新規加入
チームガイアのメンバーを集め、明日迎える新人四名の資料を渡し、クランになるまでの流れを話していく。
「流石探索者高等学校出身だな、全員がレベル四十を超えているんだな」
「学校内にある下級ダンジョンだけでなく、外部のダンジョンにもほぼ毎週潜っていたみたいだな」
(椎名)洋介、松田の順に話す。
彼らの人並みの生活を送りたいという執念がレベルからひしひしと伝わってくる。
「さて、私のレベルが今四十八。【関ヶ原】ダンジョンをメインにしてから経験値効率が跳ね上がって一ヶ月二から三レベル上がる感じだ。順調に行けば四ヶ月後の八月前にはクラン創設が現実味を帯びだしているよね」
「免許取得も続けていくし、佐藤と佐倉もあと二ヶ月は活動してもらって、そこから産休に入る感じね」
「で、明聖側から紹介される五名の混血の子は全員を受け入れようと思っているからチーム人数が一時的に十六人になると思う。そうなった時に新人組とチームをシャッフルして二チーム運用でいこうと思っているんだけどそれは大丈夫?」
「書類上は一チームとしてだけどってことだろ?」
「そうそう、基本八人が運用上の上限だけど、書類上のチームの上限は書かれていないからね」
「協会側からはグレーゾーンと言わせてくださいよ」
「萩原わかっているって、あくまでクラン創設までの期間だけだから」
まずやるべきこととして私のレベルアップは勿論、新人の育成に重点を置きたいと思っていることを話す。
クラン創設時に全員を上級探索者として持っていきたい。
また松田と萩原は最近習得したが、新人組に魔法理論六つの基礎の完全習得を一年以内にしてもらいたいと思っている。
「他には配信者としてのことだけど新人の中から顔の良い子を選んで箱を作る」
「グループになるってことですか?」
「そう。異型差別の軽減が目的で、私の子供達が小学生や中学生になった時に容姿で差別されるのを避けるのに配信で混血に興味を持ってもらうのが良いと思うんだよね」
「じゃぁクランの中身も配信者のクランになるって感じかな?」
「それは違うな〜佐倉、クランとしてのスタンスは稼げるクランだ。高レベル探索者を多く抱え、上級ダンジョンで荒稼ぎして、大型クランを目指していくよ」
クランにもランクがあり、これはABCでランク分けされている。
というのも公開されているわけではなく、クランの信用度別に探索者協会がランク付けされていて、信用度が高いほど銀行からの融資を受けやすかったり、協会側から期待の新人を紹介してくれたりというメリットがある。
ちなみに私達のチームは協会側のランク付けだとチーム評価はA+、クランとしての枠組みだとBになるらしい。
まだチームなのでクランに比べて稼げる金額が限られているからB評価だが、チームとしての評価は近年だと最高ランクとなっているらしい。
そりゃ結成して一年ちょっとで全員が上級に上がるのが確実なチームなんてほぼ居ないし、私が魔法理論や魔導書とかの特殊技能を教えられるのを踏まえるとこの評価は妥当だろう。
「十年で岐阜県で最も稼ぐクランにしたい。集めた資金でクランのマンションを建築して自分達の城を持とうよ」
クランが大型マンションやビルを所有することを城と言い、そういうクランを城持ちと呼ばれたりする。
「それに人材が多くなれば事業の多角化をしても良いからね」
例は失敗に傾いているが鮭酒アンラが所属しているクランとかはダンジョンアタックの収入と配信業の二本柱にしているクランである。
極端な例だと自前の牧場とクランを合体させてオーナーブリーダーをしながらクラン運営をする変人もいたりする。
海外だとクランで資金を稼ぎ、油田を買い取って超大金持ちになったクランもある。
日本でも全国に二百店舗展開するラーメンチェーン店の経営母体が探索者クランであったりということもある。
スポンサーも食品、パソコン、装具とジャンルがバラバラなのでそれぞれに合わせた素材を卸す企業を起ち上げても面白いかもしれない。
「夢は大きくいこう! 岐阜県を活性化させていこう!」
「「「おう!」」」
ちなみに私的には大和や長門に引き継いで世襲化できれば万々歳と思っていたが、後々予想外の方向にクランが成長することをチームのメンバーを含めてわからなかった。
「皆、先にチームで活躍してみせるから! また後で!」
私、小風凛は皆に別れを告げる。
「俺達もレベルアップしてから合流できるように頑張るよ! 小風、南波、内藤、池田! 頑張れよ!」
「勿論! 絶対に成り上がろうぜ! 差別していた奴に収入で勝ってやるんだ!」
「レベルでもね」
「混血は純血と何も劣らない事を証明するんだ!」
「「「おー!!」」」
仲間達と別れ、採用された私達は学校の駐車場に止められたミニバンに乗り込む。
運転するのはイブキさんで横には東横さんが座っている。
「仲間と一時の別れは済んだかな?」
「「「「はい!」」」」
「よし、じゃぁ私達の拠点のメアリーヒルズに行こうか!」
といっても学校からほど近いマンションなので皆場所は知っている。
何だったら集合場所をメアリーヒルズの前って言われても良かった気がする。
数分もせずに到着し、マンションの敷地に入ると、その高価な造りに場違い感が出てしまう。
「ささ、入って」
「し、失礼します」
自動ドアをくぐり、エントランスホールに入ると、テレビで見る高級ホテルの様な造りに感動した。
フロントの人にイブキさんが何かをいうと、事務室に案内されて顔写真を撮られた。
顔認証とキーカードでエレベーターに乗れる仕組みらしく、最初は顔認証が必要なのだとか。
「はい、これが皆のキーカードね」
とキーカードと部屋番号の書かれた鍵を渡された。
私の鍵には十三階のGと書かれ、内藤ちゃんも同じ番号だった。
「来月にもう五人加入するから二人一部屋になるけど我慢してもらえるかな。お金が溜まったら個室にするから」
「い、いえ! 全然大事です!」
私達は恐縮しながら返答する。
エレベーターに乗り十三階に案内される。
部屋の扉を開けると寮とは大違いの新しくて、とても綺麗な造りになっていた。
そして家電や家具が一通り揃っている。
テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、ドライヤー、電気ケトル。
ベッドに調理器具、寝具にタオル類まである。
「とりあえずチームから一式揃えさせてもらいました。これはチームから皆さんへの先行投資です!」
「こ、こんな綺麗な部屋を使って良いんですか!」
「どうぞどうぞ!」
ベッドはふかふかで良い匂いがするし、テレビも大きく、お風呂も広いし綺麗!
「こんな部屋で生活できるなんて夢みたいです」
更に最上階はラウンジスペース、八階にはランドリー、二十四時間のゴミステーションまで完備ときた!
そりゃもうテンションバク上げだ。
「じゃぁ今日は皆の歓迎会をやるから荷物を置いたら私の部屋に来てね。扉は開けておくから」
とイブキさんに言われた。
荷物を置いてイブキさんの部屋に行くと大きめのちゃぶ台が二つ置かれており、座椅子が人数分用意されていた。
ちゃぶ台の上には豪華な料理が並んでおり、カセットコンロの上にはすき焼きの鍋と食材がデンと置かれていた。
「す、すき焼きだ!! すき焼き風じゃなくて本当のすき焼きがある!」
「俺鍋のすき焼き初めて食べるわ」
「給食や学食でも食べれないから! 凄く嬉しいです!」
私含めて本物のすき焼きに更にテンションが上がる。
「自己紹介もここでしてもらっていいかな?」
「勿論です!」
チームガイアのメンバーがすき焼きの準備をする中、私達は自己紹介をしていく。
「小風凛です! ポジションは後衛で職業はアーチャー(弓兵)とサポーターです。手先が器用なので罠解除やピッキングが得意です。趣味は料理です。外に出られたのでいっぱい稼いで色々な料理を勉強したいと思ってます!」
「南波謙太郎です。見ての通りオークのハーフでフード付きの服を着ていないとモンスターに間違えられるほどオークそっくりです。ポジションは前衛で職種はタンク。魔法は肉体強化や拳を硬くするみたいな身体を変化させるのが殆どです。趣味は学校で園芸をしていたので、部屋の中で育てられる観賞用植物を幾つか育ててみたいです。よろしくお願いします」
「内藤菜奈です! デュラハンの混血で首が常に浮いていますが、口から接種した食べ物はちゃんと胃袋に入ります。あと首が一定距離離れると体調を崩すので気をつけますが、皆さんにも覚えておいてほしいです。ポジションは前衛、職業はナイト。二刀流で剣術の研鑽ばかりやって来ました。戦力になれるように頑張ります!」
「池田真です。ハーピィのハーフで、種族的特徴で上半身が女性かつ腕に翼が生えていますがれっきとした男です。男に欲情されて苦労したので男性から性的に見られることに嫌悪感があります。ただ皆さん妻が居ると聞いているので安心しています。ポジションは後衛、職業は魔法使い、アーチャー(弓兵)、サポーターです。空を飛んで魔法や弓を降らせたり、偵察するのが得意ですが火力が足りないのが悩みです。趣味は歴史巡りで戦国時代から近代の混乱期まで幅広く調べています。よろしくお願いします」
と自己紹介をし、イブキさん達も自己紹介をしてくれる。
リーダーの後藤伊吹さん、サブリーダーの椎名洋介さん、同じくサブリーダーの東横雪子さん、洋介さんの奥さんの椎名華澄さん、イブキさんの護衛の松田歩さん、萩原雄二さん、二人の恋人の佐倉響さんと佐藤照さん。
それにイブキさんの子供の後藤大和君と後藤長門ちゃん。
二人は私達を見て
「ねーねー! にーにー」
と言ってくれた。
確かに天使病の特徴が出ていて子供の二人にも天使の翼とリングがある。
「じゃぁすき焼きを食べようか!」
ご飯茶碗に山盛りにご飯をよそわれ、肉や野菜をガンガン取り皿に置かれていく。
「いっぱい食べれ〜」
とイブキさん達がいうが、流石特殊技能の『吸う』を会得している人達だ。
私達の食べる量の倍は口にしているのに全く食事のペースが落ちない。
というかよく見たらデカい炊飯器が七台稼働してるし···
「魔法理論は私達のチームだと必須だから覚えてもらうよ! 大丈夫、失敗しても命の危険は無いようにするから···死ぬほど辛いかもしれないけど」
「が、頑張ります」
学食で出る安物の肉とは違い、とろける様な牛肉を味わい、私達は満腹感を感じるのだった。
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