新人育成Ⅱ
「二人は能力測定どうだった?」
食事も終わり頃に私がそう聞くと、山田と椎名はこんな感じでしたと測定結果が出た用紙を渡してきた。
私が受け取って見るとこう書かれていた。
【山田洋介】
·レベル 一
·腕力 七 下級下位
·脚力 九 下級下位
·体力 十三 下級中位
·魔力 〇 下級下位
·適性魔法
炎◎
雷△
·耐性 火◎水○風△雷◎土✕雪○草✕闇△光○
毒△火傷○眠り○麻痺○呪い○石化△魅了✕
·適性職種
タンク
剣士
忍者
【椎名華澄】
·レベル 一
·腕力 三 下級下位
·脚力 四 下級下位
·体力 九 下級下位
·魔力 〇 下級下位
·適性魔法
水◎
光○
土○
·耐性 火◎水◎風✕雷◎土○雪◎草✕闇○光○
毒✕火傷△眠り◎麻痺○呪い◎石化✕魅了△
·適性職種
治癒士
詩人
となっていた。
魔力が〇なのはレベルが一だからであり、それほど気にする必要は無い。
二人は私が動画で出したステータスに比べて低い事を気にしているが気にする必要なんて無い。
「最初は低いかもしれないけれどレベルが上がれば自然と伸びていくから気にする必要なんて無いよ」
「それよりも適性職の方だね。山田君は前衛、椎名さんは後衛と綺麗に分かれているから後々の武器の選択とかはこれを参考にすると良いよ」
と私が言う。
「魔法とかもレベルが上がれば使えますかね」
山田が聞いてくる。
「下級中位···レベルが十までに魔法が覚えられる人がだいたい探索者の八割って聞いているね。魔法が全然使えない人も居るけど、そういう人は身体能力の上がり幅が高くなってるらしいから良し悪しかな~。さっきの問の答えは人それぞれとしか言えないね」
と答える。
「でも二人は魔法の適性に◎があるからたぶん早期に覚えられると思うよ」
と付け足す。
まぁでも初心者のうちは前衛や後衛、魔法の有無関係なく下級下位共通の戦闘スタイルになってくるので気にする必要はほぼ無い。
有れば便利程度の認識だ。
食事も終わり、私は誓約書を二人の前に出した。
これからチームとして動く以上金銭のやり取りやレッスン料など前に口頭で話した事を纏め、しっかり書面に残すことと、揉めた場合に探索者協会にこの書面を予め提出しておくことで仲裁の基準にすることができる。
二人共誓約書の内容を何度も確認し、実印を押す。
私も二人を騙そうとかそういうのは無いので簡潔に書いたつもりだが、大丈夫だろうかと少しヒヤヒヤした。
同意が取れたので、内容を三人で写真を撮った後に私が代表で、探索者協会の窓口に書類を提出した。
これでチームアップは完了だ。
休憩と食事をしたので、早速ダンジョンアタックに向けた準備を始める。
向かったのは初心者探索者を専門としているお店だ。
「経験者からアドバイスが貰えない場合はこのお店の初心者探索者セットA、B、Cから選ぶのが無難かな」
「セット毎に入っている品が違いますね」
「Aは洞窟タイプのダンジョン用、BとCは草原タイプのダンジョン用で男性がB、女性がCだね。ナイフ、バッグ、ベスト、ヘルメットに小物類が入っていて、割引が効けばお値段が五万円を下回るからね」
これは凄いお得なセットでもあるが、バッグが男性用でも三十リットルと少し小さく、ベストも無いよりはマシ程度であるため今回は私が居るのでセット買いはしない。
「まずはナイフから見ようか」
ナイフを販売しているエリアに行く。
ナイフにも種類があり、オススメはサバイバルタイプ、ユーティリティタイプ、アメリカンボーイタイプの三種類であり、形状がやや違うがどれも万能型のナイフである。
折りたたみできるタイプは持ち運びが楽だが、耐久性が劣るため、私の場合、太ももや腰のベルトに固定して抜き取る形での運用をオススメしている。
逆に初心者にはオススメしないのがタガータイプで殺すのには向くのだが、素材を回収しにくいという欠点がある。
素材は初心者はメンテナンスが楽なステンレス製がベターであろう。
「まずは性能だけに着目して選ぶと良いよ。デザインとかは戦闘が慣れてきたらだし、ナイフはあくまで消耗品だからね」
二人はガラスケースに置いてあるナイフとカタログを見比べ、同じサイズのダミーを実際に腰にベルトがある想定で当ててみたりしながら選んでいく。
カバー含め無難な物を選び、次はバッグだ。
バッグは男なら四十五リットルサイズ、女性は三十リットルサイズが標準となる。
なるべく軽くて補助ベルトが多めのを選ぶと良い。
補助ベルトがあることで重量が肩だけでなく体全体に分散されるので比較的長時間活動することができる。
最初の慣れないうちは赤字覚悟で魔石だけの回収でポーチだけでも良いかもしれないが、今回は予算もあるので二人共大きめのリュックを選び、カートに入れる。
私も四十五リットルのリュックを二つカートに入れた。
続いてベルトは穴が空いているのを選ぶと良い。
別売りになるがフックを装着することでナイフを吊り下げたり、小物入れのポーチを腰から下げることができるので安いベルトより分厚く穴部分が金属製なのがオススメ。
ベストは値段的に暖房服以上の役割が無いので、気温が外部と違うダンジョン以外は要らないだろう。
一応二人はそれぞれ一万円程度のベストをカートに入れた。
ヘルメットは顎まで覆えるフルフェイスが良い。
ここのコーナーならば一万五千円でそこそこ良い物が買えるのでデザインさえ気にしなければ初心者のうちはこれで良いだろう。
私の場合は配信者なので顔が見えやすいように工事現場タイプのヘルメットにしているが···
後は小物入れや補助パーツ、ダンジョンでよく使うビニール袋類をカートに入れてお会計をする。
探索者証明証に何年何月何日発行というのが記録されているので、発行から一ヶ月以内の初心者は一割の割引が効くようになっているので二人は山田が十二万、椎名が十一万と予算内で購入することができた。
私も予備のナイフやリュックを翼に固定するベルト等を含めて十万円近くの出費だが今回はこれでよいだろう。
荷物は私のは宅配で家に送って貰うようにし、二人の荷物は私の車に積んで、私のアパートに撮影するために戻ったのだった。
「ここがイブキさんの家ですか···」
「動画でアパートなのはわかってましたが防犯意識皆無のアパートですね」
「普通に下着干してるし···」
「そこら辺は元男の意識が抜けなくてな。周り田んぼや畑だし、気にする人も居ないからな」
「でもアパートの住民が他にいるのでは?」
「あぁ、私のパソコンの師匠であの人は信頼できる人だから大丈夫だよ···ささ、撮影を始めるよ」
買ってきた物を床に広げて撮影を始める。
まずは新人を実際に教えながら独り立ちするまでを撮影することにしましたと報告し、二人に苗字だけの自己紹介をしてもらう。
そこから今日買ってきた物を順に買った理由と合わせて説明していく。
十五分の時間に収まる様に調整しながら最後に配信でも当面はこの三人で潜ることが多くなると思いますと報告して動画を終えた。
「じゃあありがとうね〜、明日から実際に潜るから今日はゆっくり休もうか」
「「はい!」」
「じゃあ家に送るねー」
二人を家まで送り今日は解散となった。
私は家に戻ってテロップを付けたり等の編集とアップロードをしてから休むのだった。
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