交わる
家に帰りレベルを簡易測定機で測定すると十六に上がっていた。
東横も測ると四十九となっており、二人揃ってレベルが上がっていた。
キノコ料理を食べながら明日からの予定を話す。
まぁどこのダンジョンに潜るかについてだが、予定していた様に、山田と椎名の本拠地の【ケーナーティオ】に潜ることにする。
今の私であれば下級中位までのモンスターであれば触れただけで気絶させることができるからだ。
勿論『ショック』の出力を上げれば倒すこともできるし、『インパクト』も調整すれば腸捻転させて気絶させることもできるし、内臓を破裂させて即死させることもできる。
どちらも内部に直接攻撃を与える魔法なので、私はどちらかといえば近距離の魔法が適性が高いのかもしれない。
ならサンレイを防ぐ防御魔法を開発するためには···
「複数の魔法を合わせることで一つの魔法を作らないとか?」
私のボソッと言った言葉に東横が反応した。
「え? 魔法を一つに合わせられるの?」
「私が見せたい『サンレイ』はわかりやすいでしょ。というか『サンレイ』も元々は複合した魔法だよ」
「マジ?」
「マジ、サンレイを分解したら光を凝縮する魔法、空気中から魔法を射出する魔法、出力を調節する魔法と元となった『レイ』の光線を出す魔法と組み合わせる事で『サンレイ』が完成するんだよ」
「ということは辻聖子は複数の魔法を一つの魔法にして、それを魔導書にしたということ!?」
「そうだね···だからこんなにそこそこの威力と燃費、それに利便性を両立しているんだよね」
「だからそれを防ぐには複合した魔法を使わないといけないと思うんだよね」
マーちゃんこと師である辻聖子が言ったのは矛は『サンレイ』それと対を成す盾の開発であるが、『サンレイ』だけを守る魔法ではなく、複数の魔法を守る魔法の開発と言語化が私に言われた宿題であると思っている。
いま私の中でサンレイを守るのに使えそうな魔法として期待しているのは『障壁』の魔法である
これは私が『インパクト』や『ショック』といった直接攻撃系魔法を体から守る魔法で、私の場合皮膚と魔力の膜の間に隔たりを作ることで直接攻撃系の浸透を防ぐ効果がある。
勿論他の魔法や物理攻撃にも多少効果があるため、これを基礎に改造していけば効果のある魔法ができるのではないかと考えている。
「障壁展開中は腹筋に力を込めている感覚に近いから動きが制限されるんだよ···だから奇襲に対して無力なんだよね」
「それが障壁の特性だからな···魔法理論を覚えれば新たな魔法にすることができるのか···今まで価値が無かった魔法が輝けるのは良いことだと私は思うが」
「だよね〜」
その後二人で魔法談義をするのだった。
一週間では無意識に魔力を纏うことはできなかったが、三週間で山田と椎名と東横の三人はきっちり無意識下でも魔力を常時纏わせることができるようになっていた。
「うん、合格。流石だね。私よりも早い」
「ドヤ!」
「(椎名)華澄めっちゃ苦労してたからな」
「(山田)洋介言わないでよ!」
二人がイチャつきだしたが私と東横はいつものことなので気にせずに次の交わるについて教えていく。
「複数の魔力を体内で混ぜる事で魔力の活性化を促す技術だ。魔力を完全に体内で閉じ込める必要があったから纏わせると魔力を操作する巡らせるができて初めて交わるができるようになるんだ」
動画の撮影を始める前に三人に理論を教えていく。
「体のどこでも良いから器に見立てる場所を決める。そこで魔力を混ぜる。オススメは胃袋、肺、虫垂、子宮だね」
「胃袋と肺は大きい臓器だから魔力を交わらせやすい。虫垂はいらない臓器と言われるくらい不要な部位だけど、魔力をそこで交わらせる事ができれば今後教える吸うに良い影響してくる。子宮は器に見立てやすいからだね」
「四ヶ所全てで交わらせる事ができて完了と思っているよ」
「あの、私昔虫垂炎で虫垂取っちゃったんだけど」
椎名がそう言うが
「なら椎名は残りの三ヶ所で覚えようか」
まぁ男には子宮がないので三ヶ所になるが···
異なる魔力をぶつけるというが、大抵の人は得意な魔法属性が二つはある。
それぞれの性質を持った魔力を混ぜる事で、魔力が活性化するが、一つ魔力しか持たなかったり、肉体強化系ばかりで属性に疎い人も居る。
そういう人は魔力を混ぜることに集中すれば良い。
多少効率は落ちるが、それでもできるし、吸うと練るを覚えてしまえば他の属性と混ぜている人と変わらなくなる。
一時間ほど練習すると、まず魔力の操作が得意な椎名がコツを掴み、山田と東横も順に感覚を掴んでいく。
「お! できたっぽいです」
「じゃあ動画を回すから三人は交わった時の感覚を教えてね」
と動画撮影を始める。
今回の動画では編集ソフトで用意した画像を幾つも使い、体内で魔力を交わらせるイメージを視聴者に見せていく。
三人それぞれ魔力が交わった場所と感覚を言っていく。
東横は肺で交わり、空気が薄い場所で空気を吸っているような感覚を覚えたと言う。
山田は胃袋で交わり、胃袋が活発に動いているのがわかるのと満腹感に襲われると言う。
椎名は子宮で交わり、下腹部が熱くなるような感覚を覚えたと言った。
「この方法で他人と手を繋いで異なる魔力を流す事で両名の魔力を活性化させることもできます。その時に同じ属性の魔力でも人によって少し魔力の性質が違うので問題ありません。器に魔力を満たし、交わらせる。肺、胃袋、子宮、虫垂をオススメしましたが、別に他の臓器でも大丈夫です。あ、脳はやめておいた方が良いです。魔力が交わるエネルギーで脳を揺さぶる事が起きてしまい、コントロールする前に気絶してしまうからです」
と補足と注意をする。
動画は無事に終わり、後は編集とアップロードするだけとなったので、三人と雑談タイムに入った。
「イブキさん、貯金どうですか? 最悪俺達から貸しますが」
「うーん、一ヶ月でだいたい百二十万かな。もう一月同じペースで稼げれば産後もある程度は休めると思うし、動画からも収益が来月から入るから、そうすればもう少し安定するかな」
「なら良かった」
配信での同接人数はガクッと落ちたが、動画の再生数は凄まじい。
私が行方不明前に作った初心者シリーズの十五回の動画の平均再生数は百万、帰還後に出している魔法理論動画は三週間で二百万再生を突破していた。
一再生で十銭分のお金になるから、十再生で一円。
それを考えると百万再生が複数個あれば平均で月に諸々引かれても三十万近くが振り込まれるし、動画は残るので長い時間再生され続ける。
賛否両論はあれど注目されている事実を利用しない手は無い。
「だから私は大丈夫だから二人は結婚資金を貯めなよ。新居を建てたいんでしょ? 【ケーナーティオ】ダンジョンの改装資金も後々経営を引き継いだら必要だし···焼き肉屋の経営はどうするの?」
「私の従兄弟が今調理学校に通ってますので、彼らがお店は引き継ぐ予定です。お父さん以外にも調理人は居ますし」
「なら大丈夫か」
椎名と山田には椎名のダンジョンを引き継ぐというタイムリミットがある。
今二人は十九歳だが、あと活動できても十年ちょっとで、その後は実家のダンジョン経営にいそしまなくてはならない。
私のせいで彼らを足止めさせてしまっているため、より多くの利益を二人には与えないといけない。
魔法理論も覚えれば子供に引き継がせることができる知的財産だ。
私はどうせ探索者としてしか生きていけないと思うから彼らの子供にも教育をするだろうし、私の子供を含め、次世代でも活動できれば最高である。
「さてじゃあ今夜私が料理を振る舞うよ。何か食べたいのある?」
「振る舞えるほど料理レパートリー無いでしょあなた」
「東横うっさい!」
「「アハハハハ」」
狭い部屋に四人の声が響くのだった。
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