関ヶ原ダンジョン

 椎名のお腹が膨らみだし、産休に入り、チームから離脱した。


 そのため【サザン海】ダンジョンでのカニ、エビ狩りの効率はやや落ちてしまった。


 その分男共が釣りで頑張ってくれているが···


 そんな最中事件が起こる。


 佐倉、佐藤の妊娠発覚。


 ヤればできる。


 佐倉、佐藤、松田、萩原は私達に謝ってきたが、私はおめでとうと祝福の言葉をかけたが、松田と萩原に東横が激怒。


「お前らイブキの護衛ってこと忘れてね〜よな? なんで下半身の制御ができてね〜んだよ!」


 ちなみに(椎名)洋介は自分もできちゃった結婚なので発言権が無いので大和と長門と別の部屋で遊んでもらっている。


「まあまあ怒るなって東横」


「でもイブキ!」


「二人の離脱は痛いけど、チームの結束は深まっているんだから良いの。恋愛が破局して気まずくなるよりずっと良いから。松田、萩原、しっかり責任は取るんだよ」


「「うっす!」」


「はい、これでこの問題はお終い! 説教よりも次の事だよ! 【サザン海】だと金は稼げるけれど釣り担当の男共の経験値効率が悪いから別のダンジョンに行くよ」


「どこのダンジョンにするんですか?」


「【関ヶ原】」


【関ヶ原】ダンジョンは関ヶ原にあるというわけではなく、関ヶ原の合戦を模した戦いをモンスター同士で永遠に繰り返しているためそう名付けられた。


 赤甲冑が多い東軍と黒甲冑が多い西軍と呼ばれ、日替わりで勝敗が変わるが、その勝敗を上手く見極めて勝馬に乗ると多くの鎧武者や足軽の装備を剥ぎ取る事ができる。


 鎧武者の鎧や装具、足軽の槍や弓矢はそのまま武器として売られることがあるくらい質が良く、特に昔ながらの武者鎧なので海外に高値で輸出されたりもしている。


 不人気ダンジョンとは比にならないほど稼げるし、経験値効率も良い。


 ただ戦況の見極めに失敗すると敗走に巻き込まれて死ぬので注意が必要だ。


 まあやることは広い戦場で東軍西軍関係なくモンスターを倒すことだが···


「出てくるモンスターは鎧武者と足軽だけど鎧武者は黒駒、白駒という馬に乗っている事があり、そういう鎧武者は高値のマジックアイテムの鎧や兜、刀等の武器を所有していたりするよ」


「ただ経験値を主軸に考えるから佐藤と佐倉にもサンレイを覚えてもらって魔法でガンガンモンスターを倒す。装具は二の次に考えよう」


「ただ戦況の見極めは難しいから外周部で戦うことにするよ。中央部は稼ぎたい人がリスクを冒して集まるらしいし」


「了解しました」


「よし、じゃぁ明日から頑張ろう!」


「「「おう!」」」









 鎧武者と足軽は動く鎧等と同系列で、内部に核となる魔石があり、それを球体が包みこんで鎧を纏って浮いている。


 その為強い衝撃か魔法にて内部の球体にダメージを与えると倒すことができる。


 足軽は鎧武者よりも装備が弱いからそう言われるだけで仕組み自体は変わらない。


 良い点は血等で汚れないこと。


 悪い点は斬撃系の武器の通りが悪いこと。


 その為(椎名)洋介は自慢の野太刀で斬る事ができず、背で叩く事が中心になるだろうか? (サンレイで吹っ飛ばすかもしれないが)


 今回はリヤカーを引っ張りながら戦う余裕が無いので、ダンジョンに持ってきてないが、余裕がありそうなら鎧回収用に次回から持ってきても良いかもしれない。


 ダンジョンの入口周辺の施設はここも駅みたいになっている(というかダンジョン都市のダンジョンは大小あれど駅みたいになっている)が、このダンジョンには案内所があり、今日の戦況予想及び戦況が激変する予定時刻、先日に買い取られた高額鎧や刀の一覧が展示されていた。


 映像コーナーでは鎧武者の倒し方が流されており、鎧の関節部分を斬っても効果が無いので胸辺りを強く叩けと言っている。


 こうなってくると佐倉のモーニングスターや萩原のハンマーが最適の武器かもしれない。


 今日の予想では東軍の勝利確率が八十パーセントと出ていたので、ダンジョンに潜ると両軍を見下ろす丘の上に出る。


 幾つものグループが双眼鏡や望遠鏡で戦況の様子を観察して突入タイミングを待っている。


 私達は金は程々に、経験値優先なのでそんな人達から離れて、外周部の小競り合いをしている場所に向かった。


「最初は強く当たって、後は流れで」


「後藤さん、それ八百長の常套句ですよ」


「まぁ試しに全員でサンレイぶっ放す感じで」


 ということで七名でサンレイを放ったところ極太のビームになり、小競り合いをしていた足軽や鎧武者七、八十体が消し飛んだ。


 鎧武者達は私達が攻撃してきたのを認識したのか、こっちに部隊を向かわせてきた。


「とりあえず槍とか危ないからサンレイ連射で、私もサンレイン放つから···東横は鎧武者とかの足止めで地面を凍らせて」


「了解」


 近づいてきた鎧武者達が次々に焼き切られたりして倒されていく。


 時折倒れない鎧武者がでてくるが、それは萩原がハンマーで叩いたり、私がぶん殴って制圧していった。


 二時間ほどで一日の過去最高討伐数である千体のモンスターを倒し、辺り一面に散らばった魔石を集めていく。


「いや~しっかし凄い数だね」


 中級ダンジョンのモンスターなのでオークよりも魔石の値段は高く、一個当たり二万から三万程度で買い取ってくれる。


 ただ魔石も一個の大きさが野球ボールくらいあるので皆のリュックに詰め込んでも四百個が限界だろう。


「四百個だと二万円買い取りでも八百万···あれ? こっちのほうが稼げる?」


「いや、疲労半端ないっすよ」


「二時間で限界ですよ」


「魔力が尽きかけてて思考にモヤがかかるんですけど」


 サンレイや様々な魔法を放ちまくったので皆結構体に来ているっぽい。


「まぁそれは仕方がないけど···お? 原型を留めてる武具発見」


「マジックアイテムっすか?」


「うーんどうだろう? 一応持ち帰ろうか。回収できた武器ってどれくらい?」


「刀三本と槍五本っすね。後は壊れていたりするので穂先だけ回収したりもしましたが」


「やっぱり次からリヤカー持ち込もうか。そうすれば魔石ももっと回収できるし」


「そうですね···ただレベルが上がる感覚がすごいしました。ここに籠もればレベルはガンガン上がるんじゃないでしょうか?」


「そうだね···よし、明日からも頑張ろうか」


「「「おー」」」






 換金所に持ち込むと鎧はやっぱりマジックアイテムだったらしく四百万で買い取ってもらえた。


 全部合計すると千三百万近くになり、危険度が高い代わりに金も経験値も稼げて、何より三時間しか潜っていない。


 修行場としては凄く良い場所を見つけた。


 私は大和と長門を託児所から迎えてマンションに戻り、簡易測定機でレベルを計測すると、今日で四十七に上がっていた。


 ちなみに今皆のレベルが高い順に(椎名)洋介が百十九、(椎名)華澄が百十、東横が九十五でここまでが上級上位。


 松田が七十で上級中位、萩原が六十八で上級下位、佐倉が五十六、佐藤が五十二で中級上位に上がっている。


 私が才能を付与しているのに、私のレベルが上がりにくいのはもうどうしようもないと割り切っているが、チームメンバーからはレベル上昇の恩恵を受けているのですごく感謝されている。


 というか私が上級の六十レベルに上がる頃に皆は上級上位の八十レベルになってそうで怖い。


「まぁそれぞれの成長ペースは仕方がないよね。言い方を変えれば私が才能を付与した子はガンガン上に上がれる訳だし」


 私自身も一年で三十レベル近く上がっているので他から見たら成長速度は爆速だ。


 それでも向上心は衰えない。


「とにかく上級に上がらないと始まらないからね! 子供達の未来のためにも頑張ろう!」

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