佐倉と佐藤
新加入予定の二人の待ち合わせ場所は中部地方にある空港だった。
リモート面接で顔は見ているが実際に会うのは初めてである。
「どんな人かな〜楽しみだなぁ」
空港にあるレストランで私と東横に大和と長門もせっかくの遠出なので連れてきていた。
コーヒーを飲んで待っていると金髪で糸目の背が高い女性と、対象的に背が低く、童顔で中学生くらいにしか見えないオカッパの女性が現れた。
「こんにちは〜」
「はじめまして!」
二人が挨拶してくる。
糸目の方が佐倉響さんで真面目そうな童顔オカッパが佐藤照さんだ。
「佐倉さん、佐藤さん、初めまして。天使のイブキこと後藤伊吹です」
「アシスタントをしている東横雪子です。よろしく」
「「よろしくお願いします」わ〜」
二人も席に座り、条件の最終確認をしていく。
「まず住み込みで働くことになるけどそれは大丈夫?」
「問題ないよ〜」
「問題ありません!」
「なら良かった。住む所だけど私が借りているアパートに空き部屋があるから当面はそこに住んで欲しい。来年の今頃にはダンジョン都市である岐阜県の百合ヶ丘に引っ越しをするけど、そこでも住居は提供するから安心して」
「了解了解」
「了解しました」
「ダンジョンの収益は金額を参加者でなるべく均等にわけることになるけど大丈夫?」
「大丈夫」
「大丈夫です」
住居、金銭面の確認をし、二人はなぜ今回の応募に応じたのか聞いてみると
「じゃあ私から···イブキさんを知ったきっかけは行方不明事件で、ネットでイブキさんの動画や音madを聞いて声が凄くタイプだったんですよ。で、私も幾つか音madを作ったんですけど行方不明の方を題材にするのはどうかと思いましたが、復帰されたで復帰記念として私の作品を幾つか投稿したのが始まりです」
「あー、沢山音mad挙げてくれたの佐倉さんだったんだ。私も幾つか聴いたし、大和と長門が流すと喜ぶんだよね! ありがとうね」
「いえ、正直無許可だったので怒られるかなと思ったんですけど」
「別に? 配信者何だからネットの玩具にされても仕方がないでしょ。それに佐倉さんの作品は私への愛が感じられるから好きだよ」
「ありがとうございます!」
「繋がりはわかったけど応募理由は私の声を直接聞きたかったから?」
「それもありますが、サポーターを募集していると聞いたので、私は治癒、剥ぎ取り、採取が得意だし、戦闘面でもある程度は戦えると自負しているので、チーム結成において力になるんじゃないかと思いまして」
「なるほどね···わかった。改めてよろしく佐倉さん」
「はい」
「じゃあ佐藤さんは?」
「はい! 私の場合もイブキさんを知ったのは行方不明になったあの配信からで、正直亡くなったと思ったのでイブキさんの配信を遺作として切り抜いたり加工して見やすいように半年間していました。復帰したら新事実が過多でパンクしましたが、六つの基礎を覚えたり、私もレベル上げに努めた結果こうしてチームを組めるレベルまで上げられました」
「私の価値としては罠解除と宝箱の鍵開け、素材の剥ぎ取りがメインです。あとはダンジョンのモンスターの調理免許を高校で取っていますので、モンスターの調理ができます」
「モンスターを調理して食べられるのは良いね。罠解除や宝箱の鍵開けも期待しているよ」
「はい! あ、あと、魔法理論で気になったんですけど、魔法の言語化とかもできたりします?」
「それはどうして?」
「いや、サンレイを山田さんや椎名さんも使っていたので魔法を共有か教えられる何かがあるんじゃないかなって思いまして」
「あ~私もそれは気になってました。どうなんです?」
仲間になるのだから話しても大丈夫と感じ、東横を見ると、彼女も頷いている。
「あるか無いかで話すとあるよ。仲間になったからには二人にも秘密を共有するけど···私は魔導書を書くことができる。人工的な魔導書なんだけど、六つの基礎を理解していないと読み解く事ができない様になっているし、読み解いても直ぐに習得とはならないんだ。実際に練習をしなければいけないし、ジワジワと覚える感じかな」
「人工的な魔導書!?」
「やっぱり立候補してよかったです! もしかして私達も魔導書を書けるようになりますか?」
「最終的に全員が魔導書を書けるようにしたいと思っているよ。魔法のシェアができればそれだけで戦力が段違いだからね」
「「おお!」」
その後は食事を取りながら佐倉と佐藤からの質問に答えていく。
モーニングとしてサンドイッチや小倉トーストとコーヒーを食べていく。
質問内容としては行方不明期間の詳しい話や辻聖子が何者なのか、大和と長門は普通の赤ん坊とは何か違うのか、今後のダンジョンアタックの方針等を教えていく。
二人はメモを取りながら
「そう言えば配信や動画作製の手伝いもした方が良いですか?」
と佐藤が質問してきたので
「それは二人に任せる。ただでさえ住む場所を固定して拘束しちゃっているから、動画の編集とかまで手伝う必要は無いよ」
「いや、是非手伝わせてください」
「そうですよ! 私もイブキさんを盛り上げたいのです!」
「···じゃあ頼もうかな。佐倉は効果音等の音に関することで、佐藤は私がしていた切り抜き動画を頼むよ」
「「わかりました」!」
中級ダンジョンにアタックするのは週三で、当面は中級下位にオススメというダンジョンに潜ることにする。
私達がダンジョンに潜る間、大和と長門は大家さんの奥さんがベビーシッターの役割をやってくれる事も話し合って決まった。
勿論ベビーシッター代を出すと言ったが
「後藤さんの仲間さんから家賃を多く取れるからこれくらいはやるわよ。それにスライム燃料とか色々とお世話になっているからね!」
と言ってくれた。
大家の奥さんに感謝し、計画を更に詰める。
基本時間を指定して山田と椎名組と私達のアパート組、それにサポーター組が魔導リアカーを購入した方が良いと言われ、お金を出し合って購入した。
四輪の大型のリアカーで、ダンジョンまで車で牽引し、ダンジョン内では持ち手を取り付けて魔石を動力源にしたモーターの補助を受けながら交代で、荷物やダンジョンのアイテムを運ぶ。
ダンジョンによっては借りられるリアカーは小さかったり、人力じゃなきゃ駄目だったりとサポーター陣からレンタルを毎回するより買ってしまった方が安いと言われたのが決定的だった。
そもそもリアカーや台車の貸出をしていないダンジョンもあるので結局買う必要があるだろう。
ちなみにだが中級ダンジョンは基本三階層、広くても五階層までで、最下層にボスが徘徊しているが、往復一日で回りきれる広さなので、携帯食料があればなんとかなってしまうが、上級ダンジョンとなると一週間近く潜るダンジョンもあるので、佐藤のモンスター調理免許持ちが重宝される。
いや、免許を持って無くても販売目的でなければ調理しても良いのだが、ちゃんと教育を受けていないと不慮の事故が発生してしまったり食中毒で全滅なんてこともある。
まぁ『吸う』を覚えている面々は水さえ補給していれば食い溜めができるので五日間は食事を取らなくても問題は無かったりするが···
閑話休題。
中級ダンジョンに挑む前にオークのダンジョンで連携訓練等をし、挑む予定のダンジョンのモンスターや採取できる素材を入念に確認し、実際に潜ったことのある山田と椎名の意見も取り入れていざダンジョンアタック!
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