現状の確認
借りている安アパートに戻り、現状を確認しよう。
まず容姿···超絶美少女
俺の感性かもしれないけれど長い青黒い髪に大きな青色の瞳、高い鼻、そして小顔···俺を構成していたパーツが何一つ見当たらない。
胸デカい。
手のひらで覆っても先端の一部しか隠しきれない。
ポヨンポヨンと動くたびに弾む。
太もも太い。
パツパツで張りがやばいし、尻も触った感じ引き締まっている。
頭上のエンジェルリングと言えば良いか?
それも神々しく光っているし、背中に浮いている(触った感じ背中から生えているわけではない)翼も片翼だけで俺の胴体位の大きさがある。
まさに天使って感じだ。
「ヤブ医者が言うには女として生きていくしかないっぽんだよなぁ···ブラと下着はとりあえず揃えねぇと」
今まで履いてきたパンツがそもそも太ももが太すぎて入らない。
今はネタで買っていたふんどしを着用しているが、天使の体にふんどしはAVのネタにしか見えない。
ブラなんて物もないし、シャツを着るのにも一苦労だ。
「でも悪いことばかりじゃないな」
今まで苦労してきたゴブリンやスライムを拳で倒せる事がわかった。
これだけで、今までよりもダンジョンで多く稼げるだろう。
次にレベルの確認だ。
俺は探索者協会から全探索者に渡されている簡易測定機でレベルを測ると一と表示された。
「おいおいレベル下がってるじゃねーか! ···数年で頑張って三まで上げてたのに!」
ただ一旦冷静に考えると、レベルが下がったのに身体能力は大幅に上がっている。
つまり
「強くてニューゲームみたいな感じか?」
と考えを改める。
ゴブリンを一撃で仕留められる腕力があればレベルが上がるのも早いだろう。
レベルが上がれば更に稼げるダンジョンに入場することもできる。
そうすれば生活水準も上げられるだろう。
「運が向いていたと考えよう。そうしよう」
俺はとりあえずダンジョンで長時間活動できる準備を始めるのだった。
「店員さんに測って貰ったが店頭ではそのサイズのブラは取り扱ってないって言われたから通販で買ったが···一着三千円かよ···毎日洗うことを考えると五着で一万五千円···これに店頭で買えたショーツも五着で一万円···これだけで二万五千円」
シャツと短パン合わせても千五百円で済んでいた男時代と比べると女性が服に時間をかけるのがなんとなくわかった気がした。
「そりゃ時間をかけるわな」
シャツはサイズが少し合わないが元々着ていた奴がまだ使えるから良し、手足のサイズも変わってないから今までの安全靴で事足りるだろう。
黒色のツナギを着てみるが、やっぱり胸の部分でチャックが上がらなくなる。
「ツナギも新調か···トホホ」
作業用の長袖ツナギもネットで購入し、下着も合わせて届くまでの間に天使病について色々と調べてみると、文字通り1から身体が変化するため魔法の適性が無かった人物が魔法が使えるようになることもあるらしい。
「魔法か···」
俺の記憶が正しければダンジョンが出現し始めたのは五十年前からで、世界は大混乱だったらしい。
他国が軍を投入する中、自衛隊のキャパをオーバーしてしまった為に民間にダンジョンを開放し、駆除をさせていたらそこで取れる素材を各企業が研究し、服や機械の素材として使いだしたらコストパフォーマンスも性能も良くて、一気に既存の製品を駆逐していったんだとか。
そんな不思議なダンジョンにはレベルという概念があって、そのレベルの概念の発見とダンジョンの利益を各企業と調整したのが今の探索者協会という組織。
今ではダンジョン探索者を育成する学校の運営から魔法を使った医薬品や病院の経営、ダンジョンで取れるマジックアイテムのオークションの運営等もしているらしい。
一応国営ではないので一企業なのだが半国営みたいな感じか?
話が逸れたが、レベルが上がると身体能力が必ず上がり、魔法が使えるようになることがある。
火の玉を生み出す『ファイヤーボール』、電撃で攻撃する『サンダーボルト』、怪我を治せる『キュア』等様々だ。
魔法が使えなくても身体能力が上がるだけでも凄まじく、プロスポーツがダンジョン出現後に軒並み衰退してしまった。
普通に鍛えるよりもダンジョンでレベルを上げた方が強くなれるからだ。
ダンジョンに潜っていない古武術の達人が探索者では中級クラスの者にコテンパンにされたという衝撃的な実例もある。
今の世の中レベルが全てになってしまっているし、レベルが上がりやすいか上がりにくいかで平均収入も大きく違ってきて社会問題になっている。
まぁレベルが低くても頭が良ければ現代社会高い地位に行けるが、レベルが低くて頭が悪い···金も無いという私みたいな者は低い手取りで、こうやって毎日忙しなく働くしか無い。
「私はチャンスを運良く掴んだんだ。これを好機と捉えないでどうする!」
二十数年共にした息子は消えてしまったが、圧倒的な容姿と力を手に入れた。
そう考えればトラップに引っかかったのは良かったのかもしれない。
「とりあえず魔法だ。魔法を使ってみよう」
ネットで魔法について検索すると、使う魔法をイメージしながらそれを言語化することで魔法が使えるようになるらしい。
なので一般的に『ファイヤーボール』というのも『火の玉よ』とか『豪炎の神よ漆黒の我に力を与え給え! 焔!』みたいなのでも良いらしい。
大切なのはイメージと適性なのだとか。
適性は探索者協会がしている六十問の適性テストをネットで受ければわかるようになっている。
勿論気持ちに素直で受けなきゃならない。
魔法は火、水、風、雷、土、雪、草、闇、光の九属性で成り立っている。
魔法が使えても大抵が一種類から二種類使えるのが普通なのだとか。
五種類以上使えると賢者と呼ばれる。
俺も改めて適正テストを受けてみると光と雷に適性があるようだ。
「雷は前もあったが、光か···絶対に天使になったからだよな」
俺は光魔法で定番の『ライト』という光を生み出す魔法を使ってみると、光り輝く丸い球体が手からこぼれ落ちた。
ビー玉サイズであるが、部屋を明るくするくらいには光源として力がある。
「おお、本当に魔法が使えた。雷の魔法が使えるかはわからないけど光魔法が使えるなら攻撃に幅が出る」
魔法の良いところは弓矢のよりも連射ができることだ。
それでいて中遠距離をカバーできるし、ダメージも弓矢よりも大きい。
また魔法でないと倒しにくいモンスターもいる為魔法があると何かと便利なのだ。
「とりあえず衣服が届いたらダンジョンに潜る。財布も貯金も寂しくなってしまったから···」
まずはこの体でダンジョンに慣れる。
それからだ。
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