第57話 賢い反撃
「さて、どうしますかね」
雪乃先生が周辺地図を構えて考えている。
雪乃先生は軍事家も舌を巻くほどの軍事学を身につけている。全ては作品のために。
「どうするって言っても周辺は広い土地か。エネルギー積層技術の外で戦うなら壁に沿って展開し、敵が一方向から向かってくるといいんですが」
「今回馬鹿じゃないし多方面から召喚してくるのは明白です。一方向は難しいでしょう」
「展開すると見せかけて、フィ~さんが亜空間斬りを行うのはどうでしょうか? 少なくとも召喚させるための物質でしたっけ、それを落とすことが出来れば犬人間は出てこなくなりますよ」
悪くない方法だなあ、フィーがどこまで大きく切れるかにかかっているけど。
「一回試したらフィーの近くには来ようとしないでしょうね」
「それでいいんですよ、壁になってくれます。フィ~さんの遠くから召喚し始めたらふぃ~さんが猛ダッシュで斬る振りをすれば怖くなって召喚できませんよ」
「この案は使えますね。フィーさん、真っ先にやってみてください。次に、超大型生物に対してですが」
「前回は巨人にヒキガエルのペットでしたね。ヒキガエルはもうちょっと手前のタイミングででたので、同時ではなかったのですが」
「前回は腐ゆっきー町との共同作戦だった。巨人戦にもかなり精強な正規兵を投入してもらったが、12名だったか、それくらいの死者と30名後半の負傷者が出た。巨人対策は必須だ」
うーんと唸るみんな。やっぱ総攻撃しかないかなあ。
「ルカさん、グラビディって何倍まで敵にかけられますか?」
「ああ、なるほど。10倍までは誰でも。なにも対策してなければ20倍くらいは」
「重くさせて攻撃するってこと?」
「いえいえ、でかい生物って大体自重に弱いんですよ。20倍もかければ即時死にます」
そっか、パオーンゾウのお母さんも自重で死ぬような感じだったみたいだしね。
「わたくしのエーテルが保てば良いのですが」
「かかった瞬間に私がエーテルを渡す、って、犬博士がまだいるか」
「ふふ、おかーさんの出番ね。誰でも飲めるエーテル補充ドリンクを開発したわ。あずきちゃんはこれくらいじゃ全然足りないけど、一般人はこれで十分って量にしたわよ (΄◉◞౪◟◉`) 」
「素材どれくらい使ったの、おかーさん (´▽`*) 」
「わ、私の秘密基地から組み合わせたからそんなでも無いわっ (΄◉◞౪◟◉`) 」
「ゴミ屋敷も役に立つもんだな」
「ゴミじゃないもん 。゚(゚´ω‘゚)゚。 」
よし、それじゃ行きますか。
1日しっかりと寝て休養を取ってから早朝にプレートを置き、護符を剥がす。
「 ア ズ キ チ ャ ン み い つ け た 」
「アズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャン」
「アズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャンアズキチャン」
す、すっげえ増えてる。夜間も構わず召喚し続けたんだろうか。
まあ、どれだけ来ても牙と溶解液しか飛ばさないんじゃたかがしれている。昨晩はおかーさんに頼んでプレートの改良も施して効率化してあるし。
「うっわ、すんげぇ群れ」
見渡す限りの犬博士が突っ込んでくる。そしてある一定の距離を保ち、牙や溶解液を飛ばしてくる。まあこれだけなら余裕。
横からルカさんがM105ガラルドで掃射、ここあがエネルギーマシンガンで撃ち殺していく。
30分も経つと、完全に逃れられない巨大な輪になった。壁からも壁を削る音がするので離れた。
「ここあ、調子はどう?」
「マシンガンが効いているかわからないくらいいるぞ、そっちは?」
「エーテル残量76パーセント。この弱さ何かあるぞー」
そしてそれは突然起こった。犬博士が突撃を開始したのだ。
「うおお、でもエーテルほとんど使わないで封殺できる。各位、他のことに注意を向けろ」
そして明らかに亜空間のひずみがでた。
「フィー!」
突撃して斬る。なんかいろんな素材が落ちてきた。偽博士はでなかったが。
まあそれはいいんだ。問題は30メートルを超す巨人が出現したことだ。
「ルカです、フィーに乗ってもこれは近づけない」
「ボクじゃ対抗できないぞ。火力が足りない。巨人はそこそこ高速に動くんだ、腕で払われたら墜落する」
「だから犬博士を突撃して私を封鎖したのか」
「……作戦は続行するよ。なんとかなる」
「どうやって続行するんだよ」
「引きつけさえいればなんとかなるんですが」
博士の声が聞こえてくる。
「おーっほっほっほ。アズキチャン、もう無理でしょ」
「頭良くてごめんねえ」
「亜空間を斬るのにはびっくりしたけど、逃げちゃったもんねー。うひひひひ」
「ふーん、じゃあ今の状況に気がついてないでしょ」
「は?どういう意味だ。え? うそ? 犬博士が壊滅しているだと?」
「私のサクラ・フレアを甘く見ちゃ駄目だよ。そして巨人はね」
鶴丘家が総動員されて銃撃をしている。
それに惹かれてしまう巨人。
そこを。
「グラビディ20倍!」
かかった瞬間に足から肋骨やら腕の関節やらがバッキバキに骨折して、動けなくなる巨人。
そのまま心臓が潰れて息絶えた。
私は思いきり伸びをする。
「さーて、次の作戦は何かなあ? 素材落としちゃったから無理かなあ?」
「ば、馬鹿にするな! 次の作戦は、次の作戦は――」
私に気が取られているうちに、亜空間が見えるようになったフィーが狙い澄ました一撃を放つ。パオーンゾウの血液のおかげだよう、ありがとうパオーンゾウ。
ポロリと落ちる偽博士。ランニングシャツにブリーフである。どちらも真っ白である。
そしてそのまま頭上から降ってくる、素材に押し倒されていった。
真っ赤な血がにじむ。
「肉塊にならなくて良かったね。血が広がっているから、
素材はもったいないかなーと思ったけど、全部消し去ったよ。最初に落ちた素材はもらったけどね。
「残ったのは奇妙なコアだけか。さっさと削ってもらおう」
電池屋で削ってもらった。何の電池にもしないのは不思議がられたけど。
あとはお礼だね。ミカさんが来なかったら鶴丘家の援護射撃はなかった。
「ありがとうミカさん。あれがなかったら作戦が上手くいかなかったよ」
「ここあから無線が来たんだ、私が機械に乗ってると見越してな。入り口の巨人に誘導射撃をしてくれないかって。こっち側も入り口付近の巨人が見えていたから、総員をあそこに持って行くのは楽だったよ」
「なんであんなにでかい奴を一体だけ製造するんだろうねえ」
「男の象徴なんじゃねえの? しらんけど」
「よう、こーぞー、よくやったぞ」
「ありがとうございやす! うちの功績が認められて階位8位にあがるそうです。総本家にはなんてお礼を言ったら良いか……」
「まじかよ総本家17位だぞ。平身低頭しなくていいのか?」
「綾雪乃先生と一緒に抗議したところです。2階級昇進があってもおかしくないんですけどね。しかし、本当にあの綾雪乃先生とお知り合いなんですね。さすが総本家だ」
「銃ではミカの方が上だが、夜の方で負けんじゃねえぞ、わかったな」
「へへっ、そっちは連戦連勝でして」
「いわんでいいっ」
「雪乃先生、ありがとうございました」
「いえいえ私は何にもしてないですよー。それより皆さんどこに行かれるんですか? やはり日本銀河帝国植民地支部ですよね? 一緒に行きませんか? サイン会があるんですよ」
「いえ、船でウィゼルという島に向かいます。人がほとんどすんでいない分、古代遺跡が残っているようでして」
「そんなー。この後は銀河に出ちゃうから会えるのは当分先ですね。寂しいなあ」
「まあ、ウラシマ効果でほとんど老けてないでしょうから、先生は。私はアンドロイドなんで老けませんし。その時楽しみにしています。オタク語りしましょうね」
「はい! しましょう、しましょう。絶対しましょう!」
「そういえば犬博士を一掃したのどうやったんだ?」
「ん? 拡散型・サクラ・フレアを溜めて、エーテルで照射時間、射程、発射本数とSAKURA濃度を増加してぐるっとな。ちょっと食われたけど突っ込んでくれるから逆に一掃よ。後頭部しか狙わないしね」
「普通の喧嘩じゃ互角だが、エーテルとサクラを使われたら勝てなくなってきた感じがする」
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