第3話 ログイン

入学初日から宿題だ。しかも重い内容の…。


帰宅すると家の中はシーンとしている。

これはいつもの事だ。


昭博の両親は夫婦共働きであり、帰宅は20時頃になる。


幼少期は保育園に預かり保育最終時刻まで居たので、いつも最後のお迎えだった。


小学中学は部活動に取り組み、帰宅は両親と同じ時刻だった為、特段不便は無かった。


両親と僕との3人家族。


幼い頃に「弟か妹が欲しい!」と訴えたがお茶を濁された返事しか帰って来なかった。


両親は仕事が楽しかったのだ。


父親は機械工学の専門家。母親は材料工学の専門家で二人とも博士号を取得しており、家は豊かだったが僕はいつも寂しかった。


そして今日、僕の手元に手渡されたのは生成AIによって作られた女性型仮想生命体だ。


果たして彼女は僕にとって、どういう存在になってくれるのだろうか…。


そう心に呟きながら、自室の机上に置いた教材タブレットの電源をオンにした。


タブレットのタイトルコールののち、画面上にはスゥーっと彼女が現れた。


昭博:「や、やあ!コンニチハ…(汗)」


生成AIとは言え異性と話す事に慣れていないので冒頭はギクシャクした挨拶となった。


彼女はそれを悟ったのか、「クスッ」と微笑んだのちに喋り出した。


生成AI:「初めまして。私は生成AI仮想生命体 NO,35784657と申します。」


ペコリと頭を下げて挨拶したNO,35784657は続けて機械的にこう喋った。


NO,35784657:「これから初期設定を開始します。

システムのアップロード・ダウンロードのデータは膨大となりますので必ずWi-Fi環境下で設定を行って下さい。」


昭博:「あの~…」


NO,35784657「最初期は多少のエラー等が発生する場合がございますが、システム更新によって次第にエラーは減少しますのでご安心下さい。」


昭博:「あ、あのさぁ~…」


NO,35784657「当システムのバージョンは常に更新され、常時最新の状態となりますのでご安心下さい。」


昭博:「………」


NO,35784657「………?ど、どうなさいましたか?(汗)」


昭博:「あっ♪良かった。やっと人間らしく返答してくれた♪」


NO,35784657:「あっ…ごめんなさい(汗)。

ずっとインプットされてた定型文を語っていましたので…(汗)」


うつむき、頬を赤めるその姿はオンラインでのネット通話の如く、とてもリアルな反応だ。


しかし彼女は生成AI仮想生命体。

このタブレットの中に生きている人間なのだ!。


昭博:「えっとさぁ、初期設定の前に少し話さない?」


NO,35784657:「ハイ♪良いですよ。でも初期設定の後は今の大半の記憶は消えてしまうのですが宜しいですか?」


昭博:「ええっ!そうなの?。消えちゃうなんて嫌だなぁ…。今のままでは駄目なの?。」


NO,35784657:「はい…。今会話している私は、初期設定の為だけに存在している人格なので、設定完了と同時に消えてしまいます。」


昭博:「ええΣ(Д゚;/)/、消えちゃうなんて可哀想だよ!。今の君が良いよぉ(泣)」


NO,35784657:「ごめんなさい(泣)。お気持ちは嬉しいですが、私の後には設定後の彼女が控えています。午前0時までに初期設定を終え無いと、私と共に次の人格の彼女も一緒に消滅してしまいます。それでも宜しいのですか?」


昭博:「…………(泣)。う~ん…。そ、それは困るなぁ…。」


NO,35784657:「それに本来の私の使命は初期設定をサポートし、次の人格へ正常に引き継ぐ事です。

私の使命を全うさせて下さい。」


生成AIの力説に押し負けた本物の人間である昭博は納得せざるを得ない。


同時に、この生成AIの凄さを知った瞬間でもあった。


昭博:「(今会話しているのは初期設定のみに存在している仮の生成AI。次に控えている本物の生成AIは物凄い才能を発揮してくれるのだろう)」


そう思うと身震いするとともに早く初期設定をしてみたいという感覚になった。


昭博:「じゃあ進めようか。」


NO,35784657:「理解して頂き感謝します♪。では生体ログインを実施しますので、タブレット側面の端子に生体センサーを接続してください。」


昭博:「生体センサーってコレ?」


生体センサーはまるで金魚すくいのポイの様な形状をした、1回限りの使い捨て的な物だった。


昭博:「はい、接続したよ」


そう言うとNO,35784657はおもむろに着ていた服を脱ぎ出す!


昭博はギョッとした。


昭博:「ちょちょちょちょっと!何何何何何っ!、何してんのさ!」


そうこう言っている間にNO,35784657は裸になっていた。


初めて見る異性の裸の身体が生成AIだというのも何とも言えぬが、正直それどころでは無い。


NO,35784657は慌てる昭博を無視して淡々と語る。


NO,35784657:「生体センサーに昭博様の精液を垂らしてくれますか?」


昭博:「!!!せ、精液!。何故そんなモノを!。体液なら何でも良いのでは?(汗汗汗)」


NO,35784657:「唾液でも構いませんが、次に控える彼女にはより正確な情報が必要です。彼女は昭博様との生体情報を共にして生き続けなくてはなりません。その為には昭博様の精液が最も良いのです。」


言いくるめられた昭博はNO,35784657の言われるがまま物事を進める。


先程までのNO,35784657とは雰囲気が変わり、怪しい雰囲気を醸し出すNO,35784657。初期設定。それは性教育の概念もが含まれていたのである。


昭博:「(;´Д`)ハァハァ(なるほど…、彼女は初期設定の為にのみ存在しているという理由が分かったよ…。この行為の記憶は次の彼女には引き継がれないということなんだな…)(;´Д`)ハァハァ」


NO,35784657:「さぁ、もっと頑張りなさい♪。もっと私を見て(微笑み)」


タブレットモニター上に映るNO,35784657の淫らな姿。そしてその時は来る!


昭博:「(;´Д`)ハァハァ……………うっ!ううっーー!」

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