新人育成完了 オーク弐
ジメジメと梅雨入りし、雨が多くなってきた。
山田と椎名の教育を初めて一ヶ月が経過し、二人を連れてファミレスにて話し合いをしていた。
「さてと、今日の話し合いは二ヶ月経過していないけど教育を終了しようという話だ」
「え? な、なんでですか!」
「そうですよ! もう一ヶ月一緒にやりましょうよ!」
「互いにレベルが十になった···いや、二人はもうレベル十一か。私を追い抜いたんだからこれからは私が足を引っ張ってしまうかもしれないんだ」
「いやいや、イブキさんが足を引っ張るだなんて」
「そもそも私と君達の契約は二人が初心者を抜けるまで···【ケーナーティオ】ダンジョンと近くの洞窟タイプのダンジョンを攻略できるまでだったよね。私は今の二人の実力ならばボスも倒せると確信しているんだ」
私は続けて言う
「だから契約はここで終わり。これからは友達として協力できるときは協力する関係になろうよ」
「イブキさん」
「わかりました。前に書いた誓約書に依頼完了のサインをしますね」
「助かるよ」
私はファイルに入れていた誓約書を取り出して二人にサインと印鑑を押して貰う。
これで二人からの依頼は完了だ。
「イブキさんの今後の活動はどうするのですか?」
山田の問いに私は答える。
「前に苦戦したボスモンスターが居てね。オークなんだけど、そいつにリベンジしたら防具を作るためにお金稼ぎかな。あとは配信を中心に活動していくよ」
「···イブキさん、もし本格的にパーティを作るってなったら俺達も入れてください! 必ず役に立つように成長しますから!」
「山田、そんな簡単にパーティを決めてはいけないよ。確かに私達は相性が良いかもしれないけれど、私達よりも良い組み合わせがあるかもしれないからね」
「しかし···」
「慕ってくれるのは嬉しいけれど私が足枷になって君達が中級に上がった時にパーティを組まないでダンジョンを攻略できるほど中級ダンジョンは甘くない。下級でずっと戦うってのだったら話は別だけど···山田も椎名も才能があるんだから目指せるところまで上を目指しなさい」
「「はい!」」
「じゃあおめでとう初心者卒業を祝して乾杯といこうじゃないか!」
ファミレスの食事は私の奢りで楽しく過ごした。
山田と椎名は先に行く。
私と歩調は違えど前に進み続けるのだ。
「さて、行くか」
山田と椎名と別れた翌日、私はオークに挑む。
おっちゃんに挨拶をし、ダンジョンの奥に進んでいく。
いつもの配信と違った雰囲気の私に視聴者達は困惑していたが、私は気にすること無く進み続ける。
「いた」
緑色の体、お相撲さんの様な図体、スキンヘッドの頭、大きな口、潰れた鼻、醜い容姿であるがそのパワーは下級上位に匹敵する。
「グォォォオオ」
咆哮を叫びオークが私に対して攻撃を開始してきた。
オークのタックルに対して、私は姿勢を低くしながらオークの腰めがけてタックルを開始する。
互いに全力でのぶつかり合い。
オークは私を押し倒そうと上から圧をかけるが、私はオークを転ばせようと動く。
一瞬の拮抗後に、オークの体勢が崩れ、オークは尻もちをつく体勢になる。
私はそのまま籠手で思いっきりオークをぶん殴った。
マウントポジション。
馬乗りとなりオークを上から殴るが、オークは腕で拳をガードしながら反撃の隙を伺っているのがわかる。
私はショックの魔法を纏わせて拳を振るうと片腕が痺れた事に気がついたオークはブリッジの様な体勢になり、私を力任せに拘束を振りほどいた。
オークは近くに落ちていた石を使い投擲してくるが、私はライトアローで石を破壊していく。
近くに落ちていた石が無くなったオーク、今度は殴りかかってくるが、私もオークの拳に合わせて殴る。
インファイト。
互いに身体能力に任せたラッシュだったが、速さは私が打ち勝った。
オークの片腕が痺れていたのも影響しているのかもしれないが···私は再びショックの魔法でオークに触れるたびに、触れた部位を麻痺させていく。
オークはなおも突っ込んでくるが、私は顔面を思いっきり殴るとオークは顔面を陥没させながら壁に頭を打ち付けて動かなくなった。
「うぉぉぉぉぉ!!」
リベンジ成功。
配信のコメント欄は拍手のコメントで溢れかえっていた。
オークから魔石と素材を剥ぎ取り、勝利の余韻に浸りながら帰路に就くのだった。
家に帰り、家計簿をつけている時にスマホを見ると、私の非公式のwikiができていた。
【天使のイブキ】
·名前 イブキ
·レベル 十
·愛称 イブキさん、苦労人、イブキちゃん
·視聴者名 みんな、フレンズ
·誕生日 七月八日
·年齢 二十三歳
·血液型 AB型
·最終学歴 高卒
·現在の登録者数 四百二十九人
·概要
下級下位(現在は更新してないがレベル十なので下級中位)の探索者兼個人配信者
·特徴
天使病に感染したTS美少女天使、天使になる前は底辺探索者を長くやっていた為に初心者や下級下位が生活していくための知識は凄まじく多い。
勤勉家であり、経験と知識両面から工夫して効率よくモンスターを倒すのに長けている。
ただ戦闘スタイルが殴るのと遠距離の魔法なので、雑魚は魔法で攻撃して、強いモンスターは零距離戦闘を好む武闘派。
·経歴
レベル十到達 天使病感染から六週間後
弟子二名の育成を完了
·武器
籠手
-製造 明聖 攻防一体型メタリカルモデル二式
·使用する魔法
光
ライトアロー
-光の矢を放つ攻撃魔法
ライト
-光源を生み出す魔法
ヒール
-傷を少し治す魔法
サーチ
-人やモンスターの位置をなんとなく把握できる魔法
雷
ショック
-触れた相手に電撃を浴びせる攻撃魔法
·その他
レベル詐欺の身体スペックを持ち、初期の頃に発表された能力測定の結果を平均するとレベル帯よりもランクが二つも上。
「ぬふふ、まさか非公式wikiができるなんて」
私はそのwikiを見ながら魔法の欄が二週間前で止まってるなぁと思った。
今の私の魔法の数はレベルと同じ十個で、これの他に『インパクト』という触れた相手に衝撃を与える魔法、空気から水を生み出す魔法の『ウォーター』、光の弾丸を放つ『ライトバレット』、魔法を時間差をつけて放てる『タイムラグ』、複数の対象に電撃の攻撃を与える『スパーク』···これらが今使える魔法だ。
特に『インパクト』は『ショック』と同様に派手ではないが、触れれば効果が発動するのでタイムラグと合わせて同時発動すれば、リベンジしたオークを更に早く倒せたかもしれない。
まぁまた試す機会はすぐにでもやってくるだろう。
そう思っていると私宛にメッセージが届くのであった。
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