底辺ダンジョン配信者がトラップ踏んだらTS天使になりました！？

引っ越し

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　住む場所が変わったことで大和が熱を出したり、長門のお気に入りだった哺乳瓶が燃えて無くなっちゃったことでなかなかミルクを飲んでくれなかったりしたが、数日もすると探索者協会の宿泊施設である旅館生活にも慣れ始めた。

　ただここは仮住まい。

　本格的に住む場所を見つけなければ···そう考えていると東横守さんから連絡が入り、チームの皆と話がしたいと言われた。

　山田と椎名も呼んで、旅館の一室で東横守さんを待つ。

「済まない待たせた」

「お父さん遅い！」

　東横雪子が守さんに厳しく言うが、彼はハハハと流してから幾つか住まいを用意してくれた。

「今回の襲撃事件を受けて、チームガイアの···いや後藤伊吹の重要性が更に高まった。岐阜県探索者協会はクランでは無いがチームガイアとのスポンサー契約を結ぶ事が正式に決まった。われわれ協会はスポンサーとして住居の提供や子供達の学費の補助等、様々な面をサポートさせてもらう」

　私がそれに疑問をぶつけた。

「クランでスポンサーになるというのはあるかもしれませんがチームにスポンサーが付く事はあるのでしょうか？」

「例が無い訳ではない。日本では数例しか無いが、海外だと多い。日本だと囲い込みだと叩かれる為基本されないが、イブキ君は換えが効かない存在だからな。これくらいの優遇はさせてもらう」

「···じゃぁ今後は岐阜県のダンジョンのみを攻略しろということで？」

「そういう訳では無い。メインを岐阜県で活動してくれることと、魔法理論の普及を岐阜県の探索者協会を通して行ってくれれば特に問題は無い」

「じゃぁ近隣の県のダンジョンに遠征してもOKということで」

「あぁ、問題ない···と、まずは住居だが希望通り学校に近くてセキュリティが高く、駐車場があり、配信ができる物件となるとこの五つの物件となった」

　一軒家···いや共同住宅が二軒、マンションが三軒で、どれも小中一貫の探索者協会支援学校から徒歩二十分圏内だった。

　A住宅は、五組の家族が暮らせる構造になっており、オール電化で、近くに駅があるのが特徴だ。

　ただ駐車場が少し狭く、三台しか車が停められない。

　B住宅は、一番探索者支部に近く···というより支部の駐車場と道路を挟んだ反対側にある。

　こちらも五組の家族が暮らせる広さで、広い共同風呂が備え付けられていて、管理人が常駐してくれるらしい。

　車は探索者支部の駐車場に停めていいとのこと。

　Ｃマンションは、一階にコンビニとカフェが入っており、人数分の部屋を用意してくれるとの事。

　隣りにスーパーもあり買い物は楽そうだ。

　Ｄマンションは、一フロア丸々チームに貸してくれるのと、バス停が目の前で百合ヶ丘都市内のバスの自由乗車券を付けるとのこと。

　Ｅマンションは、ダンジョンに併設されたマンションで、初級ダンジョンにそのまま潜る事ができる様になっており、ダンジョン内のモンスターが攻撃性が全く無いので探索者協会が特例でマンションの住民に限り自由に出入りを許されている。

　どれも長所があり、見取り図を見せてもらったが甲乙付け難い。

　ただまずは椎名と山田が一緒に暮らすのかどうかという話になる。

「結婚したら実家から当分は出ようと思ってましたし、実家のダンジョンは、まだ父や親族のおじさん達が現役ですので問題無いです。毎回ダンジョン合流よりもチームで行動したほうが効率的ですし、私もダンジョン都市に住めた方が利点が多いですし」

「···実は（椎名）華澄が妊娠したんだ。今妊娠二ヶ月でお腹に俺の子供が居るんだ。それを考えると病院が遠い今住んでいる所よりもダンジョン都市の方が子育てに向いているから移住したいんだ」

　と山田が語る。

　皆、椎名が妊娠していることに驚くと同時に祝福し、ならチームで一緒に住んだほうが良いとなり、椎名の子供が産まれるとチーム八人に大和、長門も合わせて十一人になる事を考えて住居を選ぼうという話になり、駅が近くても駐車場が狭いA住宅が真っ先に候補から外れた。

　それに安全とはいえダンジョンと併設されているマンションも遠慮したいとし、Ｅマンションも外れた。

「Ｄマンションの方が良い気がします。一フロア丸々使えるのは大きいですし、もしクランになって人数が増えてもその人数を収容できるのは大きいんじゃないですか？」

「マンションには管理人や警備員が常駐してますからB住宅じゃなくても良いですね。支部に近いのは魅力ですが、バス乗り放題なら支部までバスでも二十分以内に行けますし、なにより総合病院がこの中だと一番近いですし」

「守さん、明日このマンションを見学することは可能ですか？」

「勿論ですよ。連絡しておきますね」

　とりあえず見学することが決まり、もう一つ守さんから話をされる。

「あとイブキさんのチームガイアのスポンサーになりたいという企業が幾つかあります。我々協会だけだと問題なのでスポンサーと話し合いをしてもらえませんか？」

「それは勿論。どんな企業ですか？」

「まず皆さんが知っている所だと椎名さんの実家の焼き肉椎名の【ケーナーティオ】ダンジョン運営会社ですね。こちらは協会の方から誘いました」

「メインスポンサーとはなりませんが、探索者協会と同じサブスポンサーとして付いて貰おうと思っています」

「理由としましては椎名さんの実家であることが大きく、今後のチーム運営を考えるとスポンサーとしてチームガイアの利権に組み込んでおいて損は無いでしょう」

「続いてイブキさんが愛用している籠手の製造会社である明聖株式会社。イブキさんの動画配信が良い宣伝になったと前々からクラン立ち上げの際にはと声がかかっていました」

「あとは新人にオススメのリュックで紹介してくれたことで好意的なリュックメーカーのメテオブランド社、パソコンメーカーのツクール社、岐阜県のダンジョン食材を取り扱うディープフーズ社が私に接触してきていました」

　初耳なんですけどと私は守さんに言うが

「イブキさんが配信で後々クランの創設を宣言していたので私がそれとなく企業に売り込みをしていたんですよ。で、食い付いたのが焼き肉屋椎名を除けば四社ですね。どこをメインスポンサーにするか決めておいてください」

　と言って資料を渡された。

　明聖社はこの中だと一番規模がでかい企業で探索者用の武器、防具の製造やマジックアイテムの製造で利益をあげている企業だ。

　求めているのは明聖社製の武器や防具を使った配信で、リターンは資金援助と最新モデルの武器、防具の提供。

　値の張る武器を自身に合ったモデルを出してくれるのはありがたい。

　メテオブランド社はリュックメーカーなので資金援助とリュックの提供、コラボ商品の販売を約束してくれている。

　ツクール社は配信機材や配信スタジオの提供、メインスポンサーになれば自社グループとして大々的に売り出すとも書かれている。

　ディープフーズは関連スーパーの半額券や食品の提供を約束してくれている代わりにディープフーズのCMへの出演を書かれていた。

　どれもメインスポンサーにするのは魅力的であり、サブスポンサーでも恩恵が受けられる。

　皆で話し合ったが、会社規模と武器や防具といった探索者の生命線を支える明聖社をメインスポンサーに、焼き肉椎名を含めた他の四社と岐阜県探索者協会をサブスポンサーに決めた。

　スポンサーの件は後日全員で全社挨拶回りをするので、守さんに日程の調整を依頼した。

「とりあえず今日話す案件は以上になります。他何か質問はありますか」

　と守さんが聞いていたので探索者協会の依頼みたいで動くことはあるのかと聞いたが

「いや、そういうのはギルドナイトの仕事だから気にしなくて良い」

　と帰ってきた。

　また大和や長門、椎名の子供等を預かる施設が無いか聞くと

「探索者支部内に託児所があるからそこで探索者の子供は預かることができる」

　と教えてくれた。

　他、襲撃事件の損害賠償や裁判関係は探索者協会がチームガイアを全面バックアップするので気にしないで良いと言われた。

　委任状や書類は少々書くかもしれないが、長時間拘束したり、検察の聞き取りも最小限に済ましてくれるらしい。

「じゃぁまた明日迎えに来るから山田さんと椎名さんも一緒に午前十時に今の宿泊施設の入口付近に集合していてください」

　と言われ解散となった。