第54話 普通のアンドロイドの末路
サトーセン伯爵の客間にて。
「サディスン伯爵から追加報酬もらってきたよー。4000ゼニと500大型コア。鋼鉄を1トン。素材は使ったから入りそうだね。大型コアは入るかなあ?」
――小さい声でバウーと聞こえる――
「入るみたい。とっとと帰るか!」
「展開が速い。サトーセンからも剥ぎ取れ。負けた家だ、勝った方がもらう権利がある」
「何もらうの? アンドロイド使ってないからここは相応に貧乏よ」
ちょっと間が開く。するとルカさんが手を上げる。
「なんでしょう、ルカさん」
「アンドロイド拒絶といっても、隣が飛び地ですから嫌でも素材は入ってくるでしょう。壊れたインプラントを引き取ったり、持っているインプラントを没収するとかはどうでしょうか。我々は領地持っていないのでそういう物資が適切ではないかなと」
決まり。サディスンの使いとサトーセンが会議した後にサトーセンに話しかけ、揺すってみました。
「サトーセン、インプラントの壊れた奴とか、壊れていないインプラントとか持っているだろ、ああ、あと壊したアンドロイド。ウチが引き取る。くれ」
「そんなもんないわ、死神が」
私は無言で右手の射出武器を壁に打ち付ける。数秒で大量の円盤が壁に刺さる。
「口を慎め下等存在。こっちはただの汎用アンドロイドじゃねえんだ。完全な非武装になれるわけねえんだよ。あーそうだなあ、前線視察に出ていたサトーセン伯爵は哀れにも私のエネルギー波によって消滅してしまっていました、とかどうだ? まだ領地は混乱している、通らない嘘ではないぞ。このように、――暗器を出し入れする――暗殺する武器は持っているのが古いアンドロイドのたしなみでな」
「ぐっ……。使えるインプラントなぞ無い、全て壊して捨てている。廃棄場になら壊れたアンドロイドが転がっているだろう、持って行け」
「はい、まいど。外にいるメイドにでも廃棄場教えてもらってくるわ。私を憎んでも良いが、私がとったものは直接的には壊れていないインプラントとアンドロイドだけだからな。アンドロイドを否定したのが悪い。遅かれ早かれお前の軍は後方支援力不足によって負けていただろう」
「お前に何がわかる!」
「お前がわからないから何千人の兵士が死んだと思ってるんだ。まあ今はいないはずの戦闘用アンドロイドが戦争相手領地に遊びに来たのは不運だったな」
そういってサトーセンの目の前から去った。
し、死ぬほど緊張した。こんなん毎回やるんですか? まじですか? 本当ですか? やめません? ルカさんで良くない? ミカさんこんなこと毎回やってたの? ゴリラになるわけだわ。
メイドさんに連れられて廃棄場へと進む。
ありゃー、燃えないゴミや大型家具のゴミ捨て場だわ。粗大ゴミ扱いか。
これを掘り返すのはここあちゃん絶対やらないし、ルカさんもちょっと力不足だ。
んー、フィーの出番かな。
「フィー、土遊びしよう」
一瞬で私の隣に来るフィー。どうやってルート把握したんだ。
「この穴で遊ぼー。破損したインプラントや壊れたアンドロイドがあるらしいから、それを探すお宝探しだ!!」
「ばうーん! ばうーん!」
早速巨大化して掘り返し始めるフィー。通常の体高210センチメートル全長295センチから、より巨大化できるんすよね。
ガンガン掘ってはインプラントの破損を見つけて私にぶん投げてくるフィー。いいよいいよー。
アンドロイドが投げつけられたときは声を上げて逃げた。
「もう掘り尽くしたか。メイドさん。埋めるだけだったらここ以外にもあったでしょう? 覚えている限り教えなさい。うちの子が遊びたがっているんだ」
完全に脅しだが、執事の歴史書なども使いつつどんどん粗大ゴミ放棄場を探り当ててフィーに掘らせる。
だんだん破損したインプラントも壊れたアンドロイドも割合が増えていくね。もしや、最初は使っていたかな?
現状わかる最後の廃棄場では破損していないというか、修復すれば直るインプラントも出てきた。
アンドロイドも埋葬されている感じだと思う。
なにせフィーがめっちゃ遊んでいるので掘り返すのが超高速なのだ。
「これで全部か。破損インプラントは豊富、修復できそうなのは3つ、アンドロイドは57体。フィー、大変かもしれないけどアンドロイドは一度収容したら、一体一体大型全身洗濯機で洗ってから素材庫に収納してくれないかな」
「ばう」
「ここでやらないとスペースが足りないか。じゃあお願い。最後のほうは眠っているところを起こした感じがするからね」
「おわったかー?」
「ここあちゃん。ほとんど終わったよ。最初は使っていたんだと思う。でも修理が出来なかったんだろうね。だんだん消耗していって、良い働きが出来なくなって、維持費は高くなって……。だんだんと要らないって思うようになったんじゃないかな」
「一般アンドロイドに不死性はつけてないだろうからなあ。ボクたちは不死性があるからメンテいらずなんだ。不死が勝手にメンテしてるわけさ」
「私達は古いから特殊なんだね。アンドロイドって人のために作られたのに、なんかこう、うーん、上手く言えないや」
「馬鹿が上手く言えるとは思ってない」
「先制攻撃だごるぁ!」
ぼこすかぼこすか。
ルカさんがやってきて「いい加減にしなさいっ!」って怒られるまで喧嘩してました。久しぶりなのでお互い良いストレス解消になったと思う。
サトーセンが見ていたらしいけど、震え上がっていたそうだ。
戦闘も出来る万能アンドロイドと、戦闘用天才アンドロイドが喧嘩したんだ、周辺被害もとんでもねえ。
「いやー、インスタントバリアを突破するためにチャージの低いマガジンで撃った瞬間に超高速リロードしてフルチャージショットとか、さすがだねえここあちゃんは」
「ボクの軌道の癖を読まれてる節があるんだよな。一応逃げ切ったけど。エネルギー速射砲の威力を制限しているからなあ。していなければ足を壊して動けなくするんだけどな」
「私もサクラ・フレア使ってないしね。よし、お風呂入ろっか」
「おう!」
ちゃぷちゃぷ
「そういえばそろそろ150センチメートルになるぞ。お前とほとんど同じになるな」
「おー、かわいいここあちゃんから凜々しいここあちゃんになるんだね、楽しみー」
「ボクもインプラントで背が伸びればなあ。所長が言うには150センチメートルで限界身長らしい。これ以上は設計図に負荷がかかりすぎるそうだ」
「私も160センチメートルくらいで止まりそうだけどね。黄色で当たるかスペシャルで伸びるかのどっちかしかないし」
のんびりしました。お風呂は良いねえ。
さて、ここも全部やったしおさらば!
ではなくて。
パオーンゾウの血液を飲めばフィーも異次元能力持つのでは? という試みをしてきました。気になっていたんだよね。
結果は……。
「わーいわーい、フィーの大きさが少し小さくなって容量が増えたー! しかもそこは異次元ー!」
「ばうばう!」
「ちょっとだけ異次元も切れるようになったってー!」
フィーとてんてけダンスを踊る。わーいわーい、ばーうばーう。
子犬の状態を保てて異次元空間が増えた感じ。移動の時は私はそこに引きこもろう。
やっぱりパオーンゾウは素敵だ。ここから去らないといけないのが本当に惜しい。
「またねパオーンゾウさん。君たちのことは一生忘れないよ。ま、不老だけど」
「ぱおーん」
「キュアキュア」
そういって後ろ足で立ってどすーんと前足でストンプする。幸あれ、だって。
おうよ。
サディスン伯爵の領地へ一度戻り、占星術師にチップをはずむ。
構造を解析してくれたおかげで、次頼ればいい職業を見つけてくれたことは一生忘れないぜ。ま、不老だけど。
ついでにインプラントを探す。さすがにないか。汎用アンドロイドだもんね。
戦争で人材を獲られなくなったためアンドロイドをそこかしこで見受けられる。
鶴丘の横流しと聞いていたけど結構な量いるんだねー。整備追いついていますように。
「あずきさん、そろそろ飛び地へ向かいましょう。雪乃先生の常設展も見たいでしょうし、決戦は飛び地が最適でしょう」
「そうですね。インプラントもやらないとだし、置換して備えないと。ここあのフル装備も作り直さないといけませんしね。いきますか、飛び地へ」
フィーにテレポート頼んだら出来ないらしい。なんで?
ラウンジに薄く広く異次元空間を展開したからだそうだ。
なるほどそれなら個室へ飛ばしてくれ。ビュン。
「ほー、ラウンジへの通路にドアが付いている。これで密閉してるんだね。私、ラウンジにベッド持ってきた方が良い??」
「ばうばう!」
「寝るときは個室へ展開してくれるんだ。やさしいね、あとでなでなでしよーねー」
「ばうーん」
インプラントやフル装備の内容などをおかーさんとやりとりしつつ、ルカさんに戻りの馬車へ乗り込んでもらうのでした。
そうだよ、ここ以外は古くさい領地しかないんだよ……忘れてた。
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