混血との面接 二

「うーん悩ましい」


 三十分間の昼食休憩中に私は言葉を漏らす。


 一人当たり十五分間話してみて全員が必死さが伝わってくるので正直全員を勧誘したい気持ちもある。


 東横には全員合格させるかもしれないと言ったがチームとして動く以上最低三人は必須だが、マックスでも五名が限界だ。


 十人パーティーになれば二人休みのローテーションが組める。


「クランが成立したら全員採用···いや、私達の所じゃないと生きていくのが難しい子を優先したい」


 そうなればチームに依存する形となるのでチームから離脱しようとか引き抜きをされた際にも恩義を感じて抜けにくくなる。


 それに私達のチームメンバーは混血を特に変な差別とかの目で見ていない。


 東横や松田、萩原は混血が普通の探索者よりも探索者としての適性が高い事を探索者協会の職員として差別しないことを教育で叩き込まれているし、椎名一家は自身が強いのでそんな差別的な考えが浮かんでこない。


 佐倉は社会人としての常識と病院勤務で患者を平等に扱うという考えを持っていたし、佐藤は地元に混血の友達が居るという珍しいタイプなのでチームガイアで差別的に扱う人は居ない。


 勿論今は円滑に回っているが、人数が増えればあの人が嫌いとか苦手とかも出てくるだろうが、そこは私達大人が上手いこと調整すれば良い。


「うーんとゴブリンの小風さんとデュラハンの内藤さん、ハーピィの池田君は内定かな」


 この三人だが、容姿に優れているという点が共通している。


 愛くるしい容姿の小風さん、頭が常に浮いている為デュラハンというより中国妖怪の飛頭蛮の性質が強い内藤さん、上半身は美少女かつ胸も大きめだが、下半身は鳥類かつ男性の特徴を持ち、性的葛藤を抱える池田君。


 午前中に九人と面接をした中で、特に技能が突出している点がある。


 小風さんはクラン会計とモンスター調理師のサポーター、内藤さんは全国の探索者協会が運営する学校の模擬戦闘大会で三位の実力者、池田君は飛行索敵やピッキングができるサポーターである。


 佐倉と佐藤のサポーターコンビが離脱するためサポーターは優先的に取る必要があったので小風さんと池田君は確定、内藤さんは前衛の層を厚くする為に採用した。


 勿論他の子にも長所はあるが、サポーター向きの二人はうちのチームの方が輝けると判断し、内藤さんはチームガイアでなくても成り上がることはできるだろうが、東横が抜けた時の幹部候補として迎え入れたいと思った。


 昼食も食べ終わり、面接を再開すると東横にメッセージを送信するのだった。








「東横さん! 東横さん! 外のダンジョンってどんなモンスターがいるんですか!」


「いや、モンスターよりもどんな探索者がいるか聞きたい!」


「えー、魔法理論を聞きたいよ!」


 待っている間に生徒たちの緊張を解す為に東横から積極的に皆の事を教えてと話を振ると、次第に話が盛り上がっていった。


「じゃぁチームメンバーの裏話とかしようか! 松田と萩原って私の年上の部下がいるんだけど」


 チームに入った時のメリットや、もしこの場で落ちてもクラン創設時に希望があれば積極的に採用したいという話をすると、少しだけ安堵の雰囲気となった。


 落ちても希望が見えるだけマシだし、東横はクラン創設は遅くても一年未満と言ったので、一年なら待てるという雰囲気が漂っていた。


「チームに入ったらチームで借りているマンションに住めるらしいですけど他の階層の住民と揉め事になりませんか?」


「私達が住んでいるマンションは探索者協会がバックに付いているマンションだから気にしなくて大丈夫、住民には私達から説得するから」


 事前にマンションの管理人に混血の人が入居しても大丈夫か聞いたところ、問題を起こさなければ大丈夫と言われた。


 マンションの住民も探索者の関係者が多いのと金持ち喧嘩せずの精神的なゆとりがあるので、混血だろうが人ができていれば問題は無いと住んでいる人々は言う。


 住む所にも苦労するのが混血だが、今回の面接に落ちても探索者協会から住む所の紹介はしてもらえると言われて、生徒たちは色めき立つ。


 ちなみにメアリーヒルズの十三階の八部屋のうち、三LDKの角部屋と東横が二LDKの部屋を一室使っている。


 萩原と佐倉、松田と佐藤がそれぞれ広い部屋に引っ越しをし、二LDKの三部屋が空いている。


 ちなみにマンション側から十三階のフロアはルームシェア等をしても大丈夫と言われているので、二LDKの部屋に二人が居住することを考えると六人、三人だと九人が住むことができる。


 また下の階層なら一人用の一LDKの部屋が数部屋空いているらしいので、そこに住まわせる事もできる。


 そういう事を考えても今回の採用は五人が限界だろう。


 もしクランが軌道に乗ったらクラン用のマンションを建てる場合も考えなければならないだろう。


(まぁその頃には私はクランにいないだろうけどね)


 東横は少し寂しそうにそう思うのだった。








 全員の面接が終了し、三十分ほど東横と話し合いをした後に合格者の発表を私自身が行う。


 待機室だった教室に入り、採用者を言っていく。


「まず、今回落ちたからって私達から関心が消えるわけではないことを理解して欲しい。私達チームガイアがガイアクランになった時に再度誘うことは約束するよ。じゃ、今回の採用者何だけど···小風凛さん」


「はい!」


「内藤菜奈さん」


「はい!」


「池田真君」


「は、はい!」


「南波謙太郎君」


「うっす!」


 南波君はオークの混血で、熱意が凄まじかった為に採用となった。


「以上四名が今回の採用となります」


 落胆や喜び、採用された者へ祝福と様々であったが呼ばれた四名にはチーム加入の契約書を渡し、三月二十六日の退寮日に車で迎えに来るから荷物を準備しておくように言って、私と東横は学校から去るのだった。









「受かった···」


 面接から数日後、各々受けていた免許の結果が発表された。


 まず松田が大型自動車免許に合格、(椎名)洋介と萩原は私が先月合格した三級教官免許を取得、佐倉が簿記三級、(椎名)華澄と佐藤がクラン会計士免許を取得することができた。


 これでクラン設立条件を満たし、クランを運用することができる。


「あとはクラン設立したら外部の税務士と契約して税務関係の調整かな?」


「そうなるね···イブキは半年後の二級教官免許を狙うんでしょ?」


「そうなる」


「頑張って」


「頑張るわ」


 着々とクランの下地ができ始めていくのだった。

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