岐阜県百合ヶ丘探索者支部
探索者協会···元々は企業の利益を仲介するのとレベルの概念とダンジョンについての研究をしていた企業だったが、今日には日本のダンジョン管理を事実上担う企業だ。
本店は東京都の大田区にある巨大上級ダンジョン【ミレニアム】を中心としたダンジョン都市の中央に建てられた巨大な商業施設が探索者協会本部として名高い。
そんな探索者協会の支部はダンジョン都市と呼ばれる多数のダンジョンとその利益に群がる企業により整備された都市に存在する。
私の住む岐阜にもダンジョン都市が存在する。
岐阜最大の街···百合ヶ丘市。
元々は別の名前であったがダンジョン都市になったことで地名が変わったちょっと特殊な街だ。
街の人口は六十万人と岐阜市よりも多くの人口が集中している。
多くは街が形成される初期に移住し、移住制限がかけられる前に根付いた住民達である。
私が住んでいる所から車で二時間···百合ヶ丘にある探索者支部へと到着した。
この支部も他の支部と同様に巨大な商業施設となっており、武器や防具、地域のスーパーでは売られていない食材、ダンジョン内で野営するときの道具等、ダンジョンで必要な道具が多く売られている。
この商業施設の特徴として逆にダンジョンに関係の無い物は取り扱っていない事が挙げられる。
フードコートもダンジョンの食材を使っていない店は無いし、衣服も流行りの私服みたいなのは売ってない。
それと商業施設の内部に探索者証明証の発行や更新の窓口が存在する。
更新するついでに装具を見直そうという客を取り込む戦略なのだろう。
広い駐車場に車を停めて、探索者証明証の更新窓口に向かう。
受付のタブレットに探索者証明証の更新と能力の測定を選択した。
ここでは能力値と呼ばれる物をレベルだけでなく測ってくれる。
一回二千円取られるが、この体になる前の能力と比べることができるだろう。
受付番号と変更理由を書き込む用紙を渡されたので、天使病による容姿と性別が変化したためと書き込み、順番が来るまで椅子に座って待つ。
周囲を見渡すが私みたいに天使病に感染した人物は見当たらない。
背中に翼が生えた人物や悪魔みたいなのは居るので類似した病気があるらしい。
暇なので容姿が変わる病気と調べると天使病の他に悪魔病が出てきた。
天使病が天使の容姿になるなら悪魔病は悪魔みたいな容姿になる病気らしい。
これもダンジョン病の一種らしい。
他には体の一部がモンスターの様になる病気もあるらしい。
天使病や悪魔病は全身が病に侵食されるので治療は不可能だが、モンスター化する病気はその箇所を切除してから回復魔法を数日以内にすれば元に戻るらしい。
中には戻さない変態もいるらしいが···そういうことで障害者手当を不正受給しようとした者がいた事で今では治すのが普通である。
そんな事を調べていると受付番号が電光掲示板に表示されたので指定の窓口に進む。
窓口に変更理由の用紙を提出し、係の人が確認し、判子を押され、用紙を持って写真撮影をする列に並ぶように言われる。
車の免許センターみたいに流れに沿って写真を撮影し、新しい探索者証明証ができるのを待つ間に能力測定を受ける。
ここで受けられるテストは腕力、脚力、体力、魔力、各種耐性を測ることができる。
それぞれ計測があり、腕力は人から微量の魔力を吸うことで徐々に重くなる物質を何秒持っていられるかの秒数で腕力を測る。
脚力は反復横跳びと一発勝負の50メートル走の回数と秒数、体力はシャトルランの回数、魔力は触れるだけで魔力総量と適性の魔法を数値と色で表すマジックアイテムを使う。
最後に各種耐性はアレルギー検査の様にそれぞれの属性を持つ物質を皮膚に当てることで四段階で判定する。
まずは腕力から
「では百二十七番の方、測定を開始します。楽な姿勢で物質を持ってください」
試験官の方に正方形の物質を台座から持ち上げる。
計測が始まり徐々に重くなっていく。
前回は三十秒で耐えきれなくなり台座に戻したが、まだイケている。
一分が経過した所で限界に感じて物質を台座に戻した。
「記録一分十秒ですね。次の測定に向かってください」
そう言われ私は体育館の様な場所に移動する。
そこでは前の方達が記録を録っていた。
靴を脱いで待つように言われ、下駄箱の様な場所に靴を置いて列に並んで待っていると、私の番号が呼ばれた。
「百二十七番さん五十メートル走の測定を開始します」
位置についてよーい···ドンとスタートの合図で走り抜ける。
記録は五秒〇一と表示された。
前回は七秒台前半だったので二秒近く速くなっている。
反復横跳びも四十回だったのが七十回と大幅に上がっていた。
続いてシャトルランだが利き足にバンドを着用する。
バンドが線を超えていたら記録が取られる仕組みらしい。
自分の他に五十人程が集まり、一斉にスタートする。
最初は余裕であるが、五十回を超えた辺りで脱落者が現れ始め、百回を超えた辺りで半数が脱落していた。
このシャトルランは大人用なので学生の頃にやるシャトルランよりも音の間隔が短い。
なので百回を超えていれば凄まじい速度となる。
私も百二十回で脱落したが、最後まで残っていた人は二百八十回まで続いていた。
聞くところによると星持ちの方だったらしい。
上級上位でも二百行ければ凄いらしいので私の百二十は下級上位の平均くらいらしい。
続いて魔力の測定を受け、水晶玉みたいなのに手を触れると横の機械に六十七と表示された。
水晶玉の色は白の中に黄色の点が点在していた。
これはネットでやる簡易の適性テストよりも正確で、適性がある物には○か◎が付くようになっている。
前回の測定では魔力は五の雷属性に○が付いていた感じだったが、今回はどうだろうか。
最後に耐性テストを受ける。
九つの魔法の属性に毒、火傷、眠り、麻痺、呪い、石化、魅了のベターな七種の状態異常への耐性がわかる。
まぁ検査キットを腕に貼られて数分待機して、順番にお医者さんに見てもらい変色具合から測定してもらう。
全ての測定が終わり、検査結果の用紙が渡された。
【後藤伊吹】
·レベル 二
·腕力 十八 下級中位
·脚力 二十九 下級上位
·体力 二十八 下級上位
·魔力 四十二 中級中位
·適性魔法
光◎
雷○
水△
·耐性 火◎水◎風◎雷◎土○雪◎草◎闇△光◎
毒◎火傷◎眠り○麻痺◎呪い○石化◎魅了○
·適性職種
魔法使い
魔剣士
治癒士
タンク
「すっげぇ」
闇魔法以外に全耐性持ちの能力値もレベルに似合わずに相当高い。
ただそうなると前のオークは下級ダンジョンのボスだから平均が下級上位のステータスがあることが推測できる。
下級上位の腕力で投げつけられた石が命中したと考えれば確かにあんなダメージを受けるだろう。
証明証の更新も終わり、せっかく遠出してここまで来たので百合ヶ丘支部の内部を物色する。
量産品の剣や槍、メイスから、魔法の威力を増す杖や指輪、腕輪、趣味全開の鉤爪やら七色に光るゲーミングカラーの短剣、なんかをそれぞれ専門の店が扱っていたり、最新モデルから型落ちまで幅広いリュックやポーチを扱うお店、ダンジョンのモンスターの繊維で作られたベストやズボンを扱うお店等、百店舗以上が犇めいている。
「専門店の出張所みたいな感じか。ここに無ければカタログを見て本店から取り寄せるみたいな」
フラフラと魔導書を扱うお店に入ってみる。
ダンジョンの宝箱から極稀に羊皮紙で作られた本が出てきたら百パーセント魔導書である。
魔導書は適性外でも魔導書に書かれている魔法が使えるようになる書物であり、一つ最低買取額が一千万。
過去のオークションで売られた『転移』という一度行った場所に行けるという魔法はその便利さと希少性から二百億の値段が付いた事も有った。
ただ魔導書は一度読んでしまうと紙屑となって消えてしまうので一度切りの書物となっている。
使った人の話だと読むというより頭に刷り込まれるらしいが···
この書店にあるのは全てダミー品で、購入したら、後日指定された場所に届けられるそうだ。
私も魔導書を見つけて大金持ちになってみたいものである。
まぁ宝くじに当たるような物なので中々難しいが、低級ダンジョンでも出る時は出るらしいし、複数回同じダンジョンで出ることもあるらしい。
そういうダンジョンは人気ダンジョンになるのだとか。
魔導書の書店から出たら、今度は普通の書店に入る。
買うのは一年毎に出版される岐阜県内の全ダンジョン特集と魔法の練習方法が書かれた書物である。
各県の全ダンジョン特集は一つの県事に、一冊八千円と高価であるものの、ネットよりも詳しく書かれており、ネットで色々と検証する時間を大幅に短縮することができるし、一年かけてみっちり調べられるので安全性も担保されている。
魔法の練習方法の本も千円クラスを数冊購入し、ついでにオススメ武器について書かれた本も購入して店を出るのだった。
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