天使になっちゃった!?
天使病
「どうも皆さんこんにちは! 探索者の伊吹です! 今日も近場のダンジョンを攻略していこうと思います!」
俺の名前は後藤伊吹···何処にでもいる底辺ダンジョン配信者だ。
今日も今日とてダンジョンに潜って動画を回す。
初めの頃は配信なんてしないで黙々とダンジョンアタックを繰り返していたが、なかなかレベルが上がらずにずっと低級ダンジョンでゴブリンやスライムと戦う日々。
毎月二十日ダンジョンに潜って手取り十一万···正直べらぼうに安い。
ただもう少し頑張ればレベルが上がるかもと期待をしてしまい、そのままズルズルとこうしてダンジョンに潜っている。
趣味となった動画配信も底辺男性が黙々とダンジョンを潜る動画等需要があるわけもなく再生数は一桁から二桁を行ったり来たりしていた。
「動画配信でバズるか、レベルが上がって上位ダンジョンに行けるようになれば話は変わってくるんだろうけど···はぁ」
配信にのらない様に声を小さくしながら独り言を呟く。
まぁ家に帰ってから編集をしてこの部分はもしのっていてもカットするが。
そう呟いていると壁の横に何やら箱の様な物が落ちているではないか。
「やりました! 今日はツイていますね! 宝箱です! ミミックの可能性もあるので慎重に···」
愛用のナイフで箱を突き、反応が無いことを確認して箱を開く。
顔を近づけたその時、ボワっとガスが噴出してきた。
「うぇ! ゲホゲホ! 毒ガスのトラップかよ! あ、ヤベ···意識が···」
低級ダンジョンだからトラップの類は無いと油断していたため、ガスをモロに喰らって、俺は意識を手放した。
「だぁ、糞ったれ、失敗した」
起き上がるとガスのせいか声が高く感じる。
とりあえず高かった頭に付けているカメラが壊れていないか確認し、録画ボタンを切ってカメラを顔に近づけると···超絶美少女が映っていた。
「は?」
顔を触ると髭のジョリジョリ感が無い。
ぷるぷるモチモチの肌ざわりだ。
そのまま下を見ると山脈が二つ盛り上がっている。
触ってみると確かな弾力と反発してくる肉感を感じた。
そのまま手を下に移動するとあるべき場所に息子が消えていた。
「え、ええ〜!?」
俺? いや、私は体の変化に戸惑い、絶叫してしまった。
「天使病、エンジェルウイルスだね」
病院の先生は冷静に俺の病状をそう診断した。
「天使病って?」
「頭に白銀の輪っかに白い翼が浮いているよね。それに美少女に体が変化するのが天使病だよ。ダンジョンでの極稀に起こる病でね。別段死んだりする病じゃないけど体が大きく変化してしまうんだ。治療法は無いから、諦めてこの体で生きていく覚悟を決めた方が良いよ」
「いやいや、ハイそうですかってなるか!」
「いや、こっちも打つ手がないんだよ。別に美少女になるんだから最初は戸惑うかもしれないけどその姿で頑張りなさいな。あ、性別の変更手続きはこちらからやっておくから安心しなさい」
そう言われて診察室から追い出された。
病院は宛にならない。
こう言うときのネット掲示板だ。
私の病状を理解してくれる人がいるかもしれない!
1:名無しの住民
助けてくれ、天使病なる病に感染してTSして美少女になったんだが!?
2:名無しの住民
糞スレ乙
3:名無しの住民
ホンマ美少女なん?
4:名無しの住民
天使病か、ダンジョンでの病気の一種やね
まぁアキラメロン
5:名無しの住民
ダンジョンの病って色々あるけど即死とかじゃないから良かったんじゃないか?
美少女なら不細工な男より需要あるで。
6:1
クソみたいなレスしか帰ってこないやんけ
7:名無しの住民
お前が糞定期
8:名無しの住民
こんな時間に板に張り付いている住民に聞くなカス
9:名無しの住民
やだ、この板治安悪くない?
10:名無しの住民
解散解散
ホンマ使えねぇな!
ネットの団結力はどうした!
助け合いの精神を忘れたのか!
···まぁでも落ち着いて考えれば人生をリセットできたと考えればまぁ良いか?
天使になって身体能力が向上しているかもしれないし···
物は試しだ。
色々やってみよう。
家の近くの低級ダンジョンにいつもの様に顔を出す。
ダンジョンを管理しているおっちゃんに入場料を渡すが
「天使の嬢ちゃん別嬪さんだね。どうだい、ダンジョンから帰ったら食事でも」
と言われた。
いつもの反応とぜんぜん違うやんけ!
「あ、大丈夫です。今日は軽く来ただけなんで」
「そうかいそうかい! いつでも声かけてくれな。助けになると思うから」
おっちゃんそんなキャラじゃねぇだろ!
もっと高圧的な感じだったろと口に出そうになるのを必死に堪え、ダンジョンの中に入る。
ダンジョンの中は洞窟みたいになっており、薄暗いのでヘットライトで周囲を照らすのが定石だが、もしかしてと思い、頭に浮く輪っかに力を入れると光りだした。
「めっちゃ明るいやん」
ヘットライトよりも明るく、より奥の方まで見渡す事ができる。
「もしかして翼も飾りじゃなくて飛べたり?」
と服の上にくっついている翼に力を入れると体が浮き上がった。
勢いよく浮き上がったので天井に頭をぶつけたが、ヘルメットのお陰で無事であった。
「あっぶね、でも飛ぶというより浮く感じか。浮いていれば足音しなくて済むから光の量を調節すれば、音に反応するモンスターには良いかもな。後は立体的に行動できるな」
光を出せる、浮ける事を確認し、次はモンスターに攻撃をしてみることにする。
ちょうどよくスライムが居るのでナイフでスライムを叩いて見るとナイフが想像よりも早く振れ、スライムは一刀両断。
コア部分が綺麗に割れてその場にスライムの粘液だけが残されていた。
「あれ? 軽く振ったのに前の全力よりも動けてね?」
続いてゴブリンがこちらに気がついたのか向かってきたのでナイフを構えると、先程叩きつけた為地面にぶつかった拍子に刃こぼれしてしまったのでナイフが使えなくなっていた。
「ええい、素手でもなんとかなるか!」
どっせいとゴブリンを殴りつけると、ゴブリンは勢いよく飛んでいき、壁にぶつかって動かなくなった。
「···めっちゃパワー上がってる」
天使になったことで力も上がったのか凄いパワーが出せた。
とりあえず探索は辞めてこの日はこれで切り上げるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます