぁ···チームの約半数がチーム内の恋愛及び妊娠による離脱って···普通のチームなら解散案件なのですが」
「うちはうち、よそはよそ。離脱した人が出たから新人が加入できるんだから良いんじゃない?」
「それはそうですけど」
「まぁ良い人が出てくると思うから気を落とさないでね」
「はぁ···」
そんな事を話しながら小風と二人でのダンジョンアタックは終わるのだった。
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