迷宮

ギルバートが通うことになったイザヤ学園というのは、ほかの都市や町で見られるような一般的な学園ではない。

色々違う点はあるが、特筆すべきなのはその規模だろう。

“塔“直属の学園ということもあり、その規模は都市全体にまで広がっている。

学園そのものが巨大であることは言わずもがな、学園の土地の周辺には生徒用の、これまた巨大な訓練場があり、ほかにも所属している生徒、もしくは教員は、宿泊施設や飲食店を少し割引きで使用することができる。

この都市にある役所も学園が運営しているものだし、都市に関連する条例のあれこれというのも、すべて学園が関係している。

これが、この都市が”イザヤ学園都市”とよばれる所以なのである。


そんな学園都市で、一人の少年が、絶賛迷子してる最中だった。


「…この学園、いくらなんでも広すぎる…」


前述の通りこの学園は他の学園と比べあまりに巨大なので、案内人の助けなしでこの学園を探検してやろうという思いは自殺行為に他ならなかった。

無論そんことを知っていたら迷子なんてしていなかったであろう田舎者の少年は、入学手続きをするための場所であるエントランスにたどり着くことすらできず絶望していた。


「いや、確かに僕は学園の正門から入って真っ直ぐ建物の中に入ったはず…ん?第1エントランス…?」


そう、この学園、あまりに巨大すぎるせいで入り口が何個もあり、役所代わりになっている学園正面の第1エントランスのほかに、裏側から入ることのできる第2エントランスがある。

そしてギルバートを含めた何人かの特別推薦枠の生徒は、この第2エントランスで手続きをする必要があるのだ。


「なんで同じ建物にエントランスが2個もあるんだ…?」


田舎者故に事実を受けてとめ切れていないギルバート少年には申し訳ないが、正面から第1エントランスに入り、そこからさらに第2エントランスに行くということは、

複雑怪奇、もはや迷路と化している学園内を案内人なしで突き進まなければならないということで、

そんな事実を知りもしなかったギルバートが、今更帰り道もわからないのでとりあえず手探りで目的地を目指さなければならないということであり、

言うなれば”詰んでいる”状況だというのは、学園に一度でも足を踏み入れたことのある人間であればすぐにわかることであった。


「…とりあえず進むしかない。最初は早すぎるかと思ったけど、2時間も前にここについたのは正解だったかも。」


そうしてギルバートは歩き始めた。

果たして、ギルバートはこの迷宮を突破し、無事入学手続きをすることができるのだろうか………!!!!!


「うん。全くわかんない。」


うん。知ってた。


1時間ほどの格闘を経て、遂にギルバートはあきらめたのだった…

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